Tue 230221 緊迫の時々刻々/緊急処置/完治いたしました/2022除夜の鐘 4326回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 230221 緊迫の時々刻々/緊急処置/完治いたしました/2022除夜の鐘 4326回

  ずいぶん気楽にあっけらかんと書き流しているものの、12月13日に沖縄を訪れた段階で、ワタクシは「失明の危機」を如実に感じ、もしもここでホントに失明することになったら、この先の人生をどう生きていこうか、それを思えば、とても「ブエノチキン」だの「こけこっこハウス」だのに熱中できる状況ではなかった。

 

 あの頃の暗鬱な気分を、さすがにそろそろ忘れてしまいたいので、今日の記事では12月13日から1週間の記録を、「刻一刻」というか「時々刻々」というか、冷静にスラスラ書きつづって、イヤなことばかりだった2022年を、今日こそ締めくくってしまおうと思う。

(12月16日、手術を控えたワタクシは、チェーン中華料理店「梅蘭」で、名物「かたやきそば」を注文した)

 

 12月13日、午後7時から那覇の中心「安里」の校舎内で公開雨業、出席者約100名。ここの生徒諸君はマコトに優秀であって、ワタクシとしても、爆笑トークより授業本体に夢中になっていい会場である。

 

 重症の網膜剥離が決定的になったのが、この公開授業の序盤10分経過の時点。もともと左の眼球中にウヨウヨしていた細長い飛蚊とは比較にならないほどの極太、黒々としたリボン状の飛蚊が左の視界のど真ん中に現れ、激しく身をよじるように回転し始めた。

 

 その回転があんまり激しいので、もうテキストの文字を追うことも困難。しかしワタクシはテキストの英文をほぼ暗記しているから、たとえテキストが見えにくくても、授業続行は可能。そのまま何事もなかったように90分を語り通し、その夜は無事にホテルに帰還した。

 

 翌日は、那覇からクルマで1時間余りの「胡屋」で、午後7時から公開授業。しかしまず朝のうちに、前から何度も書いている「東京都内屈指の隠れた名医」に連絡し、翌日お昼前の時間帯に診察してもらうことに決まった。

 

 もちろんヒコーキも、昼過ぎの便の予定だったのを、朝一番のヒコーキに予約し直し、万全の態勢。その「隠れた名医」に、ワタクシは10年も前から全幅の信頼を置いているし、名医自身も「大丈夫」「心配はいりません」と太鼓判を押してくれた。

(梅蘭の名物かたやきそば。オイシューございましたが、どうしてもこれが自分の眼球の状況を暗示しているみたいに見えてしまう。あの頃の病状を考えて、許してくれたまえ 1)

 

 そこで何しろ「腹が減ってはイクサはできぬ」であるから、眼球内で進行中の一大事をいったん脇に置いておいて、沖縄の旨いランチを満喫するために、暗いホテルの部屋を出た。

 

 そこで貪ったランチが、前回の記事の3枚目以下、数枚の写真である。ゴーヤチャンプルーとジーマミードウフは、かつて大盛況を極めた「牧志公設市場」至近の小さなお店でいただいた。

 

 牧志の市場は、今や解体作業の真っただ中。コンクリートを粉砕する不快な爆音が響き渡る中、いかにも根性たっぷりの店のオバチャンが、「ウチのジーマミードウフは自家製ですから、粘りが全く違いますよ」と胸を張った。確かに経験がないほどの旨さだったので、ホテルでの夜食用に1個、パックに詰めてもらったりした。

 

 しかしもし「根性」の比較になるなら、そのお向かいのカフェのテラス席でまったりしていた20歳代後半とおぼしきカップルに、勝る者は考えられない。

 

 テラスのテーブルは、牧志市場の解体現場から5メートルも離れてはいなかった。十数人の作業員の皆さまが、カップルのスレスレを動き回る。カップルのテーブルに接触ないし衝突も繰り返す。

 

 コンクリートの粉砕音は耳をつんざくばかりであり、ドリルの先からはコンクリートの粉塵がもうもうと舞いあがる。「息もできないほど」と言っていい。左の眼球に危機を抱える今井君は、目を開けることも躊躇する。それでもテラスの彼氏&彼女のまったりぶりには、いささかも動じる気配が見えないのである。

 

 牧志市場がここに存在した長い年月を考えれば、この粉塵の中には、言わば沖縄の近現代史が凝縮されている。「粉塵の中のカップルは、あえてあのオープンテーブルにしがみつくことで、那覇の近現代のカホリを胸いっぱいに吸い込もうとしていたのかもしれない」とまで言えば、もちろん滑稽なウガチすぎに決まっている。

(梅蘭の名物かたやきそば。どうしてもこれが自分の眼球の状況を暗示しているみたいに見えてしまう。あの頃の病状を考えて、許してくれたまえ 2)

 

