撮影当日、「おはようございます。本日はよろしくお願いいたします」と、しっかり立ち止まって会釈してからスタジオに入ってきた大友花恋さん。これを読んでいる多くの社会人は、「当たり前だろう」と思うかもしれません。ですが、実際立ち止まって軽い(とは言え、きちんと心を感じさせる)会釈をともなった挨拶ができる人はそう多くないでしょう。その一瞬で、彼女の“人となり”を強く…そして真っすぐに感じることができました。

撮影に入るまで、「あの優雅さはどこからくるんだろう?」と考えていました。その答えを求めて訊いてみると、「余裕だ…」と気づきました。

「私、心配性なんです。『明日遅れたらどうしよう』とか『雨が降って電車が遅れないかな』とか、とにかく時間が心配で…。その結果、集合の30分前に着いてしまうことが多々あって。今日も『どんな質問があるかな?』とか『変な回答してしまわないかな?』と心配になってしまって…だから、いつも頭の中でシュミレーションして、心にゆとりを持ってから臨むようにしています」

常に先回りして物事を考える、そこから生まれる余裕が彼女に優雅さを与えているということ。ですが、いくら頭でシュミレーションしていても、現実は想像通りに事が運ぶとは限りません。

「それでも、想像していたことと違うことが起きると呆気にとられて、慌ててしまいます(笑)。以前、レギュラー出演していた(2021年9月から期間限定で再び隔週レギュラー出演中)『王様のブランチ』は生放送で、会話を広げてつくる番組だったので、いつもドキドキしていました。4年間くらいお世話になりましたが、最後まで緊張しっぱなしでした」

…と謙遜していましたが、インタビューの前に行った動画撮影での質問に、「えっ、なんだろう…」と戸惑いつつも、カメラが回れば緊張している素振りを振り払い、笑顔で回答していました。

大友花恋
Cedric Diradourian
ニットカーディガン 24万900円、ニットパンツ 13万2000円(参考価格)、パンプス 11万6600円(すべてトッズ/トッズ ジャパン TEL 0120-102-578)イヤカフ 1万6500円(SARARTH/SARARTH カスタマーサポート customer@sararth.com

そんな清楚で真面目、従順な花恋さんのイメージを打ち砕いたのが、2019年ドラマ『あなたの番です』です。メッシュカラーの入った髪に、スカジャンやアニマル柄の服をまとい、「ちげーよ」「くっそ」などのセリフをはきながら、粗暴な印象のキャラクター妹尾(せのお)あいり役を演じています。ファンからしてみれば、意外性を感じながらも「こんな花恋ちゃんも可愛い!」と思わせた役だったに違いありません。

ドラマ『あなたの番です』は、田中圭さんと原田知世さんが演じる新婚夫婦が気持ちを新たにスタートさせた新居のマンションに引っ越してくると、マンションの周囲で奇妙な殺人事件が立て続けに起き始め、隣人たちに疑心暗鬼になりながらも夫婦はその難解事件の解決に挑む…というサスペンスストーリーです。キャストには西野七瀬さん、木村多江さん、生瀬勝久さん、横浜流星さんなど、30人近くのキャストが名を連ねています。そんな中で花恋さんは、201号室の住人・妹尾あいり役を演じています。

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『あなたの番です 劇場版』予告②【12月10日(金)公開】
『あなたの番です 劇場版』予告②【12月10日(金)公開】 thumnail
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通常10話程度で完結する日本の連続ドラマとしては、異例の全20話まで放送されました。そうして「あな番」 と略称で愛されたドラマがこのたび、待望の映画化。『あなたの番です 劇場版』として、2021年12月10日(金)に公開予定となっています。

『あなたの番です 劇場版』では、花恋さんは柿沼遼(中尾暢樹)と結婚し、柿沼あいり役として705号室の住人として再演してます。

「今回の役は、いままでで一番役づくりに苦戦した」と話す花恋さん。「この役をいただいたとき、すぐに思い浮かべたのは志田未来さんが出演していたドラマ、『ブラックボード〜時代と戦った教師たち〜』でした。濃いリップにセーラー服をまとって、ザ・不良という雰囲気をつくり出していて…このドラマを観たのは12歳のときでしたが、志田未来さんの演技に圧倒されたのをよく覚えています」

