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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第46号:「アバド時代の遺産」全17本の映像が公開

2011年8月12日 (金)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

東日本大震災救済室内楽コンサートの収益は、4万5千ユーロ
 5月30日に行われたベルリン・フィル団員(ガイ・ブラウンシュタイン、樫本大進、アミハイ・グロシュ)、マルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキー、イタマール・ゴラン、趙静による東日本大地震救済室内楽コンサートの収益が、明らかになりました。入場料と会場募金の総額は、4万5千ユーロ(約500万円)。1万5千ユーロずつが、ユニセフ、FTVジュニアオーケストラ(福島テレビの青少年管弦楽団)、ミューザ川崎シンフォニーホールに寄付されます。
 このコンサートでは、冒頭でアルゲリッチとゴランにより〈赤とんぼ〉が連弾され、ゴランが詞の英語訳を朗読。ショスタコーヴィチ、ドヴォルザーク、モーツァルトの作品が演奏された後、最後にアルゲリッチ、マイスキー、ベルリン・フィル団員によりシューマンの「ピアノ5重奏曲」が演奏されました(写真:左から趙、グロシュ、マイスキー、樫本。©Adachi)。

 佐渡裕、ベルリン・フィル・デビューを語る(後半)

佐渡「武満のこの作品を、日本的だとは思いません。普遍的な音楽です」
(2011年5月22日)

前号でご紹介した佐渡裕のインタビューの後半です。前半では、ベルリン・フィル・デビューへの思いが語られましたが、後半では、当日取り上げられた武満徹の《フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム》がテーマとなっています。この作品は、1996年に死去した武満が、1990年に作曲した晩年の大作。大編成の管弦楽のほか、5人のパーカッション・ソリストが要求されます。映像でも分かるとおり、舞台の天井に5色の長いリボンが吊られ、各色のシャツを着た打楽器奏者がシンボリックで瞑想的な音楽を奏でるもの。実演に接する機会が少ない作品ですが、ベルリン・フィルの5角形ホールともマッチし、聴衆からも大変好意的に受け入れられています。

エマニュエル・パユ 「ここでプログラムについてお伺いしたいと思います。今回のどちらのプログラムにおいても、音楽にこめられたメッセージの力はとても重要ですよね。そう、たとえばこのフィルハーモニー・ホールは5角形、武満のプログラムの5人の奏者、ショスタコーヴィチの交響曲第5番と、“5”という数字が何度も出てきます。
 そこで、武満のプログラムにおいて、リボンと5人の奏者によって象徴される5色についてお話をお聞かせください。また、武満の世界観に込められた詩情や瞑想といった部分に、同じ日本人としてあなたがどのようにアクセスしているのか、とても興味があります」

佐渡 裕 「《フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム》は武満の晩年の作品で、カーネギー・ホール創立100周年を記念した、小澤征爾率いるボストン交響楽団のための委嘱作品として作曲されました。
 プログラムの冒頭ではソリストたちはまだステージに登場していませんが、ステージの左右に5色のリボンが吊り下げられているのがわかります。この5色はチベットの旗の色に由来していて、それぞれの色には意味があるんです。5人のソリストはそれぞれこの5色のシャツを身につけており、ステージ左側に位置する“青“は“水“、右側の“黄“は“土“、左後方の“赤“は“火“、右後方の“緑“は“風“を意味します。センターに位置するのは一番重要な“白“で、“白“はすべてを包み、たとえば“天“や“宇宙“、または仏教で言うところの“無“を意味します。こういったコンセプトを知って聴くと、とても興味深いプログラムなんです。たとえば“水“と“土“は時には共に歌ったり、時には対峙したりして。
 そして、冒頭のフルートのソロから始まり繰り返される“ド・シ・ソ・ラ・ファ“の5音のメロディ 、5人の打楽器奏者、このフィルハーモニー・ホールは5角形がシンボルとなっていますし、あなたもおっしゃったように全体で“5“という数字がキーとなっています。
 フルート・ソロの繊細な響きは、日本の伝統的な木管楽器である尺八の響きのようにも感じられますが、この音楽を私は日本的だとは思いません。ヨーロッパにもあるような、世界に普遍的な響きだと思います。誰もがどこかで聴いたことがあると感じるようなメロディーなんです。あなたもリハーサルで、“《春の祭典》の旋律と似ている”と言っていましたね。
 武満は現代音楽を代表する作曲家ですが、彼はまたポップ・ミュージックも愛しました。いわゆるノージャンルの人です。シンプルで美しいものを愛したんです。この作品は、実際は現代に作曲されたものですけれど、打楽器のサウンドは、まるで遠い遠い昔に作曲されたような、将来への祈りのような雰囲気を作り出しています。武満は特にプログラムの前半で、ホール、オーケストラ、そして聴衆のすばらしい未来を祈っているように、私は感じます」

この演奏会をDCHで聴く!

