将来的にはAR、VR分野での活躍も!?
「手の動きだけでものを動かすことができる」と聞いたら、真っ先にスター・ウォーズのジェダイか何かを想像してしまうかもしれません。CES 2021で発表されたMudra Brandのデモ動画によれば、もうこのテクノロジーも夢じゃないみたいです。
一見するとのスマートウォッチバンドとほぼ同じように見えるMudra Bandですが、内側の裏地にいくつかの正方形のSurface Nerve Conductance(SNC)センサーがあります。同社はこれを「生体電位」と呼んでいて、基本的には神経系によって生成される電気化学的活動を測定することができるといいます。身近な技術でいえばECGと同じような概念ですが、目的は大きく異なります。
最初は、懐疑的でした
なんとも未来的でかっこいい技術のようですが、現時点でジェスチャー技術は少し不安定な印象があります。たとえばPixelスマートフォンのジェスチャー機能を強化するグーグルのProject SoliやLG G8 ThinQのように、カメラやIRセンサーに手を振る必要があります。これらを米Gizmodoが試したところ、Pixelの方がはるかに信頼性があった一方で、いずれもゲームチェンジャーとはいえない段階にある所感でした。同様にサムスンがGalaxy Watch 3にコントロールジェスチャーを導入していましたが、実際にはまだ使いにくさがあります。
こうしたことから、Mudra Bandについても正直どうなのかなと思うところはありました。ピッチによれば、特定の方法で指を動かした場合(たとえば、親指と人差し指をつまむと)Apple Watchを片手でコントロールすることができるとか。バンド部分が神経信号を拾い上げ、それをBluetooth経由でスマートウォッチに転送するという仕組みなのだと思います。
でもまだ疑問に思う部分はいくつもあって、たとえばセンサーの感度はどうなのか、意図的なコマンドと偶発的な動きを区別することはできるのか、どんなアプリで使えるのか、動作からデバイスの反応までにかかる時間はどれくらいなのか…。
「意図的に動かさないと、何も起きない」
そんななか動画でデモを行なってくれたのが、Wearable Devices Ltd(Mudraの背後にある会社)のプレジデント兼チーフサイエンティストであるGuy Wagner氏。Mudraアプリを用いながら、バンドが特定のジェスチャーを識別し、リアルタイムでジェスチャーに反応しているのを確認できました。
さらに驚いたのが、もう一方の手を使って指を動かしても何も反応しなかったこと。同氏によれば、意図的にジェスチャーを行なわなければ何も起こらないといいます。それは、はたから見たらもはやマインドリーディングに近いものを感じるほど…!
パンデミック状況下で、何も触れずに何かを操作できるというのは改めて言うまでもなく重宝できそうですが、ハンズフリーと言う観点からいってもまちがいなく便利なはずです。個人的には、たとえばランニング中に音楽をスキップしたいとき、走る速度を落として画面をスワイプする必要がなければどんなに素晴らしいか…と思っています。
デモでは、ストリーミングアプリで映画のスクロール・選択を手の動きだけで行なっていました。さらにはバンドや指の動きだけで、アートアプリ内で絵を描くこともできることを披露してくれました。ただしこの種の機能はおまけで、現時点では電話への応答・拒否を第一に注力していて、次にメディアコントロール、その次に顧客ベースの関連性に近いものへと対応していくとのことです。
さらに同氏によれば、この技術がARやVRに役立つ可能性もあるとのこと。現時点で問題となっているのがバーチャル空間をナビゲートするうえで特に洗練された方法がなく、コントロールには通常スティックやグローブなどが必要ですが、スマートグラスやVRヘッドセットを操作するのにMudra Bandのようなデバイスがより直感的なソリューションとなる可能性が考えられます。
クラウドファンディングIndiegogoで20万ドル超の調達に成功したMudra Bandは現在、同社ウェブサイトで180ドル(約1万8700円)で予約販売受付中です。Wagner氏によれば、すでに第一段階の生産が行なわれていて、今年3月には配送が始まる見込みだといいます。