「私がいまの事務所に入ろうと決めたのも、志田未来さん出演のドラマ『小公女セイラ』がきっかけでした。当時は小学校6年生でしたが、今でも記憶に残る一番最初に観たドラマです。いまこうしてお話しながら頭を整理していたら、改めて志田未来さんのように『記憶に残るようなお芝居ができるようになりたいな』と思えました」

大友花恋
Cedric Diradourian
大友花恋
Cedric Diradourian

全ての物事に真摯に向き合う姿勢、さらにはその会話ぶりから、彼女の素のマインドに強く刻まれているものでもあることが強烈に伝わってきます。そこで人生訓について問いかけてみると、考える間をつくことなく「クリーンで健やかでいたいです」と答えてくれました。

「お洋服ひとつとっても長く大切にしたいし、冷蔵庫の中は必要なモノだけそろえて綺麗に循環させていきたいです。長く大切にするものと、手放すべきものの分別をつけて風通しの良い生活をしていたいと思っています。その考えはお仕事にも通ずるところがあって、いただいたお仕事はどんどん挑戦して、そこで出合った新しいものは自分の中に残して、また新たな挑戦を続けていく…というように、健やかであり康(やす)らかでもいたいと思っています」

そんなポジティブな考えは、彼女の生活や特技を伸ばすきっかけにもなっているようです。

「例えば、2019年に『新米姉妹のふたりごはん』というテレビ東京の深夜ドラマに出演させていただいたのですが、30分ドラマのうち15分ほどが料理シーンだったんです。それまでほとんど料理をしたことがなかったので苦労しましたが、おかげでいまでは料理することが習慣になりました。ドラマで覚えた『秋鮭のロールキャベツ』は得意料理で、家族や友だちが家に遊びに来てくれたときは振舞っています」

大友花恋
Cedric Diradourian
リング 3万7400円(SARARTH/SARARTH カスタマーサポート customer@sararth.com)

インタビューでも、たびたび語られる読書家の花恋さん。自身のInstagramやブログでも本について紹介しており、専属モデルを務めていた雑誌『Seventeen』では小説を書くこともありました。それゆえ、インタビューでは言葉ひとつひとつを丁寧に選び、答えていることがわかります。そんな花恋さんに最近影響を与えてくれた、今の気分でおすすめの3冊を紹介してもらいました。

「ジャンルは結構バラバラですが、小説が好きです。おすすめを紹介してと言われたら、必ず挙げるのが湊 かなえさんの『告白』です。これは私のレジェンドであり、小説にはまるきっかけとなった作品ですから…。ファンの方は、私がインタビューでたびたび紹介しているので聞きなれたタイトルかもしれません(笑)」

「2冊目は、西 加奈子さんの『i: アイ』です。"本がこんなにエネルギーを持っているものだなんて"と思わせてくれる作品です。文章ひとつひとつが、自分にぶつかってくるかんじがします。未読の方はぜひ読んでみてください」

「エッセイもよく読みます。最近没頭して読んだのは、『死にたいけどトッポギは食べたい』です。韓国のヒット作で2020年に日本でも翻訳されて発売されたのですが、不安神経症に悩む作者が、精神科医のお医者さんとの会話を通じて自分自身を見直す…というストーリー展開で挿絵も素敵ですし、なにより"心"について考えさせられました」

湊 かなえ「告白」
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大友花恋
Cedric Diradourian
ストール 5万3900円(参考価格)(トッズ/トッズ ジャパン TEL 0120-102-578)リング 6万3800円(SARARTH/SARARTH カスタマーサポート customer@sararth.com)

2021年は、「花恋さんの人生を変えた」と言っても過言ではないほどのお仕事である、雑誌『Seventeen』を卒業した年でもあります。そこで最後に、今年はどんな1年だったか訊いてみました。

「新しい自分の暮らし方を確立させた年でした。去年から今年にかけて変わったことはたくさんありました。いろんなものから卒業したり…、そして、その卒業があったからこそ新しいことに挑戦することもできました。自分の暮らしやお仕事のジャンルがまた広がって、そこで吹く風に抗(あらが)うのではなく定着した1年だったので、新しい一歩を踏み出せた年だったと思います」

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Model / Karen Otomo
Photograph / Cedric Diradourian
Video / Hikari Homma
Styling / Maki Kimura
Hair & Make / Takeshi Makita
Video edit / Marin Kanii
Text & Edit / Mirei Uchihori