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 英Arm(アーム)のCPUコア対抗として注目を集めるRISC-Vコア。ルネサス エレクトロニクスがRISC-Vコアを積極的に採用すると宣言したことによって、国内でも注目度が急上昇している。同社は2021年第4四半期中にRISC-Vコアを集積するASSP(特定用途向けの汎用製品)のサンプル出荷を始める。大々的な発表はなかったが、組み込み業界で話題を呼んだのが、米Intel(インテル)がFPGA向けのCPUコアとして、RISC-Vベースの「Nios V/m」の提供を始めると、21年10月に明らかにしたことである 公式ブログ 。ここに来てRISC-Vになぜ注目が集まっているのか。

 Intelは米Altera(アルテラ)買収によってFPGA製品を拡充している。そのIntelは、Altera時代から「Nios」と呼ぶFPGA向けCPUコアを提供してきた。NiosはソフトタイプのCPUコアでFPGAファブリック上に実装される。ユーザーは一定の範囲でカスタマイズできる。

 一般的にハイエンドFPGAに集積されるArmコアは、Niosに比べれば性能は高いものの内容が固定のハードタイプのCPUコアである。これまでのNiosはIntel(というよりAltera)独自アーキテクチャーだったところ、Nios V/mでは新たにRISC-VのRV32IAアーキテクチャーに準拠した。独自アーキテクチャーの「Nios II/e」比でNios V/mは約5倍の性能という。Nios V/mは同社のFPGA設計環境の最新版「Quartus Prime Software Version 21.3」の一部として提供中である。

「Nios V/m」の概要
「Nios V/m」の概要
(出所:Intelの「Nios V/m」動画からキャプチャー)
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独自アーキテクチャーの「Nios II/e」とRISC-Vアーキテクチャーの「Nios V/m」を比較
独自アーキテクチャーの「Nios II/e」とRISC-Vアーキテクチャーの「Nios V/m」を比較
(出所:Intelの「Nios V/m」動画からキャプチャー)
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 RISC-Vの最新の状況は、RISC-V協会が21年11月17日~19日に主催したイベント「RISC-V Days Tokyo 2021 Autumn」(パシフィコ横浜で組込みシステム技術協会主催の「ET & IoT 2021」と併催)において報告された。このイベントでは、ルネサスの江藤公治氏(IoT・インフラ事業本部 MCU製品開発統括部統括部長/武蔵事業所長)がRISC-Vへの意気込みを語ったり、デンソー子会社でIPコア開発のエヌエスアイテクスの杉本英樹氏(CTO)がRISC-Vへの期待を述べてAI(人工知能)への応用例を用途別(制御系、データ処理系、アクセラレーター)に見せたりした。

RISC-Vコア、Armコア、ルネサスコアの位置づけ
RISC-Vコア、Armコア、ルネサスコアの位置づけ
RISC-Vコアはルネサスが21年第4四半期サンプル出荷のASSPに集積した台湾Andes Technology製。(出所:ルネサス エレクトロニクスが「RISC-V Days Tokyo 2021 Autumn」で見せたスライド)
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RISC-Vの制御系AI処理への応用例
RISC-Vの制御系AI処理への応用例
(出所:エヌエスアイテクスが「RISC-V Days Tokyo 2021 Autumn」で見せたスライド)
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