 前回記事の写真5枚目は、牧志市場の反対側、ハイアットリージェンシーホテルから徒歩2分か3分のところに発見した「ステーキ 究」のカットステーキ。「究」と書いて「きわみ」と読む。超人気店のようで、開店前からすでに列ができていた。本業は精肉店であって、だからこそ新鮮な旨いステーキが提供できるということらしい。

 

 カットステーキには大・中・小があって、小が170g・中が340g、大が510g。カットしない普通のステーキの方は、小・中・やや大・すげー大があり、それぞれ150・300・450・600グラム、いやはやたいへんなボリュームだ。

 

 いつもなら当然のように「すげー大」を選ぶ今井君であるが、やっぱりここでも眼球が原因のしょんぼりは治らず、カットステーキ「中」とかハンバーグとか、ずいぶん謙遜したランチにとどめることにした。

 

 ホテルのロビーで17時に待ち合わせ、スタッフと胡屋校に向かう。東進移籍以来、胡屋の街もすっかり馴染みになって、おそらくこれが6回目の訪問。マコトに小さな町だが、15年前には古い古い公民館に400名もの生徒諸君を集めてくれた思ひ出深い校舎である。

 

 だから網膜剥離のことでは、生徒諸君にも校舎の皆さんにも心配をかけたくなかった。眼球内で回転する黒いリボンのせいで、テキストはますます見えにくくなっていたが、一切オクビにも出さずに90分、約100名の公開授業は無事終了。22時すぎにホテルに帰還した。

  (松本出張の朝、新宿駅でチキン唐揚げセットを購入)

 

 翌12月15日は、朝一番のヒコーキに乗り込んで、午前9時すぎに羽田空港に到着。前回記事の写真6枚目、快晴の冬空の下、ANAのヒコーキがズラリと並んだ美しい光景は、まあそれなりに幸先もよかった。

 

 羽田からはタクシーで「隠れた名医」のクリニックに駆けつけた。「確かに剥離が始まっています」とクリニック内は色めき立ち、「直ちに手術を始めるか」「今日はレーザーで応急処置をして、手術は様子を見て4日後に行うか」を、患者のワタクシと、「隠れた名医」と、名医のアシスタントで緊急協議した。

 

 ワタクシは「今は応急処置、手術は4日後」を選択。この日の夕暮れ7時から横浜で公開授業があり、18日にも長野県松本で公開授業があって、こんなギリギリのタイミングでいきなり中止というのは、あまりに申し訳なかったからである。

 

 そこで早速「レーザーでの応急処置」に入った。例えば一枚の布の真ん中に、大きなカギ裂きが出来ちゃったとする。するとまず応急処置として、カギ裂きの周りを丸くかがって、カギ裂きが取り返しのつかないほど拡大するのを抑止する。

 

 それと同じように、網膜の真ん中の剥離した部分を、レーザーで楕円形にギュッとかがっていくのである。布と違って網膜はマコトに繊細で脆い存在だから、今すぐちゃんとかがっておかないと、出血中の網膜はどんどん剥がれ落ちて、ペロンと大きな穴が開く。そうなってはもう、復位させる処置は困難になる。

 

 レーザーを100回だったか150回だったか、数えていなかったからハッキリしないが、とにかくおどろくほど丁寧に穴の周囲をかがってくれて、網膜からの出血も止まった。眼球内の黒いリボンは相変わらずマコトに不気味に回転しているが、これで4日後までは大丈夫というところまで改善した。

(新宿駅のチキン唐揚げ。「ブエノチキン」「こけこっこハウス」の思ひ出が蘇る)

 

 いったんオウチに帰って沖縄出張用の荷物を片付け、新宿発午後4時の「湘南新宿ライン」に乗って、手ぶらで横浜に向かった。ついさっきまで重症だった左目を大事に大事にカバーしながら、懐かしい横浜シェラトンホテルのロビーでひと休み、開始1時間前に会場に入った。

 

 横浜駅前のシェラトンホテルを利用していたのは、すでに20年以上も昔のことである。駿台でも代ゼミでも横浜校は、御茶ノ水や代々木の本校に次ぐワタクシの第2の本拠であって、確かに東京のオウチから通勤することも可能だが、やっぱり宿泊した方が落ち着いて仕事ができた。

 

 あのころ頻繁に出入りしたのが、ホテルの6階だったか7階だったか、高級和食レストランの中にあった「木の花」というカウンターの天ぷら屋さん。20年以上もむかしの思ひ出だが、この夜のような危機の緊迫感の中では、懐かしい場所でゆったり時を過ごすのはホッとするものである。

 

 横浜での公開授業は、出席者約150名。この1年でグイグイ在籍者数を伸ばしている横浜駅東口のハイスクールが主催。2022年の1年間で、今井の公開授業を3回も実施してくれた。これでもし生徒がぐんぐん増加しないんじゃ、大ベテラン今井の沽券に関わる。

 

 使用したのは、東京大学が出題した長い長い小説文。この10年の東大は、娘と母親の確執を描いた小説文を繰り返し繰り返し出題してきた。

 

