自動車時代の到来から現代に至るまで、人々は実にさまざまなモータースポーツを生み出してきました。F1に代表される超高速のオープンホイールレースから、地方開催のストックカーレース(編集注:市販車のレースのこと)まで。世界各地で毎週末のように、人々は自動車の性能を極限まで引き出すべくモータースポーツに打ち込んでいます。
そんな多様なモータースポーツの世界ですが、イギリスで毎年開催されている「カージャンプ・チャンピオンシップ」ほど風変りなイベントもないはずです。
このイベントは 毎年一度、イギリス中からその腕に自信のあるドライバーたちが集結。「アングメリング・レースウェイ」のオーバルサーキットで、あの伝説のスタントマン、イーベル・クニーベルをほうふつとさせる大ジャンプを披露するのです。
競技内容に至っては、実にシンプルです。小型のハッチバックで急勾配のスロープからジャンプし、足元に並べられた何台もの車両を飛び越えるというもの。中にはキャンピングカーを牽引しながら、大ジャンプを披露しようとする猛者もいます。
クニーベルが行った数々のスタント同様に、常にうまくいくとは限りません。ページ冒頭で紹介した動画にあるように、見るも無残な結果も少なくないことは想像できるはず。
ですが、その挑戦に対する観客席の反応も含め、いくつかの要素でポイントが加算される採点方法になっているので、例え失敗ジャンプと言えども絶望する必要もありません。ですが、発射台を飛び出したドライバーの多くが背筋の凍るような経験をするというのは、言うまでもありませんね。
ほとんどの車が、1本目のチャレンジで当然のように姿を消していきます。そうして見事に生き残った車だけが、再び発射台のスロープでアイドリングすることが許されるというわけです。しかし、なぜこんな無謀なことをやろうと思うのか? ちょっと理解が及ばないのも事実です。
[カージャンプ・チャンピオンシップ2022の動画]
モータースポーツにクラッシュはつきものです。ですが、参加ドライバー全員が確実にクラッシュしなければならないという競技は、そう滅多にあるものではありません。車を使った長距離ジャンプということで、怪我のリスクは常に付きまといます。
車でジャンプした経験のある人なら、よくご存じでしょうが(そう多くはいないと思いますが…)、着地の瞬間が心地いい…などということはおそらくあり得ません。ですが、栄誉を手にするためとあらば、あらゆる代償をも厭(いと)わないのがチャレンジャーというものなのでしょう。
Source / Road & Track
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です