 クラウディオ・アバド特集

1991年から2002年までの「アバド時代」の映像が一挙17本公開!

 1989年にヘルベルト・フォン・カラヤンが死去した後、その年の暮れにクラウディオ・アバドがベルリン・フィルの首席指揮者に就任しました。それ以降、2002年の退任まで、アバドは約13年間にわたり、ベルリン・フィルに栄光の時代をもたらしました。デジタル・コンサートホールでは、「アバド時代」へのオマージュとして、1991年から2002年までの演奏会の映像を、まとめて17本紹介いたします。
 7月1日から8月24日まで、毎週新しい映像が2本ずつアップ。これらは、今後恒常的にデジタル・コンサートホールで視聴可能となります。通常のDCH チケットで何度でも自由にご覧になれ、追加料金は必要ありません。
 内容的には、90年代のヨーロッパ・コンサートやジルベスター・コンサート、日本を含む客演先での演奏会、さらに極めて高い評価を得た後期のベートーヴェン交響曲全集(収録:ローマ)等が含まれています。アバド・ファンならずとも、垂涎もののコンテンツ。ぜひご覧ください。

アバド特集の映像を観る

8月5日(金)アップ分
カラヤン・メモリアル・コンサート
【演奏曲目】
モーツァルト:聖墓の音楽より〈この胸を眺めて、私に聞いて下さい〉
証聖者のための盛儀晩課より〈ラウダーテ・ドミヌム〉
レクイエム
独唱:ラヘル・ハルニッシュ、カリタ・マッティラ、サラ・ミンガルド、ミヒャエル・シャーデ、ブリン・ターフェル
指揮:クラウディオ・アバド
1999年7月16日収録

ジルベスター・コンサート1999
【演奏曲目】
グランド・フィナーレ(ベートーヴェン、ドヴォルザーク、マーラー、ストラヴィンスキー他の作品の終楽章)
朗誦:クラウス・マリア・ブランダウアー
指揮:クラウディオ・アバド
1999年12月31日収録

8月12日(金)アップ分
ベートーヴェン・ツィクルス(2001年・ローマ)
【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第1〜8番
指揮:クラウディオ・アバド
2001年2月8〜14日収録

ヨーロッパ・コンサート2000(ベルリン)
【演奏曲目】
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番、交響曲第9番
ピアノ:ミハイル・プレトニョフ
独唱:カリタ・マッティラ、ヴィオレタ・ウルマーナ、トーマス・モーザー、アイケ・ヴィルム・シュルテ
指揮:クラウディオ・アバド
2000年5月1日収録

8月19日(金)アップ分
ジルベスター・コンサート2000
【演奏曲目】
ヴェルディ万歳!(《仮面舞踏会》、《ドン・カルロス》、《ファルスタッフ》他の抜粋)
独唱:アンドレア・ロスト、ラモン・ヴァルガス、アラン・タイタス、ルーチョ・ガッロ他
指揮:クラウディオ・アバド
2000年12月31日収録

「合唱幻想曲」&「賛歌」
【演奏曲目】
ベートーヴェン:合唱幻想曲
メンデルスゾーン:交響曲第2番《賛歌》
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
独唱:カリタ・マッティラ、リオバ・ブラウン、ペーター・ザイフェルト他
指揮:クラウディオ・アバド
2002年2月9日収録

8月24日(水)アップ分ヨーロッパ・コンサート2002
【演奏曲目】
ベートーヴェン:《エグモント》序曲
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》
ヴァイオリン:ギル・シャハム
指揮:クラウディオ・アバド
2002年5月1日収録

アバド特集の映像を観る

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ザルツブルク音楽祭《マクベス》は、ムーティの大勝利。ザルツブルクで最後のオペラ説も
 8月3日にプレミエを迎えたザルツブルク音楽祭の《マクベス》新演出では、リッカルド・ムーティに賞賛が集中している。この7月に70歳の誕生日を迎えたムーティは、精緻な響きをオーケストラから引き出し、満場の喝采を獲得。ジェリコ・ルチッチ(マクベス)、タチアーナ・セルジャン(マクベス夫人)、ジュゼッペ・フィリアノーティ(マクダフ)らの歌手も好評であった。一方リアリズムを志向したペーター・シュタインの演出は、「保守的過ぎる」と各紙の批判を受けている(写真:©Silvia Lelli)。
 なおムーティは、「これがザルツブルクでの最後のオペラになるだろう。今後はコンサートに集中する」と談話し、新聞を賑わせた。しかし、同音楽祭総裁のヘルガ・ラーブル=シュタードラーは、「ムーティは70歳の誕生日で、メランコリックな気分になってそう言ったのだろう。我々としては、今後もオペラに出演してもらえるよう、働きかけてゆきたい」と語っている。

