尾上松也
Takehiro Goto
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、肩に掛けたジャケット7万3700円(ウィーウィル/株式会社ウィーウィル TEL 03-6264-4445) 、その他スタイリスト私物

歌舞伎俳優・尾上松也さんが出合ったシチズン アテッサACT Line(アクトライン)。歌舞伎だけにとどまらず、ドラマや映画、舞台、ミュージカル、バラエティなど幅広く活躍する松也さん。誰の目にも順風満帆に映るその姿の裏には、苦しみもがいた若き日の時間がありました。表現者としてどのような時を重ね、どこを目指すのか。100年以上の歴史を重ねてきたマニュファクチュールであるシチズンの腕時計『アテッサ ACT Line/「AT8185-62E」』を手に、語っていただきます。

時計はデザインや性能に惚れ込んだ
本当にいいものを使いたい

歌舞伎が由来となった言葉は数多くありますが、「板につく」もその一つ。一説には、熟練した役者は足の運びが床板にしっかりとつき、舞台と調和していることから生まれた言葉とも言われています。松也さんの撮影を見ていると、その言葉の意味が腑(ふ)に落ちました。立つ、座る、佇(たたず)んでいるだけのように見えるポーズも、その空間と一体化したような空気感。撮影中に思わずこぼれた言葉が「板についている」でした。

その存在感は歌舞伎だけにとどまりません。ドラマや映画、舞台、ミュージカルなど、多岐にわたって出演。シリアスな役柄から少し間が抜けた愛すべき人物まで幅広く演じ分け、どの作品でも強い印象を残しています。最近では、話題となったNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の後鳥羽上皇役を覚えている人も多いかもしれません。

尾上松也
Takehiro Goto
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、シャツ4万1800円(アンユーズド/アルファPR TEL 03-5413-3546)、パンツ3万4100円(タンジェネット/タンジェネット mitsuruyoshiya@gmail.com)、その他スタイリスト私物

「歌舞伎」という太い幹を持ちつつ、枝葉を伸ばしながらさまざまな活躍を見せる松也さん。それは、手元を飾る『アテッサ ACT Line/「AT8185-62E」』と通ずるところもあります。一見すると美しく深みのある黒。しかし、精密に加工されたさまざまなパーツを組み合わせることで、シルバーやガンメタリックのようにも見え、多彩な表情を生み出しています。

「実際に着けてみると、デザインは男らしくて存在感がある。それなのに、見た目の重厚さからは想像ができない軽さで、着け心地もいいことに驚きました。光の加減で黒のニュアンスが変化するのもいい。僕はメタリックな黒が好きなので、とても気に入りました。普段はラフなファッションが多いのですが、この時計でしたらそんな普段着はもちろん、フォーマルなスーツにも似合いそうです」

30代も後半に入り、腕時計のステータスを少しずつ理解してきたという松也さん。「年齢を重ねることで、似合うようになるアイテムってありますよね。少し高価な腕時計もそう」と語ります。

「俳優仲間や先輩には、腕時計が趣味でコレクションされている方々もいますよ。僕は腕時計に関してはコレクションというよりも、デザインや性能に惚れ込んだ本当にいいものを使いたいタイプですね」

ただ、若い頃にはエントリー価格の時計を何本も買っていた時期があったそうです。

「シチズンさんは、手が届きやすい価格帯の製品も多いでしょう。製品名までは覚えていませんが、絶対にお世話になっていると思います。覚えていないのは、余りにも身近すぎたから。家の中はもちろん、学校にもシチズンさんの時計はありました。常に、僕らの時を支えてくださっている気がしますね」

奇しくも松也さんが感じた「僕らの時を支える」は、シチズンの創業の志を思い起こさせます。社名には、「永く広く市民(CITIZEN)に愛されるように」という意味が込められています。そのために、まだ日本で時計が高級品だった100年以上前から、時計の駆動装置をはじめとする部品のすべてを自社で製造し、さまざまな世界初の技術革新を実現してきました。

onoe matsuya citizen attesa
CITIZEN
今回、松也さんが着用した腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)

もちろん、『アテッサ ACT Line/「AT8185-62E」』にも、さまざまな技術が採用されています。松也さんが感じた軽さもその一つ。パーツに使われているシチズン独自のチタニウム素材「スーパーチタニウム™️」はステンレスに比べて約40%軽く、5倍以上の表面硬度を実現しています。

