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【連載】歌謡曲番外地 HMV ONLINE編(4) 高護『歌謡曲番外地 HMV ONLINE編』へ戻る

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2011年8月8日 (月)

HMV ONLINEオリジナルの不定期連載『歌謡曲番外地 HMV ONLINE編』、今回はシリーズの企画・監修を務める高護(こう まもる)氏に代わり、アーカイヴァー/ライターの鈴木 啓之(すずき ひろゆき)氏が執筆!

【第4回】 オナッターズ


 寝不足のハイな気分のまま番組の会議に参加したスタッフが、つい悪ノリして無茶な企画やネーミングを思いつくままに発案したとする。それがどういうわけか周りの賛同を得て、さらに偉い人の採決も何故かスルリとパスしてまかり通ってしまうことが稀にある。かつて自分が関わっていた番組でも、アシスタントの女の子たちを「うんちーず」と名付けてしまう悪ふざけがあった。そのあと彼女たちがレコードを出した時にはさすがに違う名前になってはいたけれども。きっと「オナッターズ」もそんな経緯から生まれたグループだったろう。
 知らない人にグループ名を言うと、ニヤッとされるか、「え?」と聞き返されるかのどちらか。ピュアな女子に躊躇なく復唱されたりすると、こちらが照れてしまう。本人たちはさぞかし嫌だったに違いない。しかしこの強烈な名前のおかげで後世に残る(?)グループと成り得たのだ。時は1984(昭和59)年。アイドル全盛期であり、女子大生ブームでもあった。その中心といえるフジテレビの深夜番組『オールナイトフジ』に出演していた女子大生チーム「オールナイターズ」が元ネタであることは言うまでもない。同番組の『女子高生スペシャル』から発展したのが、翌年始まった『夕やけニャンニャン』で、考えてみれば「おニャン子クラブ」というネーミングだって、性的な意味が込められている。ニャンニャン=H。今では死語になってしまい、BUBKAなどの雑誌で「ニャンニャン写真」という使われかたをしているのが唯一の生き残りか。オナッターズもおニャン子クラブも実はルーツが一緒なのである。

 発信源となった番組は、当時健闘していたテレビ朝日の深夜枠の中でも、ひと際異彩を放っていたヴァラエティ番組『グッド・モーニング』(1984.4.16〜1986.9.22)。“世界一早いモーニングショー”と称して、画面には朝のワイド番組のように時刻表示のテロップが出されていた。内容はシュールな笑いにお色気のエッセンスがまぶされたもの。パントマイムの中村ゆうじ(現・中村有志)や、「てん・ぱい・ぽん・ちん体操」の水島裕子らが話題となり、若い視聴者層(主に男子)から人気を得る。ちなみにテレ朝の同時間帯の別曜日には、現在も続く『タモリ倶楽部』や、怪物ランドが出演していた『ウソップランド』、山本博美が可愛かった『ミントタイム』、六本木を舞台にしたドラマ『トライアングルブルー』など、若者向けの人気番組がひしめいていた。アン・ルイスの「六本木心中」は、『トライアングルブルー』の主題歌からヒットしたのだった。
 番組のマスコットガール、南麻衣子(マニー)、小川菜摘(ナニー)、深野晴美(ハニー)の3人組では、深野が少し年下だった。小川菜摘が後にダウンタウンの浜田雅功の嫁となったのはご存知の通り。南麻衣子はずいぶん年上の気がしたが、アルバムが発売された85年6月の時点ではまだ24歳だったのだなぁ。小川菜摘は22歳、深野晴美に至っては18歳という若さだったのだ。ま、公称ですが。そんな彼女たちを「オナッターズ」と命名した主謀者は、放送作家の佐々木勝俊氏。『タモリ倶楽部』の人気コーナー「廃盤アワー」の仕掛人でもあった氏は、ササキカツトシ名義で、オナッターズの殆どの楽曲の作詞・作曲をしている。それ以前、廃盤ブームに乗じて「涙の太陽」のエミー・ジャクソンを担ぎ出し、一緒に「CRYヨコハマ」というレコードも出していた。作詞はチェッカーズのプロデュースなどで知られる秋山道男。発売と同時に品切れという趣向で、ジャケットには“廃盤 このレコードはもうプレスされません”と刷られていた。いろいろとナイスな企画を手がけていた佐々木サン、今はどうしてらっしゃるのだろうか。

