アカオビハナダイ 幼魚時から体内に精巣と卵巣 産卵経ず性転換の個体確認 鹿児島大など新発見

 2021/09/29 08:00
アカオビハナダイの雄(出羽慎一さん提供)
アカオビハナダイの雄(出羽慎一さん提供)
 鹿児島大学と東京海洋大学の研究チームは、雌の一部が産卵後に雄へ性転換する魚アカオビハナダイについて、鹿児島湾で採集した全ての個体が幼魚のときから精巣と卵巣を持ち、産卵を経ずに性転換する個体もいることを発見した。「栄養が豊富で群れが多い鹿児島湾でしか見られない特殊な現象の可能性がある」としている。

 ハタ科のアカオビハナダイの幼魚は全て雌とされてきた。産卵した後、群れの中で大きく育った個体が雄になり、一夫多妻の生活を送る。

 鹿大水産学部の久米元准教授(47)=魚類生態学=らは、2019年から20年にかけ570匹を採集。生殖腺を観察し、精巣と卵巣を併せ持つことを確かめた。また同年12月に水深20メートルの岩礁付近から採集した個体は、産卵を経ずに雄化していることも分かった。

 アカオビハナダイは太平洋の水深の深い岩礁域に低密度で生息。鹿児島湾のように水深20メートルほどの浅瀬で群れを作っているのはまれだという。

 論文筆頭著者の鹿大大学院1年の森年エマ日向子さん(22)は「単純な一夫多妻ではなく複雑な社会構造を持つ可能性がある。鹿児島湾だけの事例なのか。今後も調査を進めていく」と語った。

 日本魚類学会年会で発表した。