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 携帯電話ネットワークを次々に侵食する米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)から、またしても注目のサービスが登場した。2021年11月30日(米国時間)に同社のイベント「AWS re:Invent 2021」にて発表した「AWS Private 5G」がそれだ。ローカル5Gのような企業専用の5G網を、わずか数日で高額な初期費用なしに提供できるという。5Gビジネスの本命といわれる企業向け分野でも、AWSの快進撃は止まりそうにない。

米AWSは同社のイベント「AWS re:Invent 2021」にて企業専用の5G網を手軽に構築できる「AWS Private 5G」を発表した
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米AWSは同社のイベント「AWS re:Invent 2021」にて企業専用の5G網を手軽に構築できる「AWS Private 5G」を発表した
(出所:AWSの基調講演の様子をキャプチャー)

数日で企業専用5G網を利用可能に、米国CBRSバンドを活用

 「複雑なインテグレーション抜きにわずか数日で、モバイルテクノロジーの優れた機能を企業が利用できるようになる。高額な初期費用もいらない」――。

 AWS re:Invent 2021の基調講演に登壇した、同社CEO(最高経営責任者)のAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は、新サービスであるAWS Private 5Gについてこう述べた。

 企業は現在、Wi-Fiや有線ネットワークを使って業務に活用するケースが多い。Wi-Fiの場合、遅延の保証が難しく、エリアも5Gのような携帯電話ネットワークと比べて狭いという課題がある。有線ネットワークは工場内の頻繁なレイアウト変更などに対応するにはコストがかかるという点がデメリットだ。

 こうした課題の解決手段として注目を集めているのが、企業専用の5Gネットワークだ。国内では企業が地域限定で電波を獲得し専用ネットワークを運用できる「ローカル5G」がある。海外では共用周波数帯などを活用して、同様の専用網を運用できる「プライベート5G」への期待が高まっている。

 ただしローカル5Gやプライベート5Gには、高額な初期コストがかかるほか、ネットワーク導入の敷居が高いという課題がある。ローカル5Gの場合、初期コストは数千万円かかるといわれ、置局設計や運用支援などのネットワーク導入についてもSIerに頼むケースが一般的だ。

 AWS Private 5Gは、このような企業専用5Gネットワークの導入の手間を極力簡単にし、料金も初期コストなしに、利用したネットワーク容量に応じた従量課金にするという。

AWSのコンソール画面から必要な容量やカバレッジを入力することでセットアップされた小型基地局などが送られてくる
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AWSのコンソール画面から必要な容量やカバレッジを入力することでセットアップされた小型基地局などが送られてくる
(出所:AWS)

 具体的には、AWSのコンソール画面で企業専用の5Gネットワークに必要な容量やカバレッジの広さなどを入力すると、AWSから企業宛てにセットアップされた小型基地局やサーバー、SIMカードが送られてくる。企業は小型基地局やサーバーを電源とインターネット回線につなぎ、AWS Private 5GにつなぎたいデバイスにSIMカードを挿入、AWSのコンソール画面でアクティベートすると、デバイスが企業専用の5Gネットワークにつながるようになる。現時点でAWS Private 5Gに対応する周波数帯は、米国で免許不要で利用できるCBRS(Citizens Broadband Radio Service、市民ブロードバンド無線サービス)対応の3.5GHz帯という。

 セリプスキー氏は基調講演でAWS Private 5Gについて、「企業のオフィスから大規模なキャンパス、工場のフロア、倉庫まであらゆる企業ネットワークに対応できる。自動構成してセットアップするだけだ」と強調した。