2013年のバイロイト音楽祭《リング》の演出は、カストルフ
 ヴィム・ヴェンダースの降板で混迷していたバイロイト音楽祭《ニーベルングの指環》(2013年ワーグナー生誕200周年記念公演)の演出家探しが、フランク・カストルフで決定する模様である。まず7月中旬に「カストルフが候補に挙がっている」との噂が流れ、音楽祭当局は一度「ノーコメント」と発表。しかし7月25日の音楽祭開幕時に、「カストルフと交渉中だが、契約はまだ行なっていない」と認めた。
 カストルフは東ドイツ出身の演出家で、現在もベルリン・フォルクスビューネのインテンダントを務めている。若者向けの破天荒なスタイルを特徴とするが、数年前から「失速気味」という評価を受けていた。それゆえドイツの新聞は、彼が《リング》を演出することについては、やや否定的な見解を示している。

ルノー・カピュソンがヴァージンとの契約を延長
 ヴァイオリンのルノー・カピュソンが、ヴァージン・クラシックスとの契約を延長した。カピュソンは、1997年に同レーベルが再スタートした時からのアーティストで、すでに12年以上専属として活躍している。今後は、ダニエル・ハーディング指揮のウィーン・フィルとの共演で、ブラームスとベルクのヴァイオリン協奏曲を録音する予定。リリースは、2012年秋だという。

エリーザベト・クルマンがリハーサル途中で大怪我
 オーストリアのメゾソプラノ、エリーザベト・クルマンが、ルール・トリエンナーレ《トリスタンとイゾルデ》のリハーサル中、声帯に怪我をした。クルマンは、稽古の途中で他の出演者と衝突し、喉をぶつけてしまったという。声帯が充血し、声がまったく出なくなってしまったため、9月20日までの公演をすべてキャンセル。《トリスタン》の公演も降板となった。しかし医師の見解では、数週間安静を続ければ、声は完全に回復するという。

声楽コンクール「オペラリア」の優勝者決定
 プラシド・ドミンゴのコンクールとして知られる「オペラリア2011」の優勝者が決定した。第1位は、アメリカン人テノールのルネ・バーベラと南アメリカ人ソプラノのプリティ・イェンデ。バーベラは、男声第1位、サルスエラ賞、聴衆賞の3つの賞を獲得した。またイェンデ(女声第1位)は、すでにベルリン・ドイツ・オペラやミラノ・スカラ座への出演が決定している。
 なお第2位は、モルダヴィア人ソプラノのオルガ・ブスイオッチ、ロシア人バリトンのコンスタンティン・シュシャコフ、第3位は、ロシア人ソプラノのオルガ・プドヴァ、韓国人テノールのジャエジグ・リーが獲得している。

 デジタル・コンサートホール(DCH)について

 デジタル・コンサートホール(DCH)は、ベルリン・フィルの演奏会がインターネットでご覧いただける最新の配信サービスです。高画質カメラにより収録されたベルリン・フィルのほぼ全てのシンフォニー・コンサートが、ハイビジョン映像で中継されます。演奏会の生中継のほか、アーカイヴ映像がオンディマンドでいつでも再生可能。さらにベルリン・フィルに関係したドキュメンタリーなども鑑賞できます。
 ご利用いただくにあたって、特別なインターネットの回線は必要ありません。3種類の画像レベルがあり、2.5Mbps以上の回線をお持ちの方は、ハイビジョンの映像もお楽しみいただけます。音質もCDに迫る高音質を実現し、年間30回にわたる定期演奏会がリアルな音で体感できます。
 料金は「24時間券」(9.90ユーロ。約1,100円)、「30日券」(29ユーロ。約3,200円)、「12ヶ月券」(149ユーロ。約16,650円の3種類。以上のパスで、有効期間中すべての演奏会の映像(過去2シーズンのアーカイヴ映像を含む)が無制限にご覧いただけます。なお、26歳までの学生・生徒の方には、30%の学割が適用されます。 あなたもぜひ、www.digitalconcerthall.comで、ベルリン・フィルの「今」を体験してください。

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次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2011年8月24日(水)発行を予定しています。

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