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 日本郵便や出光興産など、全国に店舗を持つ企業が、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、CLT(直交集成板)を活用した木造店舗の建設を進めている。二酸化炭素(CO2)を固定できる木材を積極的に活用し、脱炭素に貢献する姿勢を打ち出すのが狙いだ。各社の戦略を追った。

 日本郵便は、22年3月22日に千葉県南房総市に開局した丸山郵便局を皮切りに、木造郵便局を次々に建設している。丸山郵便局は平屋建てで、延べ面積は約130m2。壁には厚さ90~150mmのスギのCLTパネル、屋根には厚さ210mmのスギとヒノキのハイブリッドCLTパネルを使用した。壁と天井部分はCLTの現し(あらわし)で、郵便局の利用者が木を感じられる仕上げとした。

 2店舗目は宗像東郷郵便局(福岡県宗像市)で、22年11月7日に竣工した。平屋建てで延べ面積は約160m2。CLTパネルを屋根全面に使用した。22年12月5日に竣工した3店舗目の糸崎郵便局(広島県三原市)も平屋建てで、延べ面積は約130m2。構造壁と屋根にCLTパネルを使用している。

「丸山郵便局」は国内で初めてCLT(直交集成板)を活用した郵便局。平屋建てで、壁にはスギのCLTパネル、屋根にはスギとヒノキのCLTパネルを使用している(写真:日本郵便)
「丸山郵便局」は国内で初めてCLT(直交集成板)を活用した郵便局。平屋建てで、壁にはスギのCLTパネル、屋根にはスギとヒノキのCLTパネルを使用している(写真:日本郵便)
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 日本郵政グループでは、50年のカーボンニュートラル実現に向けて、まずは30年度までに、19年度比で温暖化ガスの46%削減を目指している。この一環として傘下の日本郵便が始めたのが、CLTなどを活用して環境に配慮した「+(ぷらす)エコ郵便局」の設置だ。太陽光や木質バイオマスなどの再生可能エネルギーも導入する。

丸山郵便局の内部。天井の木はCLTパネルの現し仕上げ。ウッドデザイン賞2022で奨励賞(審査委員長賞)を受賞した(写真:日本郵便)
丸山郵便局の内部。天井の木はCLTパネルの現し仕上げ。ウッドデザイン賞2022で奨励賞(審査委員長賞)を受賞した(写真:日本郵便)
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 日本郵便は、23年度末までに約10店舗の「+エコ郵便局」を建設する予定だ。日本郵便チャネル企画部は、「横長の窓口が必要な郵便局と、大スパンを確保できるCLTは相性が良いが、コストが課題だ。従来の鉄骨造の郵便局と同程度のコストに収まるように調整しながら、今後も『+エコ郵便局』の整備を推進していきたい」とする。