ポリマー型紙幣には、偽札と見分けるための「指紋」がある

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
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ポリマー型紙幣には、偽札と見分けるための「指紋」がある

ポリマーでもなくならない偽造紙幣を止められるか?

世界の多くの国が紙幣の素材を紙からポリマーへと徐々に移行させてきたのは、偽造しにくいだろうという考えがあったからです。とはいえ、所詮はイタチごっこ。ポリマーの偽札ができるのにも時間はかかりませんでした。しかし、ポリマー紙幣を製造する際にどうしても起きるムラが、本物と偽物を見分ける重要な特徴になるかもしれないそうです。

イギリスのワーウィック大学とダーラム大学のコンピューター科学科の研究者たちは、ポリマー製紙幣の1枚1枚に意図せずできたユニークな跡があるのを発見し、これを使って騙すことが不可能な識別システムができるかもしれないと考えたのです。この研究はジャーナル誌、IEEE Transactions on Information Forensics and Securitに掲載された彼らの論文、「Anti-Counterfeiting for Polymer Banknotes Based on Polymer Subtrate Fingerprinting」に記されています。また論文は、レジの店員が紙幣にUVライトを当てるよりさらに精密な承認システムを作ることができるともしています。

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Image: University of Warwick

ポリマー紙幣が作られる過程で、透明コーティングという重要なレイヤーが塗布されるのですが、その際にインクの不純物が無作為に付着して、光を強く当てると見える模様になります。

実際に裸眼で見ようとすると、絵や文字、その他セキュリティー機構などが邪魔をするのでほぼ分かりませんが、すべての紙幣のどこかに模様だけがハッキリ見える部分があり、そこにフィルムスキャナーで後ろから光を当てると模様が高いディテールで確認でき、それを指紋のようなユニークなパターンとして使う事ができるのです。

パターンを採取するのはまだ簡単で、それを実際に利用して偽札と見分けるのが本当のチャレンジです。研究者が提案するのは、刷った紙幣の模様をすべてデータベース化し、シリアルナンバーと紐付けることで、偽造が疑われる紙幣のシリアルと模様を照らし合わせるというものです。この照会は消費者が紙幣を使うたびに行われるわけではありませんが、警察などにデータベースにアクセスするツールを提供することで、偽札の専門家に分析してもらうことなく偽札を判別できるようになるわけです。

英国では現在4兆枚の紙幣が出回っているとされているので、提案された方法には手間などの面で問題がありそうですが、ワーウィック大学のフェン・ハオ教授はNew Atlasに対し、パターンのスキャンは256バイトのベクター画像に変換されるので、4兆枚分のデータもおよそ1TB程度に収まると指摘しています。偽造者は主に金額の高い紙幣を狙うので、そこだけに絞ればもっと小さくなるかもしれません。

スマートフォンのカメラがどれだけのスピードで進化したかを考えれば、この判別システムは偽札を見分ける手軽なアプリとなって、世界中で利用できる可能性があります。とはいえ、警察以外の人が使えるとは思わない方が良さそうです。このアプリを持った自警団が、地元の店に怒鳴り込んで偽造をチェックしに行くなんて使い方ができたら混乱を招くでしょうからね。