「月」「星」にまつわる名曲ちりばめて
2011年8月3日 (水)
ACT レーベル、8月のニュー・リリースから。
ファンキー・ボントロ大家がおくる ”月光夜曲” ”輝星目録”で、今宵はしっとりと...
ドイツを本拠地に、ヨーロッパ各国、アメリカ、アジアなど世界のトップ・ミュージシャンの作品を精力的にリリースする「ACT」レーベル。1992年の設立当初から、メインストリーム・ジャズはもとより、エスニック要素が濃いものや、ポップ色の強いヴォーカル作品、近年ではクラブ・ミュージック・シーンに踏み込んだ「NU JAZZ」シリーズ、若いドイツ人演奏家を売り出していく「ヤング・ジャーマン・ジャズ」シリーズなどを幅広く制作展開。「ACT」は今や現代欧州ジャズ・シーンを語るには避けて通れない重要レーベルのひとつに成長したと言えるだろう。
そんな「ACT」の8月のリリースから、レーベルの看板アーティストでもある、北欧シーンきっての名トロンボーン奏者ニルス・ラングレンの新録アルバム『The Moon, The Stras And You』をご紹介。
”ボントロ”のみならずシンガー、さらには俳優としてもマルチに活躍するニルス・ラングレン。一般的に「清涼感のある」「爽やかな」とされるスウェーデン・ジャズのイメージからはかけ離れた、バンピンなジャズ・ファンクやディスコ〜AOR系のサウンドを追求するニルスは、自己のリーダー・ユニット、その名も「ファンク・ユニット」を1992年に結成し、メイシオ・パーカー、フレッド・ウェズリー、ブレッカー・ブラザーズ、ロイ・ハーグローヴといった泣く子も黙る全米のジャズ・ファンク/クロスオーヴァー高官らを招いてアルバムを制作していることでも有名。メイシオを招聘した地元ストックホルムでのライヴ盤『Funk Unit』、ブレッカーズやバーナード・パーディらと共に敬愛するキャノンボール・アダレイに捧げた『Paint It Blue』、ウェズリー、ハーグローヴ、ティル・ブレナーがゲスト参加した『5000 Miles』など、90年代の初期作品にはどれもそのスジの免許皆伝ソロイストたちとの熱気溢れる饗宴が記録されている。
また2004年からは、テキサス・ファンクの雄クルセイダーズのツアー・メンバーとしてライヴに同行。ウィルトン・フェルダーとの二管フロントで華やかにステージを彩った同年の来日公演を昨日のことのように記憶されている方もさぞかし多いことだろう。その後ジョー・サンプルとのニューオリンズ録音の共作アルバム『Creole Love Call』、ハービー・ハンコック「Rockit」、ドアーズ「Riders On The Storm」を ”ねちっこく” 料理した『Fonk Da World』、持ち前のうたごころが全開となったABBAのカヴァー企画盤『Funky ABBA』、レイ・パーカーJr. をゲストに招いた『Licence To Funk』(クルセ「Brazos River Breakdown」のカヴァー収録!)といったソウルフルなファンク・アルバムをコンスタントに発表。昨年もアフリカ難民救済(ケニア・ナイロビのスラム街に置かれている“国境なき医師団”との共同プロジェクト)の企画アルバム『Funk For Life』をリリースし話題を呼んだ。
北欧シーンにとどまらず今や名実共に世界屈指のファンキー・トロンボニストと言っても過言ではない大家となったニルス・ラングレン。さて、そのニュー・アルバム『The Moon, The Stras And You』は、タイトルどおり「月」や「星」にまつわる楽曲を集めた作品となった。
さらにそのコンセプトから察すれば、いつものファンキー節にやや抑止をかけた、しっとりとしたテイストの歌モノが中心となっていると考えてほぼ間違いはないだろうか。冒頭 キャット・スティーヴンスの「Moon Shadow」から、優しく柔らかなメロディが夜風に吹かれ、流れ出す。その昔同郷のギタリスト、ヨハン・ノルベルグとのデュオ・プロジェクトでも披露されていた(『Chapter Two / 2』所収)ファンにはおなじみのレパートリーだ。決して巧いとは言えないが、ニルスのプレーンでいてどこか味わい深いヴォーカルに酔いながら月光浴としゃれ込みたい。
『The Moon, The Stras And You』 収録曲
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「Moon Shadow」と同路線のシンガー・ソングライター系作品からは、今では映画俳優としての活動の方が目立つクリス・クリストファーソンの名曲「Please Don't Tell Me How The Story Ends」、ジョージ・マーティンをプロデュースに迎えたジミー・ウェッブの傑作『El Mirage』に収められた「The Moon's A Harsh Mistress」などが取り上げられている。後者は、邦題「月はいじわる」としてリンダ・ロンシュタットが1982年にヒットを飛ばしたことでも有名だろう。そしてブラジルMPB作品からは、ガル・コスタのヴァージョンにもファンの多いジョアン・ボスコの「Holofotes」(サーチライトの意)がチョイスされ、なんと! ジョアン本人がゲスト参加しているというのだからこちらも見逃すわけにはいかない。
そのほか、古くはトミー・ドーシー楽団のジャック・レナードが唄い、その後もフランク・シナトラ、ペギー・リー、チェット・ベイカーらに唄い継がれてきた「Oh You Crazy Moon」、映画『ティファニーで朝食を』の主題歌としてあまりにも有名なヘンリー・マンシーニ作「Moon River」、ブロードウェイ・ミュージカル『Music Man』の劇中曲、というよりはビートルズ(ポールね)のカヴァーで広く知られるであろう「Til' There Was You」、「三文オペラ(Mack The Knife)」でおなじみのドイツの作曲家クルト・ワイル生前最後の完成作品となるミュージカル曲「Lost In The Stars」など、所謂スタンダード曲では、ドイツの名門NDRビッグバンドやストックホルム・フィルハーモニック・オーケストラらを配した流麗で凛としたアレンジで、典雅・洒脱な夜を演出する。
