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 電力広域的運営推進機関が2022年1・2月の燃料不足の回避に向けて、初めて追加的なkWh余力を公募する。これまで発電事業者が独自の発電計画に基づいて調達してきたLNG(液化天然ガス)や石油について、リスク回避のための上乗せ分を一般送配電事業者が調達する。しかし、追加調達した燃料価格や追加分の発電タイミングが市場価格に与える影響は無視できない。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 電力不足が懸念される今年度の冬季に向けて、一般送配電事業者が初めての「kWh公募」を実施する。

 電力という財にはエネルギー(kWh)、供給力(kW)、調整力(ΔkW)という3つの主要な価値があり、付随的なものとしての環境価値も加え、現行制度ではこれらを一体的もしくは個別に取引している。中でも、卸取引と言えばそのままエネルギー(kWh)取引を意味するほど、kWhは電力の中核的価値をなしている。

 これまで、一般送配電事業者は調整力公募(2021年度以降は段階的に需給調整市場に移行)で調整力(ΔkW)を、容量市場で2024年度以降の供給力(kW)を、そして今年度初めて、東京エリアで供給力(kW)を追加公募してきたが、ついにkWhまでが公募の対象となったことの意味は大きい。

広域機関が新たに管理を始めた「kWh余力」

 太陽光や風力といった変動型再エネ電源(VRE)は、短期限界費用がほぼゼロである。これが卸電力取引所のエネルギー(kWh)市場に大量に流れ込むことで、メリットオーダー効果により、市場価格を著しく低下させることとなった。また“共食い効果”により、VREのkWh価値自体も低下傾向にある。

 また、VREそれ自体はディスパッチャブル(出力調整可能)ではないため、系統としての電力システムを健全に維持するために、他のリソースが提供するkWやΔkWの価値が相対的に高まりつつある。

 従来、夏季や冬季の高需要期における電力の需給逼迫や市場高騰は、供給力(kW)の不足が原因となっていたため、電力広域的運営推進機関における需給バランス検証もその評価対象はほぼkWだけであった。

 そこに発生したのが、2020年度冬季の電力需給逼迫と市場価格高騰である。