 レコードデビューは、1985年1月リリースのシングル「恋のバッキン!/ウキ・ウキ・マンデイ・ラブ」。そして6月にはセカンド・シングル「モッコシモコモコ(しゅきしゅきダーリン)/ア・タ・リ」と、アルバム『オナッターズのいい気持ち』も発表されたのだった。なお、「ウキ・ウキ・マンデイ・ラブ」の作詞にクレジットされている島村聖名子は小川の本名。この名前で中村雅俊主演の学園青春ドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』に生徒役として出演していたことは結構有名だろう。聖名子というと、シリア・ポールのお姉さん、ポール聖名子を思い出すが、その話はまた別の機会に。
 「恋のバッキン!」は番組でも盛んにかかっていたので、聴き憶えのある方は多いと思う。アレンジがハプニングス・フォーのクニ河内だったことを今回改めて知って驚いたが、そういえば前述の「CRYヨコハマ」もそうだった。個人的にはふわふわ感に溢れたタイトルのセカンド・シングル「モッコシ モコモコ(しゅきしゅきダーリン)」を推したい。なんといっても語感が素晴らしく、脱力感いっぱいの最後の「しゅき。」もいい。この曲はアルバムとシングルでヴァージョンが異なり、基本的にアルバム復刻となる今回は、ボーナス・トラックにシングル・ヴァージョンも収録という親切さ。有難いではないか。
 元のアルバムは、シングル曲以外に、それぞれのソロ曲など全10曲。ソロは南が「東京バカンス」、小川が「レッツゴー!ヨコシマ」、深野は「さびしがりや」をそれぞれマジメに歌っている。この際、歌唱力が云々などという固い話は抜きにして、寛容な気持ちで聴いていただきたいと思う。「レッツゴー!ヨコシマ」は期待通りのエレキ歌謡だし、松田聖子調のタイトル「水平線のマーメイド」はアルバムを締め括る佳曲なのだ。こんな冗談みたいなレコードが、しかもアルバムまで作られてしまったとは、なんて幸福な時代だったのだろう。どうせスタッフは打合せと称して、制作費で美味しいものをたらふく食っていたに決まっている。そんなバブル前夜の日本、というか東京に漂っていた底知れぬパワーを感じさせる怪しくも無邪気なアルバムが26年ぶりに完全復刻されたことは誠に喜ばしい。昭和の肉食系男子の皆さま、このCDを聴いて大いに気持ちよくなってください。


