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 メーカー、卸、小売りらが流通業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指して連携する「リテールAI研究会」は2022年1月をめどに、商品情報を管理・活用するための業界共通のシステムを立ち上げる。各社で作成・管理していた商品マスターを共通化し、商品情報のやり取りにかかる業務負荷を軽減する。流通のムダの削減に向け、業界を挙げた連携が動き出す。

 リテールAI研究会は流通・小売り業界で人工知能(AI)をはじめとするデジタル活用を推進することを目指す組織だ。2017年に設立され、2021年4月8日時点で正会員・賛助会員・流通会員を合わせて254社が参画。サントリー酒類(東京・港)、トライアルカンパニー(福岡市)、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン、神戸市)など大手もメンバーに名を連ねる。

 そんな同研究会が準備を進めるシステム名は「J-MORA」。商品情報と管理システムのオープン化を目指す。製配販を中心とした参画事業者がJ-MORA内の商品情報を共同で管理し、誰でもすぐに正確な商品情報を活用できる環境の構築を目指す。

参画事業者が商品情報を共同で管理・活用する
参画事業者が商品情報を共同で管理・活用する
(出所:リテールAI研究会)
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 J-MORAは3つのコンポーネントから成る。具体的には、企業のマスターデータからのアップロードを受け付ける「Config」とデータを保管する「Database」、希望するデータ形式で商品情報を提供する「Manifest」だ。

 Configではあらかじめ、どんな情報を誰に開示するかを設定できる。商品名や商品画像、原材料や栄養素は公開するが、取引価格は取引先のみに開示するといった具合だ。Manifestでは取り寄せたい商品情報とExcelでの表示順といったフォーマットを登録しておくことで、自社が使いやすい形式で情報を受け取れる。データのアップロードやダウンロードはTeamsやSlackといったビジネスチャットツールでできる。

ビジネスチャットツールからデータのやりとりができる
ビジネスチャットツールからデータのやりとりができる
(出所:リテールAI研究会)
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 アップロードされた情報はアップロードしたアカウントや参照された回数などによって信用スコアを付け、間違った情報が流通するのを防ぐ。ダウンロード側で一定の信用スコア以上の情報しか受け取らないといった絞り込みをかけることも可能だ。