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 米アマゾン・ ウェブ・ サービス(AWS)は2021年11月29日~12月3日(米国時間)にかけて年次イベント「AWS re:Invent 2021」を開催している。同年11月30日(同)には、新たにCEO(最高経営責任者)に就いたアダム・セリプスキー氏が基調講演に登壇し、多数の新製品・新サービスを発表した。

米AWSのアダム・セリプスキーCEO(最高経営責任者)
米AWSのアダム・セリプスキーCEO(最高経営責任者)
(出所:米AWS)
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 「多くの企業がミッションクリティカルなアプリをAWS上で動かしている」。米NetflixやNASA(アメリカ航空宇宙局)、NTTドコモといったユーザーの名前を挙げながら、セリプスキーCEOは企業や官公庁などエンタープライズ領域でのAWS利用の広まりをアピールした。

 こうした動きを加速させそうなのが、今回発表した新サービスの1つ「AWS Mainframe Modernization」だ。メインフレームはクラウド移行が難しく、オンプレミス(自社所有)環境の「聖域」となっている。Mainframe Modernizationはメインフレームで稼働するアプリをターゲットに、AWS上の仮想マシン「Amazon EC2」やコンテナ、イベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」などへの移行を支援する。

 具体的にはメインフレーム上のアプリを分析したうえで、例えばCOBOLアプリをJavaで作り直してAWS上にデプロイする。その後の運用を含めて一連の作業の流れは、AWSのCI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)パイプラインサービスで制御する。AWSによれば、Mainframe Modernizationの利用によって移行にかかる時間が従来の3分の2に短縮できるという。

 移行対象の開発言語としてはCOBOLに加えて、「PL/1(Programming Language One)」に対応。バッチ処理を制御する「JCL(Job Control Language)」や米IBMのミドルウエア「CICS(Customer Information Control System)」など、メインフレーム上の定番アイテムも対象に並ぶ。「メインフレームは高価で複雑」と見るセリプスキーCEO。AWSがメインフレームからの移行促進にも本腰を入れ、エンタープライズ領域の深耕を強めてきた。

オブジェクトストレージの「S3」がトランザクションをサポート

 「企業のデータ活用ではガバナンスが欠かせない」。セリプスキーCEOは、データベース、データレイク、アナリティクス、機械学習の4つのコンポーネントを活用したデータ活用の流れについてこう言及。そのうえでRDBMS「Amazon RDS/Aurora」やNoSQLの「Amazon DynamoDB」「Amazon Neptune」などの自社サービスを紹介し、「パフォーマンスやスケーラビリティー、コストなどでデータベースを使い分ける」(セリプスキーCEO)方針を改めて示した。

 データ活用関連で目についたのは、データレイク管理「AWS Lake Formation」への2つの機能追加だ。1つはAWS Lake Formationへの行と列レベルでのセキュリティー機能を実現したことである。これにより、Lake Formation配下のオブジェクトストレージ「Amazon S3」のテーブルに対して、セルレベルでアクセスを制御できるようになった。アマゾン ウェブ サービス ジャパンの瀧澤与一パブリックセクター技術本部本部長/プリンシパルソリューションアーキテクトは「個人情報を限定的に公開したいようなアプリでの利用が考えられる」と用途を話す。

 もう1つの機能追加は「Governed Tables」である。S3で利用できる新たなテーブルタイプで、ACID(不可分性、一貫性、独立性、永続性)特性を保ったトランザクションがサポートされる。これにより、信頼性や一貫性を保ちながらデータレイクに対してデータを読み書きできるという。

 比較的安価にデータを蓄積できるS3は、AWSの中核サービスの1つだ。そこに企業ユーザーが求めるセキュリティーやトランザクション機能を後付けし、さらに魅力を高める狙いがみえる。