<阪神5-3中日>◇26日◇甲子園

 落合竜が後半開幕戦に競り負け、2カ月ぶりに3位に転落した。同点の8回、中日先発マキシモ・ネルソン投手(29)に代打を送らずに続投させたことが結果的に裏目に出て阪神に惜敗。だが落合博満監督(57)は「あと何試合残っていると思ってるんだ?」と冷静に長期連戦を見据えた。残り71試合、逆転Vのシナリオが見えているかのようにオレ流節をさく裂させた。

 落合監督はどっしり腰を下ろしていた。3-3の同点で迎えた8回2死、先発ネルソンに打順がまわってきた。だが指揮官は動かない。すでに100球を超えていた右腕の続投を決断。リリーフを次々つぎ込んで勝負にきた阪神ベンチとは対照的だった。

 その裏、ネルソンが1死二塁のピンチを招くと、2番手の左腕三瀬が鳥谷に決勝のタイムリー三塁打を打たれて勝負あり。結果的にネルソンの続投が裏目に出た。それでも試合後、落合監督の口から恨み節は一切、出てこなかった。

 「普通ならもっと前に代えているよ。でも、あと何試合あると思っているんだ?

 中継ぎが死んじゃうよ。だったら(先発投手を)引っ張れるところまで引っ張ればいい」

 この日から7週のうち、6週が6連戦というハード日程に突入した。それを考慮して、守り勝つ野球の生命線とも言えるリリーフ陣をできる限り温存する。敵地での試合だったこともあるだろう。投手陣を束ねる森ヘッドコーチとともに、目先の1勝よりもシーズンを見通した采配だった。

 113球を投げながら7敗目となったネルソンもさばさばした様子だった。

 「きょうは運が味方してくれなかったかな。(8回は)そんなに疲れがあったわけじゃない。森田?

 知らないバッターだった」

 5回、代打森田に浴びた同点2ランだけは悔やまれたが、現実を受け止めていた。

 落合監督

 若いなあ。まあ、経験を積んでいけばいいじゃないか。

 7回無死一塁、3番に起用している平田が犠打を決められず、結果的に空振り三振にたおれた直後にはベンチでこんこんと何事かを言い聞かせるシーンもあった。ブランコ、谷繁という主力2人が不在。ミスも出る。それだけに指揮官はチームとして我慢の時と、とらえているようだ。

 借金は3にふくらみ、5月25日以来の3位転落となった。首位ヤクルトが敗れたことは救いだが、逆転優勝を狙う後半戦のスタートとしては最悪の結果だ。それでも、はるか先を見通しているかのような落合監督の目は余裕をたたえ、不敵に光っていた。【鈴木忠平】