【プレビュー】「合縁機縁~大倉集古館の多彩な工芸品~」大倉集古館で8月16日から 様々な縁で集まり伝えられたアジアの工芸品の美

「大倉邸美術館内之図」 山本昇雲(松谷)画 、 明治35年(1902)

現存最古の私立美術館である大倉集古館(東京・虎ノ門)は、今年(2022年)、前身である大倉美術館が公開されてから120年の節目の年を迎えました。8月16日から始まる企画展「合縁機縁~大倉集古館の多彩な工芸品~」では、120年の大倉集古館の歴史を、大倉財閥ゆかりの刀剣、古代中国の陶俑、清の染織品、タイの美術品など、あまり公開されてこなかった貴重な工芸品を通じて、振り返ります。

明治35年(1902)に大倉喜八郎が自邸の一部を美術館として公開した大倉美術館は、日本・東洋の仏教美術、絵画、工芸品、考古遺物、典籍など様々なジャンルの作品を所蔵しました。大正12年(1923)の関東大震災により、建物や所蔵品の多くを失いましたが、当時の大倉美術館の様子は、絵や写真などの資料で知ることが出来ます。

「大倉邸之図(大倉美術館)」山本昇雲(松谷)画 、 明治35年(1902)
「大倉集古館外観」明治~大正・ 20世紀
「大倉美術館内部」明治35年(1902)

開館当時、所蔵品の目玉の一つが、世界一のコレクションと称された中国の「堆朱(ついしゅ)」や螺鈿(らでん)などの漆工品でした。本展では、震災を潜り抜け、現在も残る漆工品の名品を紹介します。

「唐草文螺鈿手箱」朝鮮 高麗時代・ 13世紀

政商として知られ、軍部との繋がりがあった大倉財閥ならではなのが、刀剣コレクションです。天皇の御用も行った幕末~明治の名工・初代月山貞一や、日置兼次をはじめ、有栖川宮家のお抱え刀工であった桜井正次らによる名刀を展示します。

 

「剣 銘 明治三十九年十月吉日兼先十二代孫兼次謹造之/祝大倉君高齢」日置兼次作、明治39年 (1906年)
「刀 銘 以本渓湖高純鉄 果(花押)/皇紀二千六百参季十月吉日」柴田果作、昭和18年(1943)

大正時代の大倉集古館のコレクションの特色のひとつが、古代中国の墓に使われた煉瓦の一種「磚(せん)」や副葬品の陶器の人形「陶俑(とうよう)」でした。俑は約124点ありましたが、関東大震災を経て、現在は43点を所蔵します。その一部を東京国立博物館が所蔵する俑の優品とともに展示します。

「加彩駱駝」中国 唐時代・ 7~8世紀
「加彩女子」中国 唐時代・ 7~8世紀

大倉財閥は、清朝皇帝や親王・群王とも関わりがあり、清朝官吏の吉服「蟒袍(マンパオ)」や甲冑なども所蔵しています。本展では、日本では珍しい清朝の染織を紹介します。

「蟒袍」中国 清時代・ 19世紀

また、コレクションは日本のみならずタイやチベットの仏教美術品にまで広がっています。中には、イギリスの大学で同窓だった関係から、タイの王族より寄贈された工芸品なども。さまざまな縁によって現在まで伝えられてきたアジアの工芸の美を、大倉集古館ならではの多彩なコレクションで堪能することができるでしょう。

「銀製鍍金ニエロ水鉢」タイ ラタナコーシン時代・ 20世紀
「宝冠仏立像」タイ ラタナコーシン時代・ 19世紀

(読売新聞美術展ナビ編集班)

企画展 合縁機縁~大倉集古館の多彩な工芸品~
会場:大倉集古館 (東京都港区虎ノ門2-10-3)
会期:2022年8月16日(火)~ 10月23日 (日 )
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
アクセス:地下鉄南北線・六本木一丁目駅より徒歩5分、日比谷線・神谷町駅より徒歩7分、銀座線・溜池山王駅か虎ノ門駅より徒歩10分
入館料:一般 1,000円、大学生・高校生 800円、中学生以下無料
詳しくはhttps://www.shukokan.org/へ。

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