Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.3

Quiet Corner クワイエット・コーナー
人々はその昔から、歓びを表わすために生き生きと音楽を奏で、
哀しみを癒すために静かに歌を歌った。

藤本一馬が、ネイティヴ・アメリカンの“太陽に祈りを捧げる儀式”
である「サン・ダンス」にインスパイアされて生まれた楽曲は、
ざわめく心の喧騒を鎮め、平穏を呼びもどし、音楽による“魂の交歓”
を体感させてくれる。

それは偉大なる自然への讃歌であり、心の躍動への前奏曲であり、
亡骸への鎮魂歌でもある。

彼の音楽からは広大な大地や風を感じ、その自由な旋律に包まれていると、
人は大自然の中にただ生かされているのだということに気づかされる。

人々が立ち止まって、自分と向き合うことを考え始めたいま、
彼の音楽がひとりでも多くの人のもとに届けられることを祈っている。

吹き抜ける乾いた風 ─ 藤本一馬ソロ・デビュー・アルバム『SUN DANCE』に寄せて

「今ここで何かが生まれつつある」という特別な感覚と興奮を、ソロ・アーティストとしての藤本一馬のライヴで幾度も体験したことがある。フラットな耳でしっかりと音を捉えるために、数十万枚ものヒットを生んだポップ・デュオ「orange pekoe」としての輝かしい活動歴はこの際一度、忘却の彼方へ追いやってしまっても構わない。それほどまでに、スタイルは異なるのだ。20分以上のロング・ジャーニーとなる「Sun Dance」において、その頂上へ登り詰めて行く様にはある種の近寄りがたい空気さえ漂うが、僕たちリスナーを置き去りにすることは決してない。彼が紡ぐ音の向こうに透けてみえるのは、トニーニョ・オルタ、エグベルト・ジスモンチ、ミルトン・ナシメント、ナナ・ヴァスコンセロス、ロー・ボルジスといったブラジル──特にミナス勢、さらにはオレゴンという極めて彩色豊かなグループとその中核を担うギタリストであるラルフ・タウナーや、これまで長きに渡って革新的なサウンドの数々を世に送り出してきた、ドイツの名門レーベルECM周辺のアーティストといったところだろうか。このアルバムは、彼らへの強い尊敬の念より生じる呪縛から解放されるべく葛藤を繰り返す中で辿り着いた、ある地点での躍動の記録。海に山、空、そして太陽に捧げられたオリジナルのメロディーたちは、吹き抜ける乾いた風のような彼のギターによって舞い上がり、螺旋を描きながら美しく、ときに激しく昇華する。僕は、フリー・ペーパー「Quiet Corner」の発刊を毎号楽しみにしている読者のひとりだ(貴方もそうでありますように)。藤本一馬のソロ・デビュー・アルバム『Sun Dance』は何としても、このあまりに音楽的純度の高いリーフレットのファンにこそ届いてほしいと、心から願っている。そして最後にもうひとつだけ。ライヴにおいて繰り返し演奏され、そのつど胸を打たれる「光につつまれて」という楽曲がさらに存在することも、ここに記しておきたい。音楽の神様はやはり、藤本一馬に類い稀なる作曲能力を与えている。
文●中村智昭(MUSICAANOSSA/Bar Muisc)
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