 親離れして独立し故郷を離れていこうという選択肢A。しかしやっぱり故郷と両親の引力に引かれ、穏やかで静かな人生を選ぼうとする選択肢B。娘と母の確執はこの2つの選択肢の間で発生する。

(松本の名店「こばやし」で、信州名物・馬刺しをいただく。たいへんオイシューございました)

 

 どうして同じようなテーマの小説文を、こんなに繰り返して読解問題の素材とするのか、さすがに今井君はうすうす理解できているように思うし、普段の授業なら、その辺りにもいろいろ言及するのだが、何しろ数時間前まで危機にあった今井君、そんなココロの余裕はなかった。

 

 そこで満員の受講生諸君に、この夜は素直に事情を告白した。実は網膜剥離で先ほどまで危機にあり、網膜の真ん中の出血している穴をかがって応急処置を済ませ、4日後に手術の予定、ついては今日のテキストの文字が余りよく見えません。冒頭の告白は、以上の通りである。

 

 どよめきが起こったが、それでもワタクシは勇敢にというか、無謀にというか、早速その超長文の解説に入った。何度かテキストを読み間違えたり、口がもつれたりしたものの、100分かかって公開授業は見事に終了。こんな状況でも、ワタクシがテキストをやり残すなんてことは決してないのだ。

 

 その後、16日 → 17日と2日間はオウチの部屋を中心に安静を心がけ、18日は朝から長野県松本での公開授業に向かった。

 

 今井君にとって、12月18日は実は鬼門なのだ。遥かな昔のこと、外国のとある町のホテルで、ちょっとしたfiascoを演じてしまったこともあったし、一昨年の12月18日には、京都四条の高級ステーキレストランで食事中、いきなり左下の奥歯が1本、ポロリと抜けたこともあった。

 

 だからこの日の状況下で、松本までの出張旅行には若干の心配もあった。新宿駅で朝食がわりのチキン唐揚げセットを買って、松本行き特急「あずさ」に乗り込み、唐揚げセットのパッケージを眺めて、「ブエノチキン」「こけこっこハウス」の思ひ出に浸ったりもした。

(12月18日、出張からの帰り、長野県松本駅で、こんな駅弁を買った)

 

 松本に到着して、まずランチ。「四柱神社」というありがたい神社の脇にある「こばやし」、信州蕎麦を代表する名店である。ついでに四柱神社のほうに視線をやって厄払いのつもり、「12月18日に、何も起こりませんように」「12月19日の手術が、大成功になりますように」「2023年こそ、いいこと満載の1年になりますように」、そうお祈りした。

 

「こばやし」で注文したのは、まず信州名物の馬刺し、続いて大きな海老天ぷらの載った天ぷら蕎麦。「蕎麦の名店に入ったら、意地でもせいろでしょ?」という気むずかしいオジサマ&オバサマ連の冷たい視線を振り払いつつ、信州の厳しい寒さをはねのけるためにも、馬刺しと熱い天ぷら蕎麦を夢中で胃袋に収めた。

 

 松本での公開授業は16時開始、17時半終了。出席者、約200名。何しろ翌日の昼から手術が控えている身として、「夕暮れの松本でもう一杯」などというイケナイことは一切考えず、帰りの「あずさ」に飛び乗った。

 

 翌日の手術の大成功については、すでにこのブログでも2ヶ月前にキチンと書いたはずである。年末に予定されていた静岡と池袋の公開授業は、さすがに止むを得ず中止することになって、関係各位に大いに迷惑をかけた。

 

 あの手術で、締めくくりに眼球内に注入した大量の治療用ガスは、1月いっぱい左の視界を黒く塞いでいたが、2月の上旬には丸い気泡となって眼球内にプカプカ浮かぶようになり、次第にその体積も小さくなってイクラ状に縮んでいった。

 

 そしてついに今朝、気泡は完全に消滅。全治2ヶ月、ワタクシのお目目は完全に復活したのである。めでたし&めでたし。だからこそ、今日もまた余りに長く書いてしまったことを反省しつつも、完治に快哉を叫びつつ、2022年の記録を締めくくりたいと思ったのだ。

 

 おお、ココロの中で、除夜の鐘が鳴っているじゃないか。時計を見れば間もなく23時半、紅白歌合戦も最終盤、そろそろ「ゆく年くる年」スタンバイOK、気の早い人はもう初詣の列に並んでいる頃だ。

 

 そういうわけで、2022年の記録ラストを飾る写真には、長野松本「四柱神社」至近、名店「こばやし」の天ぷら蕎麦を選んだ。これを年越し蕎麦に見立てて、2023年が全ての人にとって素晴らしい1年になるよう、今みんなで熱く祈ろうじゃないか。

(2022年の記録を締めくくるのは、長野県松本の名店「こばやし」の天ぷら蕎麦。年越し蕎麦のつもりで御覧あれ。なお、画面の右上は馬刺し用の醤油皿である。念のため)

 

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 4/4

2E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.1

3E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.2

6D(DMv) MOONFALL

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