骨だけじゃない、うんこや足跡も立派な化石に。下甑島からはサメの「ふん石」。屋久島ではミミズに似た生物ユムシの“トイレ”丸ごと。直径1メートル超す大物も

 2023/07/10 08:02
複数の傘を重ねたような不思議な構造のズーフィコス化石(鹿児島県立博物館提供)
複数の傘を重ねたような不思議な構造のズーフィコス化石(鹿児島県立博物館提供)
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 化石になるのは、生き物の骨や貝殻などの硬い部分だけなのでしょうか。実は、排せつ物も化石になるのです。生き物そのものでなく、うんこや足跡など活動の跡が残されたものを生痕化石と言います。

 姫浦層群という白亜紀カンパニアン期(約8350万~7060万年前)の地層が分布する薩摩川内市の下甑島から、サメのふん石(ふんの化石)か腸石(腸の内容物が排出されないまま化石化)とみられるものが発見されています。

 サメの腸の内側にはらせん状のひだがあり、ふんはぐるぐると旋回するように腸内を通過してラグビーボールのような形で排出されます。食べた生き物の骨などがリン酸カルシウムに富む成分に置き換わっているのが、サメのふん石鑑定のポイントです。

 鹿児島にはもう一つ、有名なふんの化石があります。屋久島の海岸に分布する新生代古第三紀(約6600万~2300万年前)の熊毛層群という地層中から発見された、ズーフィコスと呼ばれる巨大な生痕化石(化石の跡が岩石に残ったもの)です。まるで傘を開いたような不思議な立体構造が約30個密集しており、最大のものは直径1メートルを超えます。

 正体は、ユムシと呼ばれるミミズに似た生き物が泥の中の餌を食べながら、巣穴の底にふんをしていった跡だと考えられています。つまり、トイレがまるごと化石になっているのです。

 ズーフィコスの最古の記録は古生代デボン紀(約4億1600万~3億5920万年前)の地層からの発見です。ユムシは今でも深さ4千メートル超の深海底の泥に生息しており、ズーフィコスはまさに現在進行形で形成されているのです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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