ICTの進化に伴い、価値創造のプロセスが変わりつつある。日本政府が提唱する「Society 5.0」に向け、より多様かつ大量のデータを価値の源泉とし、社会課題の解決に生かすアプローチが求められている。

社会は3つの重要機能を獲得し、新たなフェーズに

 近年、ICTは目を見張る進化を遂げた。日本の携帯電話がアナログからデジタルに変わったのは1995年だ。これを起点とすると、現在までの四半世紀の間にコンピューターの処理性能や、ネットワークの伝送速度は指数関数的に進歩した。

 例えば、1995年当時のスーパーコンピューターで1年間かかった処理は、最新のスーパーコンピューターなら12.1秒で処理できる。150時間を要したCD1枚分のデータ伝送は、5Gネットワークではわずか0.5秒で済む。

 こうした進化で、社会は「リモート」「リアルタイム」「ダイナミック」という3つの重要機能を獲得したとNECの遠藤信博会長は言う。

NEC 取締役会長 遠藤信博氏
NEC 取締役会長 遠藤信博氏

 「物理的な距離を超え、様々な人やデバイスがつながり、そこから生まれる多様かつ大量のデータを即時に処理し、瞬時に価値を創造する。これらが可能になったことで、社会は新たなフェーズへと進めるようになりました」(遠藤氏)

 「リモート」の機能では、コロナ禍で急速に広まったリモートワークが、その象徴だ。どこにいても人と人がつながり、リアルタイムなコミュニケーションで仕事を進めていける。リモートの教育、ヘルスケアなど価値創造の範囲は広がりをみせる。

 続いて、「リアルタイム」「ダイナミック」の機能が生かされているのが、データ利活用の領域だ。高精度な将来予測もスピーディーに行えるようになった。気象・気候変動予測、食品需要予測、大規模設備の異常予兆検知、津波浸水・被害予測と幅広い分野で、社会課題の解決に役立てる試みが進んでいる。