<オールスターゲーム:全パ5-0全セ>◇第3戦◇24日◇Kスタ宮城

 虎も、ツバメも、僕が斬る-。中日浅尾拓也投手(26)が逆転優勝をかけた後半戦へ向け、決意を新たにした。自身2度目の球宴ではセ・リーグの仲間たちとの絆を深めたが、明日26日からの阪神3連戦(甲子園)で再開するペナントレースでは「内角を突いていく」と宣戦布告。最強セットアッパーがライバルたちをねじ伏せ、連覇へ突き進む。

 被災地・仙台での第3戦、浅尾の出番はなかったが3試合を振り返る表情には充実感が漂った。普段はしのぎを削るライバルたちがこの3日間は頼もしい仲間となった。首位を走るヤクルトの館山、由規、青木、畠山らが躍動し、ゲーム差なしで競る阪神の藤川、マートンらの技術に目を見張る場面もあった。

 「この場所でオールスターができてよかった。自分としては出たい気持ちもありましたけど、地元(東北)出身の方がたくさんいますからね。いろいろなすごい選手と話ができましたし、仲良くなりました」

 3試合の中で最高の経験と言えば、阪神藤川とのキャッチボールだろう。先輩岩瀬の計らいもあって実現した貴重な経験だった。

 「藤川さんの球はすごくいい回転でした。見て盗むとよく言いますが、無理です。盗めません(笑い)」

 同じ快速球右腕として火の玉ストレートのすごさを体感し、刺激にした。さらにベンチでは他球団との野手とも話をして、親交を深めた。他人に気配りをしつつも、壁をつくらない浅尾の人柄がにじみ出るシーンでもあった。ただ、お祭り気分はもう終わり。昨日の友は今日の敵となる。明日26日からはその藤川がいる阪神との上位対決でペナントレース後半戦の幕が開く。その話題になった瞬間、浅尾の端正なマスクに、勝負師のたくましさが漂った。

 「仲良くなりすぎて、インコースを攻められなくなったりするのはよくないですからね。僕はどんどん内角を攻めていきますよ」

 3試合すべてにスタメン出場して打撃好調を証明した青木とマートン、さらに初戦でMVPを獲得した畠山などは逆転優勝への強力なライバルとして立ちはだかるだろう。だが、その猛者たちをねじ伏せなければ連覇は見えてこない。容赦なく相手の懐を攻めることで活路を見いだすつもりだ。

 すでに39試合に登板して防御率0・68。年間78試合の驚異的ハイペースで投げ続けるセットアッパーは、精神的なたくましさも身につけて、勝負の後半戦へと向かう。【鈴木忠平】