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 デジタルトランスフォーメーション(DX)の「副作用」ともいうべき問題を解決するためのクラウドサービスが登場した。企業が費やすIT関連のハードやソフト、クラウドサービスのコストを可視化し、無駄を洗い出して最適なコスト配分を支援する。

 特に効果を発揮するのが、利用部門独自の判断で導入したSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の管理だ。新規事業のPoC(概念実証)や現場の業務改革に役立つSaaSが充実する一方、手軽に導入できるためIT部門の目が行き届かなくなる恐れがある。こうした「シャドーIT」を適切に管理し、最適なIT投資を支援する。

 米国のSaaS企業、Apptio(アプティオ)が日本での事業展開を本格化する。同社は2007年創業で、IT部門向けのコスト管理支援SaaSを提供している。世界で1800社の顧客を抱え、日本では資生堂や楽天グループが同社のSaaSを導入している。

 同社のSaaSを使うと、粒度や視点の異なる4つの単位でITコストを分類、可視化できる。具体的には、ハードやソフト、SaaSといった利用する「IT製品単位」、コンピューターやネットワーク、データセンターといった「IT機能単位」、事業部門や利用者が使う「アプリケーション単位」、そして企業の組織構造に沿った「利用部門単位」である。4つの単位は階層構造の関係にあり、利用部門を指定してアプリケーションを選ぶと、構成するIT機能を一覧できる。さらにIT機能を選ぶと、これを構成するIT製品を表示するといった具合に情報をドリルダウン(深掘り)して、組織やアプリケーションがどのようなIT製品を使っているのかを一目で理解できる仕組みだ。

ApptioにおけるITコスト分類・可視化のフレームワーク
ApptioにおけるITコスト分類・可視化のフレームワーク
(出所:Apptio)
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ITコストの無駄を洗い出す

 Apptioの特徴は、利用部門からIT製品までを階層化した情報を基に、ITコストを可視化できる点にある。コンピューター機器の毎月のリース料金、ソフトウエアやSaaSのライセンス費用、ITサービス企業に支払うシステム運用の委託費、利用部門が課金しているIT製品やサービスの総額などを、階層ごとに表示できる。

 ITコストを可視化するため、同社コンサルタントなどが顧客企業のIT部門に対し、ITコストの算出に必要なデータの提供を依頼する。Apptioが想定する粒度のデータを持ち合わせていない場合、具体的には「システム開発一式、1億円」などと大まかな費用しか分からない場合は、費用の明細をITベンダーから取り寄せてもらう。ApptioはITコストの可視化に取り組んだ実績を基に、規模や業種に応じたモデルケースを230件あまり保有しており、これらに基づいて顧客企業からデータを聞き取る。このほかAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連係により、顧客企業内の会計システムや人事システムをはじめ導入済みのSaaSなどから、費用のデータを自動的に取得できる。

ITコスト分析の画面例
ITコスト分析の画面例
(出所:Apptio)
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