 さて、こうなると、本家の方も聴いてみたくなるというもの。当時レコードをたくさん出していたオールナイターズは、これまでに殆どの音源がCD化されており、現在入手可能なものも数枚ある。牙城となった、フジテレビ土曜深夜の番組『オールナイトフジ』は83年4月にスタートしており、とんねるずや片岡鶴太郎らのスターを生み出す中、やはり視聴者の目当ては大挙して出演していた女子大生集団であったはず。しかしながら関東ローカルなため、決して全国区の人気ではなかった。知らない方も多いことだろう。
 最初のレコードは84年、おかわりシスターズ(山崎美貴、松尾羽純、深谷智子)のシングル「恋はアンコール」だった。これが驚くほどの名曲で今でも時折無性に聴きたくなる衝動に駆られる。続いて出されたカーペンターズ調の「心はシーズンオフ」もかなりいい曲だったが、対抗馬となったおあずけシスターズの「東京カンカン娘‘84」もそれ以上に良かった。オールナイターズのお笑い担当、井上明子と片岡聖子によるユニットで、色もの的なタイトルにも拘らず、曲のクオリティは相当なもの。特に片岡の声がいいのだ。そしてアルバム『チュッとセンセーション』の発売へと至る。番組のテーマソング「女子大生にさせといて」では、ひとりひとりの自己紹介も導入され、後のおニャン子クラブの名物ソング「会員番号の唄」への布石となった。
 現在CDでまるごと聴けるのは、セカンド・アルバムの『KIRAっとジェネレーション』になるが、シングル作品もプラスされているのでかなりお得。他にゴ―ルデン☆ベストも出ており、名曲のオンパレードである。2期以降のメンバーの歌では、既に人気を博していたおニャン子クラブを逆手にとり、「セーラー服を脱がさないで」と同じオケでレコーディングされた替え歌「セーラー服を脱いじゃってから」が傑作。もちろん秋元康氏の手によるセルフパロディである。マスコットガールにはやがて若い主婦たちまでが登場し、さすがに反省したのか、シーエックスというモデル軍団へと移行する。そこに七瀬なつみや青田典子がいたのは有名だろう。番組はバブル終焉の頃とほぼ同じ、91年まで続いた。
 こうした流れは後にTBSの『ワンダフル!』などへ飛び火しつつ、最近の『キャンパスナイトフジ』まで至るわけで、その究極のスタイルが、出演者の大半がAV女優という、テレビ東京の『おねがい!マスカット』(現在は『おねだりマスカットDX!』が放映中)になるのかもしれない。おねマスも歌に積極的で、良い曲をたくさん出しているのは、かつてのオールナイターズを見て育った世代がスタッフであることに他ならない。とんねるずとも親交の深い演出のマッコイ斉藤氏は、絶対に『オールナイトフジ』や『夕やけニャンニャン』が大好きだった筈である。
 アイドル戦国時代と言われる昨今、その中心を担っているAKB48の本当のルーツも、実はおニャン子クラブではなく、その源となったオールナイターズだったのであるというのがこの稿の結論。いつの日か、貫禄のついたAKBのOGたちが再結集して、「会いたくなかった」的なパロディソングを歌う日がきっとやってくるに違いない。


- 鈴木 啓之(すずき ひろゆき) -




商品ページへ   オナッターズ
 『オナッターズのいい気持ち』

[収録曲]
01. 愛して恋して夢見て
02. ア・タ・リ
03. 東京バカンス(唄:南麻衣子)
04. ウキ ウキ マンデイ ラブ
05. さびしがりや
06. モッコシモコモコ(しゅきしゅきダーリン)[アルバム ヴァージョン]

07. レッツゴー!ヨコシマ(唄:小川菜摘)
08. 哀愁のkiss&Kiss
09. 恋のバッキン!
10. 水平線のマーメイド
11. モッコシモコモコ(しゅきしゅきダーリン)[シングル ヴァージョン](ボーナス トラック)

【HMV ONLINE先着特典】缶バッヂ



※先着ですので、なくなり次第終了となります。ご了承ください。
※特典の有無は商品ページにてご確認ください。
※店舗ではお付けしておりません。




鈴木 啓之(すずき ひろゆき) プロフィール

アーカイヴァー。1965年東京生まれ。テレビ番組制作会社勤務、中古レコード店経営を経て、ライター&プロデュースを手がける。主に歌謡曲・テレビ・映画などについての雑誌への寄稿や、CDやDVDの監修・解説など。著書に「王様のレコード」(愛育社)、「昭和歌謡レコード大全」(白夜書房)ほか。ラジオ番組『週刊メディア通信』(ミュージックバード)、『エキスポ・ジェネレーション』(スターデジオ)、『ラジオ歌謡選抜』(FMおだわら)にレギュラー出演中。



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オナッターズのいい気持

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オナッターズのいい気持

オナッターズ

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発売日:2011年08月10日
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