KDDI(au)の高橋誠社長は2022年7月3日、7月2日午前1時35分ごろから継続している全国的な通信障害について緊急会見を開き「社会インフラを支え安定したサービスを提供しなければならない通信事業者として深く反省している。お客さまには多大なご迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と陳謝した。

記者会見で陳謝するKDDIの高橋誠社長(右)と吉村和幸取締役執行役員専務技術統括本部長(左)
記者会見で陳謝するKDDIの高橋誠社長(右)と吉村和幸取締役執行役員専務技術統括本部長(左)
(写真:日経クロステック)
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 今回の通信障害では、音声電話やSMSが一時つながらなくなったほか、データ通信がつながりにくかったり途切れたりといった状態になった。影響を受けた回線数は7月3日午前11時時点の概算で最大約3915万回線。内訳はスマートフォン・携帯電話が同約3580万回線、MVNO(仮想移動体通信事業者)向け回線が同約140万回線、IoT(インターネット・オブ・シングズ)回線が同約150万回線、「ホームプラス電話」回線が同約45万回線。

 通信障害のきっかけとなったのは、メンテナンスの一環としてモバイルコア網と全国各地の中継網をつなぐコアルーターのうち、1拠点で旧製品から新製品へ交換する作業。これに伴い通信トラフィックのルート変更を実施している際に「VoLTE交換機でアラームが発生した」(高橋社長)。確認したところ「ルーターのところで何らかの不具合が起き、一部の音声トラフィックが不通になったことが判明した」(同)。

最初に発生した障害の概要。コアルーターを旧製品から新製品へ交換したところ何らかの不具合が発生した
最初に発生した障害の概要。コアルーターを旧製品から新製品へ交換したところ何らかの不具合が発生した
(写真:日経クロステック)
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 アラーム発生を受けて、7月2日午前1時50分に当該音声トラフィックの切り戻しを実施したが、「VoLTEでは通信が発生していなくても約50分に1回位置登録が発生する」(吉村和幸取締役執行役員専務技術統括本部長)ことから、切り戻し後に再接続要求が多発するなどして「少なくとも通常の2倍以上」(吉村専務)のアクセスが集中。VoLTE交換機で輻輳(ふくそう)が発生した。このVoLTE交換機の輻輳に伴い、加入者データベースに登録した位置情報をVoLTE交換機に反映できず、加入者データベースでデータの不一致が発生した。

コアルーターの切り戻し後に起きた障害の概要。VoLTE交換機へのアクセスが集中し、さらに加入者データベースのデータにも不一致が発生した
コアルーターの切り戻し後に起きた障害の概要。VoLTE交換機へのアクセスが集中し、さらに加入者データベースのデータにも不一致が発生した
(写真:日経クロステック)
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 これを受けて7月2日午前3時以降、負荷低減のため流量制御を実施した。それに伴って、全国規模で音声通話やデータ通信がつながりにくい状態になった。

 復旧見通しについて高橋社長は「復旧作業は西日本で7月3日午前11時に完了し、東日本も同日午後5時30分に完了する見通しだ。全国で徐々に再開しているが、一部エリアでまだデータ通信や音声通話がしづらい状況が残っており、最終的にネットワーク試験の結果を検証したうえで規制を順次解除していく」としている。併せて高橋社長は「個人・法人への補償についても検討していく」とコメントした。