<広島2-7中日>◇25日◇マツダスタジアム

 マエケンには負けん!

 中日吉見一起投手(26)が8回6安打1失点でチームトップの6勝目を挙げた。同点の7回、吉見のバント安打で好機を広げると打線が爆発。一挙6得点を挙げてエースを援護した。昨季は4度対戦(2勝2敗)した広島のエース前田健太(23)との今季初顔合わせ。意地とプライドをかけた戦いは最後に吉見が笑った。

 太陽は燃えていた。広島市内の最高気温は34度。グラウンドレベルは40度近くまで達していた。そんな状況でも吉見の表情だけは最後まで涼しげだった。低めに変化球を集める投球スタイルを丁寧に貫く。6回には2死三塁から栗原に一時は同点となる右前適時打を浴びたが、顔色を変えることはなかった。7回、8回は3者凡退。防御率は1・63とまた下がった。

 「熱かったですけど、まあ大丈夫です。投手と投げ合うわけではないですけど、やっぱり気持ちは入りますね」。

 吉見のハートは太陽のように燃えていた。なぜならば相手の投手が前田健だったから。昨季は沢村賞を受賞した右腕と4試合投げ合って2勝2敗。1歩も引かなかった。オフの契約更改の席では“マエケン査定”も話題に上がったほどだ。日ごろから「いい投手と投げ合うと気持ちが高ぶる」と口にする男にとって、燃える舞台だった。

 雪辱に燃えていた。同点に追いつかれて迎えた7回。1死一塁から、前進した投手と三塁手の間に落ちるバントを決めた(記録は内野安打)。その直後に荒木が決勝の三塁打。前回16日のソフトバンク戦では2打席連続でバントを失敗し、自主的にバント練習を続けていた。そんな特訓の成果も勝利につながった。

 燃える材料はまだまだある。あとアウト3つというところでマウンドを譲った。今季は10試合に登板して完投はゼロ。「チームの指示ですから」とそれ以上は口にしなかったが、胸に秘めた悔しさはあったはずだ。「しっかりリズムを作って次からも頑張りたい」。燃える男が竜の戦いを熱くする。【桝井聡】