この素材は、宇宙スタートアップ企業「ispace」による民間月面探査プログラム、HAKUTO-Rのランダー(月着陸船)の着陸脚パーツにも採用されています。また、簡単な操作で世界26都市の時刻とカレンダーを表⽰する「ダイレクトフライト」や「光発電エコ・ドライブ」、「電波受信機能(日中米欧)」なども搭載しています。

「最先端テクノロジーの説明を受けて、最近の技術はすごいと驚きました。正直、ちょっとだけ頭が追いつかない」と笑う松也さん。そして、テクノロジーに対する持論をこう続けます。

「歌舞伎でも最先端の技術を使うことはありますし、それを使おうと思えばいくらでも使えます。ですが、何もなかった時代からアナログ技術を駆使して工夫を重ねてきたからこそ、今があることを忘れてはいけません。過去の歴史を理解したうえで最先端の技術を使うのか、それとも便利という理由だけで使うのか。この二つは意味合いが大きく異なります。過去を知り、残すべきものは残しつつ、今の流れを汲む。その継承とつながりが重要です。シチズンさんのように歴史を踏まえつつ、最先端の技術を追い求めるのは素晴らしいことだと思います 」

常に持ち続けている「危機感」が挑戦する原点にある

400年を超える歴史を持つ歌舞伎の世界に身を置くからこそ、先人の思いを汲み含蓄のある言葉を口にする松也さん。「時」に対しても歌舞伎独自の感覚が垣間見えます。

「例えば同じ舞台でも、歌舞伎と現代劇では稽古の時間が全く違います。現代劇の舞台では少なくとも1カ月は稽古しますが、歌舞伎ですと4日くらい。現代劇の俳優さんからすると理解に苦しむようです。歌舞伎の稽古が短いのは、何度も上演されていて型も決まっているから。初めて演じる新作歌舞伎でも、型があることによってイメージが共有できるので、現代劇ほどの稽古時間がかかりません。一方、現代劇はゼロからイメージを共有して稽古をしますので、どうしても時間がかかります」

ただ、演じるという意味合いにおいては、「歌舞伎も現代劇の舞台も近い部分がある」と言います。それは、起承転結の流れが決まっているということ。「演者としては、歌舞伎と現代劇の舞台では、感覚の大きなズレを感じたことはありません」という松也さん。そんななか、一筋縄ではいかなかったのが映像での演技だそうです。

「ドラマや映画は、必ずしもストーリーの順を追って撮影するわけではありません。序盤よりも先にクライマックスを撮ることもある。そうすると、瞬間的な演技の出力が必要です。ストーリーの起承転結を、時の流れとともに自分で体感しながら演じられる歌舞伎や舞台とはまるで違う。慣れるまでに時間がかかりましたね」

尾上松也
Takehiro Goto
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、その他スタイリスト私物

慣れないドラマでの撮影。歌舞伎という本丸があるのならば、あえて難しいことに挑戦しなくてもいいのではないか? 話をうかがうと、そのような疑問も頭をよぎります。しかし松也さんは、「やらざるを得なかった」と振り返ります。その人生は挑戦の連続でした。

歌舞伎俳優、六代目尾上松助を父に持ち、5歳で『伽羅先代萩(めいぼく せんだいはぎ)』の鶴千代役にて初舞台。12歳までに4つの賞を受けるなどの活躍を見せた松也さん。10代後半からは、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』の浜松屋伜宗之助(はままつやのせがれ そうのすけ)などの若衆役、『人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)』の長兵衛の娘お久などの女方などを中心に、七代目尾上菊五郎さんが率いる菊五郎劇団で修行していました。

大きな転機となったのは20歳の頃。父、松助さんが急逝し、松也さんは若くして一門を率いる重責を担うことになります。そのときから、常に持ち続けているのが「危機感」です。その危機感が、「挑戦する姿勢の原点」と言います。

「父は歌舞伎の家の生まれではありません。そういった意味で、僕はいわゆる名家の出身ではない。そのままやっていても、歌舞伎座で主役を勤める可能性はほぼゼロですし、自分がやりたいこともできないという危機感もありました。その状況を打開するためには、お役を与えられるのを待つのではなく、その機会をつくり出す必要がありました。そのため、ドラマでも映画でも舞台でもミュージカルでも、チャンスがあればがむしゃらにチャレンジしました。『外で評価されることで、歌舞伎でも自分の存在感を高められるはずだ』と考えたからです。むしろ、そのやり方しか選択肢がなかったと言ってもいい。幸いにも、ほかのジャンルの方々に注目され、メディアにも取り上げていただくことができました。それがなければ今、歌舞伎座で主役を勤めることなどできなかったでしょう」

