米議会議事堂乱入事件:Parlerの投稿動画とGPSデータをリンクしたら、現場のリアルが見えてきた。

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  • author Dell Cameron, Dhruv Mehrotra - Gizmodo US
  • [原文]
  • R.Mitsubori
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米議会議事堂乱入事件:Parlerの投稿動画とGPSデータをリンクしたら、現場のリアルが見えてきた。
Image: Gizmodo US

赤い点は、点じゃない。1人の人間だ。

世界中を震撼させた、アメリカの議会議事堂乱入事件。今では極右SNSとして知られるParlerに投稿された動画にリンクするGPSメタデータにより、事件発生時の暴徒らがどのような動きをしていたのか、見えてきました。少なくとも数名のユーザーが、一般人の立ち入りが制限されている議会議事堂の建物の奥深くにまで侵入していたようです。

現地時間の11日にParlerが閉鎖されるのに先立ち、あるコンピュータハッカーが法的手段を通じて当該GPSメタデータを取得していました。これを見ると、トランプ大統領の演説を聞いたユーザーたちが議事堂の敷地内に押し寄せる様子、そして銃声や罵声を伴う暴力で議員やスタッフなどを大混乱に陥れた一連の動きが手に取るようにわかります。

米ギズモードは、618本のParler投稿動画から取得したGPS座標を分析。このデータには、FBIも捜査の一環として注目しています。FBIは暴動に参加した容疑者を追うべく、全国規模の捜査を展開開始し、少なくとも20名がすでに逮捕されています。

2020年代のアメリカと思えない、激しい暴動の内側

2021年1月6日の議事堂乱入事件は、発生から鎮圧までにおよそ2時間かかり、その間に5人の死者を出しました。その中には、消火器で殴打されたことがもとで亡くなった議事堂の議会警察官も含まれています(当局発表)。窓ガラスが壊され、テーブルはひっくり返り、220年の歴史を持つ建物の壁のいたるところに擦り傷と落書きが残され、中には「逃げたジャーナリストたちを殺せ!」といった物々しい言葉も書かれていたといいます。

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Image: Gizmodo US

暴動当日、現場付近にいたユーザーの投稿を分析してマッピング

米ギズモードは約7万件のParler投稿をマッピングしました。そこから、事件の起きた1月6日、事件現場となった議事堂周辺で公開された投稿に絞って分析したのです。そこでわかったことは、Parlerユーザーたちが1日を通して投稿を続け、ナショナルモールから議事堂のあるキャピトルヒルへと行進する様子を記録していたということです。

議事堂内でのParlerユーザーの詳しい位置情報を特定するのは、むずかしいかもしれません。たとえば、座標データでは、その人物がどこのフロアにいたかまではわからないからです。さらに、このデータには1月6日に動画を投稿したParlerユーザー以外は含まれていません。そして座標の正確性も、およそ11メートルの誤差があります。

動画とデータを比較したら、「赤い点」が特定の人物につながった

上の地図を見ると、議事堂の円形広間(ロタンダ)の中心のすぐ南に赤い点があるのがわかります。米ギズモードが動画とデータを検証した結果、この点の主は、“MAGA(Make America Great Again、トランプ氏の選挙スローガン)”と書かれた赤い帽子をかぶり、ナンシー・ペロシ下院議長に関して卑猥な言葉を叫んでいた人物だとわかりました。その周囲にも複数の点が存在しますが、これらは近くの事務室や階段の吹き抜け、また下院や上院の会議場に続く廊下でキャプチャされた動画の主である可能性があります。

他にも1件の動画がParlerデータとのリンクに成功しており、こちらは、ロタンダで上院側に向かって“Whose House? Our House?”と叫んでいる暴徒を撮影したユーザーのものだということがわかっています。

Parlerから引き出された座標を見ると、建物の北側に位置する上院の議長室あるいは記者席(階層による)のあたりをウロウロする人物がいたこともわかります。

乱入直前までは、選挙人投票結果認定の討論が行われていた

議事堂が包囲される直前、マイク・ペンス副大統領は、同じ共和党党員が「バイデン氏の勝利は不正選挙」という根拠のない主張を展開するなか、投票人投票結果を承認するための討論を取り仕切っていました。記者席では、報道関係者らがその様子を注視しており、ここ数週間にわたって「選挙が盗まれた」という誤った主張を声高に訴え続けてきたテッド・クルス上院議員は、アリゾナ州の選挙人投票結果の認定に反対する立場に立っていたため、建物外で起きていた暴動に気づかなかったようです。

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Image: Gizmodo US
ParlerのGPSデータをもとに作成したマップ。演説を聞いた群衆がナショナルモールを離れ、暴動が起きた議会議事堂になだれ込む様子がよくわかる。

トランプ氏の演説を聞いた支持者が、議事堂へ向かう様子が追跡できる

議会議事堂の外で記録された位置データを追うと、トランプ大統領の演説を聞いた群衆がナショナルモールから議事堂へと向かったルートを正確にたどることができます。トランプ氏は支持者に向かって「地獄のように戦う」よう訴え、「弱さを持っていては、国を取り戻すことはできない」と扇動するようなスピーチを行っていました。

この件に関してFBIにコメントを求めましたが、返答はありません。ただ、当社の分析作業について知る情報筋によると、FBIの捜査員もParlerのGPSデータ調査に関心を示しているといいます。

データ収集したのは、ハンドルネームのみ明かされている「ハッカー」

すでに米ギズモードで報じているとおり、Parlerのデータを最初に取得したのは、Twitterのハンドルネーム@donk_enbyとして識別されるハッカーです。

月曜日のインタビューで@donk_enbyは、Parlerの投稿をアーカイブし始めたのは、暴動のあった日だと話しています。議事堂に集まったParlerユーザー(を含む群衆)にかかわる、彼女いわく「非常に犯罪的な」証拠として文書化した、とのことです。その後、AmazonがParlerアプリをサーバーから排除する意思を表明したことをうけ、彼女はコンテンツ全体のデータを集めるべく、作業を拡大したのです。

FBIも本腰を入れて、全国的な捜査を開始

@donk_enbyは、Parler投稿全体の99%以上を保存したと話しており、そこにはユーザーの位置を示す数百万件の動画も含まれるといいます。他のSNS各社と異なり、Parlerには、ユーザーの動画をオンライン投稿する前に、機密性の高いメタデータを削除するメカニズムがなかったようです。

当局は暴動に参加した容疑者を捜索するべく、全国的な広域捜査を開始。共和党全国委員会と民主党全国委員会の事務所の外に爆発物をしかけた(と思われる)現場を写真にとられた「グレーのパーカーを着た男」もその1人です。現在までに、「ペロシ下院議長を殺害しようと思った」と語っており、実際に銃と数百発の実弾を持ってワシントン入りしたというコロラド州の男を含む、20名が逮捕されています。

月曜日、2名の議会警察官が停職処分になりました。そのうちの1名は議事堂内で暴徒と自撮り写真を撮影し、もう1人は(暴徒相手に)建物の周りを案内したうえに自身もMAGAの帽子をかぶっていたということです。