災害時に頼りになる自主防災組織、でも…繁華街では町内会未加入、地方では高齢化が壁に
2023/06/06 08:02
大雨や台風で内薗義一さんは各戸に設置された戸別受信機を通して注意を呼びかける=5月29日、南大隅町根占川南
2021年夏。鹿児島市甲突町の清滝町内会長、中島和美さん(78)は高齢者が多く暮らす民家35軒を1人で歩いて回った。浸水に備え、2階に上がるよう呼びかけた。幸い被害はなく、朝を迎えた。天文館のすぐ南に位置する同町内会。1993年の8・6水害では近くの甲突川があふれ、浸水被害も起きた。それから30年がたっても自主防災組織の結成にいたらない。
入居と退去が頻繁なマンションやアパートが立ち並び、町内会加入率は2割弱にとどまる。オートロックが普及し、顔を合わせられない住民も少なくない。中島さんは「他人との関わりを好まない若い世代が目立つ。多くの住民を巻き込んだ実効性のある組織をつくるのは難しい」と悩む。
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南大隅町役場から車で15分。南谷集落には10世帯20人ほどが暮らす。空き家も目立つ。平均年齢は77歳。自治会長の内薗義一さん(76)は「高齢化が深刻で、自主防災組織を立ち上げる余裕がない」。後継者が見つからず、会長を10年以上務める内薗さんの本音だ。「仮に防災組織ができても、引き継げる相手がいない。活動を続けるのは難しいのではないか」
山が迫る集落は土砂災害警戒区域となっている。大雨や台風が近づくと、一気に危険が増す。警戒が必要な際は各世帯に備えた戸別受信機を通し、内薗さんが避難など対応を呼びかけている。
同町は少子高齢化が県内で最も進む。自助・共助に限界がある現場で、自治会ごとに担当職員を配置するなど町役場は各集落と密接に連携できるよう力を注ぐ。
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県によると、県内の自主防災組織活動カバー率は94.1%(22年4月時点)で10年前と比べ16.7ポイント増加した。数字だけを見ると、取り組みは強化されているようだが実情は違う。
「活動に濃淡があり、訓練を継続できない組織も多い」「町内会長が代われば活動が途絶える」-。複数の自治体関係者らが課題を口にする。
特に少子高齢化が進む過疎地域では、町内会や自治会運営自体が維持できないケースが出始めている。共助を担う自主防災組織の足元は揺らいでいる。
薩摩川内市東郷の本俣地区で約20年間、自主防災組織の運営に携わった津田盛吉さん(74)は「組織を機能させるには行政の関与が欠かせない」とした上で、「高齢者が多い地域では周辺の集落と合同で取り組むのも一つの方法ではないか」と提案した。
(連載「自主防災組織の今~2023鹿児島」㊥より)
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