尾上松也
Takehiro Goto
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、肩に掛けたジャケット7万3700円、パンツ3万6300(ともにウィーウィル/株式会社ウィーウィル TEL 03-6264-4445)、その他スタイリスト私物

歌舞伎においても、松也さんは大きなチャレンジに踏み出します。それが、2009年に始めた歌舞伎自主公演。タイトルはズバリ『挑む』。松也さんは「自分自身の可能性に挑むのはもちろん、歌舞伎界に対する挑戦、歌舞伎の「か」の字も知らないスタッフと一緒に“思い”だけでつくり上げるチャレンジなど、さまざまな意味を込めたタイトルです」と振り返ります。

「最初の一歩を踏み出すことは誰でもできます。大変なのは挑戦を継続すること。まさに、『継続は力なり』です。途中、辛くて諦めそうになることが何度もありましたが、この言葉を思い出しながら乗り越えました」

2021年の第10回公演で一区切りを打った『挑む』。そのときの演目の一つは父、松助さんが幼少期に生放送のテレビドラマで主役を演じた『赤胴鈴之助』でした。

「10回続けることができたのは、自分の誇りです。続けたことで多くの方に認められるようにもなりました。継続という言葉を聞くと、すでに始まったことを続ける印象を持ちますが、それだけではありません。まだ具体的に始まっていない目標でも、いつかやりたいという思いを継続することが重要です。それは、夢を諦めないことにもつながる。いつかやりたいこと、かなえたい目標に対する思いを忘れずに持ち続けることは、バイタリティになりますよ」

20代前半には役ももらえず、メディアに出るチャンスもなく、自主公演も集客に苦労する状況もありました。そんなときに支えとなったのが、「継続は力なり」という言葉。継続し、挑戦を続けたことで大きな転機が訪れます。2012年、蜷川幸雄さんが演出した『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』での抜擢。「厳しい演出の中、表現者として自らを解放し、殻を破ることができた」と語る松也さん。ここから、潮目が少しずつ変わり始めました。


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CITIZEN

遊びも仕事も謳歌する男性のための腕時計

ACT Line(アクトライン)は、スーツスタイルとカジュアルの両方で使える、男らしくタフでありながらシャープなデザインが魅力。削り出しのアート作品のような力強さを称えたケースは、ベゼル側面に配したオレンジの差し色が絶妙なアクセントとなり、「アテッサ」ならではの洗練された佇(たたず)まいと妥協のないデザイン性の高さを物語っています。

太陽光や室内のわずかな光を電気に換え、時計を動かし続ける光発電「エコ・ドライブ」によって定期的な電池交換は不要。「10万年に1秒の誤差」とされる原子時計をもとに送信される標準電波を受信するため、常に正確な時刻を刻み続けます。

独自技術の結晶である「スーパーチタニウム™️」を採用し、驚きの軽さと高い対傷性も実現しています。ステンレスと比べて約40%軽量で、5倍以上の表面硬度を誇ります。また、光の約99%を透過させることで反射を抑えるクラリティ・コーティング技術によって、ビーチなど陽の強い環境下でも時刻をはっきりと読み取ることができます。

CITIZEN ATTESAブランドサイト


歌舞伎の舞台に戻ると思います。
「やっぱり、歌舞伎は楽しい」

『ボクの四谷怪談』から約10年、活躍の場はミュージカルや舞台、ドラマへと広がり、歌舞伎でも主役をはじめ重要な役で存在感を高めています。38歳となった今、松也さんは自らをどのように見ているのでしょうか。

「思い描いていた仕事は、着実に実現することができました 。それに関しては、満足していますし誇りにも思っています。自主公演『挑む』も、理想の形で終わりを迎えられました。自主公演ができるということは、スケジュールに余裕があるということでもあります。そういう意味で、『ずっと自主公演ができるような状況ではいけない』と、当初から考えてはいました。おかげさまで2017年以降は、なかなかスケジュールが取れなくなり、2021年に集大成として規模の大きな公演で締めることができました」

