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日経BP 総合研究所は、林野庁の令和4年度(2022年度)補助事業における中高層・中大規模木造建築物の設計・施工者育成推進のための提案として、木造建築に取り組む実務者に向けて情報を発信している。「ふるさとの発展に役立つ銀行」を経営理念とする愛媛銀行は、地元松山市との間で協定を交わし、建築物での地域産材利用に乗り出す。

 今、愛媛銀行の木材利用を象徴するのは、窓口で現金や通帳などのやり取りに使用する小皿であるカルトンだ。同行では2023年3月から、従来の樹脂製から愛媛県産のクスノキを用いた木製に切り替えている。

愛媛県産材のクスノキを用いたカルトン(写真:愛媛銀行)
愛媛県産材のクスノキを用いたカルトン(写真:愛媛銀行)
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 その数、200。愛媛銀行公務ふるさと振興部次長の中井健二氏は「各営業店の窓口で使用するのが基本。まずは窓口の数に当たる200個を用意する」と説明する。各窓口に行き渡らせた後、順次増産する予定だ。

 木製に切り替えるきっかけになったのは、愛媛銀行が例年1~2回、新入行員を主な対象に実施する森林保全活動である。この活動は、県が松山市内に保有する森林の一角を「愛媛銀行ecHoの森」と名付け、そこで森林教育や下草刈りなどを行うもの。県や公益財団法人愛媛の森林(もり)基金との間で2008年3月に交わした「企業の森林(もり)づくり活動協定」に基づくCSR(企業の社会的責任)活動だ。「カルトンの木製化は、その参加者から寄せられたアイデアを実現した」(中井氏)という。

 木材利用に積極的な姿勢を見せる背景には、松山市との間で2023年1月に交わした「建築物木材利用促進協定」がある。