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リサーチ会社などが発表するITの将来予測から大きな潮流が見て取れる。自社の業務改革とIT利用のシナリオを書く際、参考にできる。複数の技術を組み合わせて使い、しかも改良し続ける必要がある。

 IT(情報技術)のリサーチやコンサルティングを手掛ける企業はテクノロジーとその影響に関する将来予測をしばしば発表する。本欄でも第2回(2014年2月6日号)以降、たびたび紹介してきた。

 こうした予測の意義として第2回では、予測を「当社の業界に当てはめたらどうなるか」と「回答を考えることは、情報システム部門の責任者やIT専門家にとって経営者の姿勢で物事を捉える練習になる」と述べた。

 そうする理由を「予測を見聞きした社長や役員などが『この新しい言葉が示す動きは当社に関係するか』と聞いてくる可能性は常にある」と説明した。経営陣が話しかけてきたとき適切な応答をする、それが『社長の疑問に答えるIT専門家の対話術』の主題である。

トレンドを自ら読み取る

 予測を自社の業務改革とIT利用のシナリオ作りに役立てることもできる。将来予測にはITあるいはITがもたらす影響の潮流が示されているのでそれらを参考に自社の中期計画を立てる。あるいは自分がやろうとしている取り組みが流れに乗っていると説明し予算の獲得を目指す。

 例として米ガートナーが発表した『2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド』を見てみよう。題名通り2022年に重要とみられるITを12件選んだものだ。訳しにくい英単語が使われており結果として片仮名が並び、読みづらいが12の技術名と概要をにらんでいるとトレンドが見えてくる。

表 米ガートナーが選んだ2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド
複数の技術が融合する(出所:米ガートナー(2021年11月))
表 米ガートナーが選んだ2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド
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 まず要素技術ではなく複数の技術を組み合わせて実現できる土台ないし基盤が選ばれている。「オートノミック・システム」「トータル・エクスペリエンス(TX)」「データ・ファブリック」など。さらに動かしたシステムを改善し続ける手法が戦略テクノロジーとみなされている。「AIエンジニアリング」「意思決定インテリジェンス」「コンポーザブル・アプリケーション」など。

 情報システムの責任者の元には個別業務に関するシステム開発ないし改良の依頼が押し寄せており、予算と見比べつつ優先順位を付けて取り組んでいくことになる。だが並行して土台や基盤にも投資していかないといつまでたってももぐらたたきをするはめになる。業務も情報システムも生き物であり状況に応じて変えていかなければならない。2022年に限らず、かねて指摘されてきたことだが最新ITの組み合わせで実現しやすくなってきた。