「人を怖がらない」 住宅地でイノシシ目撃相次ぐ 平地少なく山地切り開いて宅地化・・・生息域拡大か 鹿児島市

 2023/06/05 17:41
武岡南公園内で捕獲されたイノシシ=5月上旬、鹿児島市武岡1丁目(読者提供)
武岡南公園内で捕獲されたイノシシ=5月上旬、鹿児島市武岡1丁目(読者提供)
 鹿児島市の武岡や西陵、田上地区などの住宅地で、イノシシの目撃が相次いでいる。市生産流通課によると、正確な統計はないが、市に寄せられる相談は増加傾向という。ベテランの猟師は「人が山に入らなくなっていく中で、徐々に生息域を広げているようだ」と指摘する。背景には、平地が少なく山を切り開いてきた中で森が帯状に残る市内の地形的事情もあるようだ。

 4月下旬、西陵1丁目の団地内で2頭が目撃された。近くには小学校もある。西陵3丁目の会社員牧正幸さん(52)は「30年近く住んでいるが見たのは初めて。人がいても慌てる様子はなく、のんびりとしていた」と振り返る。5月上旬には武岡1丁目の団地内にも1頭現れ、猟友会によって捕らえられた。

 捕獲に協力した田上8丁目の福迫重光さん(86)が猟師を始めた50年ほど前は、吉田や日置市東市来といった山間部にしかいなかったという。ところが、ここ10年は住宅地近くでも姿を見るようになった。

 住宅地近くでは猟銃は使えず、わなでしか捕獲できない。福迫さんや同課によると、イノシシは市内に帯状に残る森の中を移動しながら生息域を広げているとみられる。福迫さんは「人家近くで生まれたイノシシは周囲の環境に慣れて育つため、人を怖がらなくなってきているようだ」と指摘する。

 同課によると、イノシシの目撃情報があった家の多くには、実がなったままの柿や栗の木がある。いずれもイノシシの好物だ。同課は「食べなくなった果樹の木は伐採する」「隠れ場所となる雑草は刈る」「農作物を育てる時は侵入防止のためにトタンなどで覆う」といった対策を呼びかけている。

 これまでに住宅地でのイノシシによる人的被害は確認されていないという。羽生潤一主任は「性格は臆病なので急に襲ってくることは少ない。目撃したら走らずに、ゆっくりと遠ざかってほしい」と呼びかけている。