ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズのパートナーシップは、ファッション・シーンにおいて最も興味深く、そして世界中が有望視するコラボレーションであると言えるでしょう。まさにこの2人のデザイナーのタッグは、不透明な未来と既視感にあふれたファッション業界において、美への極点を見出すことができる類い稀なオーラをコンビネーションで放っています。
2020年4月に「プラダ」の共同クリエイティブディレクターに就いたラフ・シモンズは早々に、このメゾンのコードをミウッチャ・プラダから十二分に吸収し、歪めることなく再構築してきました。シモンズがデザイナー人生を再始動させた2001~02年秋冬コレクションをご存じであれば、その変化を真に感じ取れるはずです。「プラダ」の典型的なスタイルを臆することなく、不滅のものへ導こうとしている意志が感じとれるはずです。
2022年6月20日(現地時間)、ミラノ・ファッション・ウィーク期間中にプラダの最新コレクションである「2023年春夏コレクション」が発表されました。今回のテーマは、「PRADA CHOICES」。そこには、「ファッションとは“選択”であり、さまざまな要素や服の組み合わせ、ムード、スタイルなどを自らの意思によって決定するもの」というメッセージが込められています。
そんなコレクションでは、ミニマリズムとアグレッシブさ、そしてコントラストとインスピレーションが見事に融合され、1990年代のプラダの美学を具に再現しながらも時代性を加味したメンズウェアのビジョンが提示されている…と言っていいでしょう。
精巧なテーラリングによるジャケットとウルトラスキニーパンツという、2つの印象的なルックで幕を開けました。続いてサイドジップが付いた黒のレザーショーツに、ブーツという組み合わせが続きます。そこでのブーツも注目で、テキサス流のウエスタンブーツとアントワープ流のチェルシーブーツが絶妙に融合させたかのようなデザインを擁するブーツだったのです。
するとレザーから、再びテーラードへと変化します。さらに、見逃してはならないシーンへと続きます。そうして再び、レザーショーツへ。それがしばらく続くと、「プラダ」らしいギンガムチェックのシャツやコートが登場します。
中でもギンガムチェックのコートを、ミニマルな黒のレザートレンチコートの下に着たルックは、メゾンの美学に相反する要素を完璧にシンクロさせていると言えるでしょう。
今回のショーで「プラダ」は、「ロゴが見えずとも、『プラダ』の服であることが認識できるスタイルの新時代」をマークしたのです。「プラダ」にとって象徴的な、三角形が際立って存在するアイテムも登場します。ですが、その三角形内は空で、ブランドの古典的なレタリングはありません。
それでも登場するモデルたちは皆、「プラダ」であることを明確かつ独創的に示しながら、劇場の主役として次々とキャットウォーク上を歩んでいきます。それはまさにMise-en-scène(ミザンセーヌ)…目の前に展開するウェアその着こなし、そしてそれを着こなす演者=モデル、さらにセット、小道具、照明効果といったすべての演出のシナジー効果によって、「プラダ」らしさを再確認させるクリアで華麗なショーを完成させていました。
このように「プラダ」の2023年春夏コレクションは、知的な誠実さとともにメンズウェアの本質への探究心を精力的に表現したメンズコレクションだったのです。
これは、「他のメゾンとは異なる表現方法」と言えるかもしれません。ですが、「それこそがメンズファッションのすべて」とも思えたのです。いずれにせよ、それはそれは興味深く素敵なショーでした。
Source / ESQUIRE IT