「ムーディなのもいいけど、ダンサンブルなレパートリーがちょっと心細いんじゃ・・・」と憂慮する声を一掃するかのように、アルバム中ほどには綺羅ッ綺羅のスターライト・ディスコが用意されている。昨今のダンス・フロアをも席巻するハービー・ハンコックのアーバン小僧悶死のメロウ・ディスコ「Stars In Your Eyes」。ニルスの大好物、真ん中高めのバンプ・ゾーンを真っ芯で捉え、月に向かってかっ飛ばした場外ホームラン級の一発があってこそ、夏の夜空に花火もバンバン上がるってもの。ナイス☆
オリジナル・コンポジションは今回3曲。中でも、ベースのラーシュ・ダニエルソンによって書かれた「Angels Of Fortune」は、デンマークが世界に誇る ”白夜の歌姫” セシリア・ノービーが詞を付けソフトに唄い上げた特級品。またタイトル曲は、すでにお気づきの方も多いであろう、アメリカの女性カントリー・シンガー、ドリー・パートンのレパートリーでよく知られる「The Moon, The Stars And Me」にかけたもので、ニルスとピアノのミハイル・ウォルニーとの共作となる。こちらも、ご注目を。
レコーディング・メンバーは、先述したラーシュ・ダニエルソン(b)とラスマス・ キルベリ(ds)のリズム隊に、「ヨーロッパ・ジャズ・シーンの今後を左右するポテンシャル・ユニット」とも称される[em]での活躍も華々しいピアノ貴公子ミハイル・ウォルニーを加えたフレッシュなカルテット編成。この布陣による演奏を軸にしながら、今作の目玉とも言える豪華なゲスト陣が要所で彩りを添えるという作りだ。ジョアン・ボスコ、セシリア・ノービーのシンガー組、もはや互いの作品には欠かせない信頼関係を築いたおなじみジョー・サンプル(p)、2008年のクルセイダーズ公演参加を機に親交を深めたスティーヴ・ガッド(ds)、さらにACTにはパオロ・フレス、ヤン・ラングレンとのユニークな三頭アルバム『Mare Nostrum』も残す蛇腹マスター、リシャール・ガリアーノ(accordion)といった錚々たるメンツ。一部ゲストの参加楽曲など詳細情報は現在のところ不明(「Joe's Moonblues」にジョー・サンプルが参加しているのはほぼ確実だろうが)ではあるが、いずれにせよニルスとは程度の差こそあれ知己のある演者ばかり。カルテットとの息の合ったプレイは約束されたも同然だ。
ファンク・ユニット・プロジェクトとは性格が異なる純粋なソロ名義の作品であるため、おなじみのイケイケ感が鳴りを潜め、どちらかと言えば、ニルスのヴォーカリストとしての魅力が詰め込まれた『Ballads』や『Sentimental Journey』、ラーシュとヴァイヴ奏者クリストファー・デルとのトリオ録音『Salzau Music On The Water』のアンビエント感などにも通ずる余情が多分に際立っているかもしれない。が、そこには、望月たれる満点の星空の下で味わうにはおあつらえ向きとも言える ”侘びた寂びた” のムードが嫌味なくしつらえられているのも事実。演出力に長けたニルスのエンターテイナーぶりも併せて、ゆったりと時が流れる夜のお供に。
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
しっとりと聴かせます
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その他の主なリーダー作品
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Licence To Funk
Nils Landgren
ユーザー評価 : 5点 (1件のレビュー)
価格(税込) : ¥3,179
会員価格(税込) : ¥2,233
まとめ買い価格(税込) : ¥2,233発売日:2007年10月09日
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Creole Love Call
Nils Landgren / Joe Sample
価格(税込) : ¥3,179
会員価格(税込) : ¥2,233
まとめ買い価格(税込) : ¥2,233発売日:2005年10月28日
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販売終了
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輸入盤
Swedish Folk Modern
Nils Landgren
価格(税込) : ¥2,189
会員価格(税込) : ¥1,738
まとめ買い価格(税込) : ¥1,642発売日:2004年02月02日
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輸入盤
Sentimental Journey
Nils Landgren
価格(税込) : ¥3,179
会員価格(税込) : ¥2,767
まとめ買い価格(税込) : ¥2,385発売日:2002年09月09日
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Paint It Blue
Nils Landgren
価格(税込) : ¥3,179
会員価格(税込) : ¥2,233
まとめ買い価格(税込) : ¥2,233発売日:1997年02月03日
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「ACT」 8月のニュー・リリース
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輸入盤
Letters To Herbie
Viktoria Tolstoy
価格(税込) : ¥3,179
会員価格(税込) : ¥2,233
まとめ買い価格(税込) : ¥2,233発売日:2011年09月12日
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販売終了
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