一見、今の自分に満足をしているような印象も受けますが、松也さんはこう続けます。

「ただ、本来思い描いていた形にはまだ到達できていません。『じゃあ、具体的にどうしたいのか?』と問われると、正直、それもわからない。ただ一つ言えることは、やりきったと自信を持って終えたい。『あのときに動いておけば良かった』と悔やむより、動いたけれど失敗したと思えるほうがいい。そういった意味では、やりたいと思ったことはなるべく形にできるようにチャレンジしています」

尾上松也
Takehiro Goto
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、その他スタイリスト私物

そのチャレンジのひとつが、新作歌舞伎への挑戦です。これまで『風の谷のナウシカ』のユパ役、『ファイナルファンタジーX』のシーモア役などで舞台を踏んできました。そして2023年7月に上演されるのが、『刀剣乱舞』。三日月宗近役を勤めるだけでなく、演出も手掛けます。

「近年、ゲームやアニメとコラボした新作歌舞伎が話題になることが増えました。とは言え、いわゆる古典歌舞伎も、できた当時は新作だったのです。どの時代でも、歌舞伎を愛する先人たちが新作をつくり続けてきたのです。シチズンさんも、時代に合わせて常に新しい時計を出し続けてきたはず。だからこそ、100年以上の歴史を重ねることができたのではないでしょうか。ブランドでも演劇でも、そして歌舞伎でも、先人の思いを受け継ぎ継承するだけでは未来はありません。例えば新作歌舞伎『刀剣乱舞』などは、ゲームのファンからも注目されており、これまで歌舞伎と接点がなかったお客さまに興味を持っていただけるきっかけにもなります。そういった意味では、新しいものに挑戦することも伝統を継承する一つの方法だと思っています」

実際に新作歌舞伎を観劇すると、“見得”や“所作”などの型に当てはめることで、『ナウシカ』でも『ファイナルファンタジー』でも、歌舞伎になってしまうことに驚かされます。松也さんは、「それこそが歌舞伎のすごいところ。僕はそのエネルギーが好きなんです」と力を込めます。そして最後に、こう結びました。

「ドラマも映画もミュージカルも舞台も、全部好きだし楽しいです。ですが、歌舞伎の舞台に戻ると毎回思うんですよ、やっぱり…『歌舞伎は楽しい』『自分のやりたいことはこれだな』って。『何のために外で頑張っているのか?』と考えると、歌舞伎で自分がやりたいことを実現するため――それが僕の原動力です」

◇ ◇ ◇ ◇

PROFILE
おのえまつや/1985年1月30日生まれ、東京都出身。父は六代目尾上松助。1990年5月、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の鶴千代役にて、二代目尾上松也を名のり初舞台。近年は立役として注目され『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』「寺子屋」松王丸、『源平布引滝』「義賢最期」木曽義賢などの大役を任されている。若手歌舞伎俳優の登竜門である『新春浅草歌舞伎』では、最年長のリーダー役を担っている。歌舞伎以外では、ドラマ『半沢直樹』『まったり!赤胴鈴之助』『ミステリと言う勿れ』『やんごとなき一族』『親愛なる僕へ殺意をこめて』『女神(テミス)の教室』などに出演。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、後鳥羽上皇を演じ話題となった。また舞台、ミュージカルにも積極的で、蜷川幸雄演出の『騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談』(2012)お岩役、ミュージカル『エリザベート』ルイジ・ルキーニ役、三谷幸喜作・演出の舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』俳優・宇沢萬役などにも出演。今後の出演作品に、新作歌舞伎『刀剣乱舞』、映画『Gメン』『ミステリと言う勿れ』、舞台『スリル・ミー』『ガラスの動物園/消えなさいローラ』がある。

【CITIZEN ATTESA ACT Line AT8185-62E

act line at818562e


・キャリバーH800
・ケースサイズ/径42mm × 厚さ10.8mm
・ケース素材/スーパーチタニウム™️
・ケース表面処理/デュラテクトDLC(ブラック色)
・ガラス/サファイアガラス(クラリティ・コーティング)
・動力/光発電エコ・ドライブ
電波受信/日中米欧電波受信
持続時間/光発電10カ月(パワーセーブ作動時)
・防水/10気圧防水
・価格/15万9500円


●お問い合わせ先
シチズン時計
TEL 0120-78-4807
ATTESAブランドサイト
ATTESA AT8185-62


Model / Matsuya Onoe
Photo / Takehiro Goto
Styling / Norimitsu Shiina
Hair & Make-up / Yasunori Okada
Text / Tsukasa Sasabayashi
Edit / Ryutaro Hayashi(Hearst Digital Japan)