映画「TENET」の謎解きをするが如く。
毎回、Appleの発表会イベントは招待状から始まる統一したグラフィックを採用しています。
このグラフィックはAppleが公式として伝える唯一のヒント。イベントではどれだけ画期的な新製品が発表されるのか? さまざまな憶測やリーク情報が流れる中で、もっとも信頼性の高い「未来からの手紙」と言っていいでしょう。ただし、解釈は自由なのでその答えは千差万別。その全貌はティム・クック(と限られたApple社員)のみぞ知るです。
今回、イベント直前に敢行されたギズモード・チャンネルのYou Tubeライブ中継「iPhone 12 直前ライブ! 今年もiPhoneだけなの!? 」に飛び入り参加して、ざっくりこのキー・ビジュアルとキャッチコピーから予想を立てさせて頂きました。その概要は以下の通り。
・円状のグラフィックは、既報の球形「HomePod mini」を上からみた姿を表している?
・Hi, Speed.(日本だと「速報です。」)は、言うまでもなく高速な5G対応iPhoneの発表を示唆。
・幾重にも重なるカラフルな円環は、新型iPhoneの多彩なレンズと光学系の新機能を表現しているかも。
・LiDARも光学センサーとして搭載。5GとLiDARの組み合わせで、何か新しい試みをやるのではないか?
もちろん、ビジュアルからだけで判断したわけではなく、ギズモードの編集長をしている関係上、リーク情報はひと通りチェックしてます(というよりついつい見ちゃった)。さて、約1時間のオンライン・イベントは無事に終了しましたが、その答え合わせの結果はいかに....? 行われたイベント映像の流れを振り返ってみましょう。
円のグラフィックはやっぱりHomePod mini
のっけからキー・ビジュアルと同じ描画のモーション・グラフィックで始まり、円のモチーフからまん丸な月→太陽→陽だまりの中の円形社屋「アップルパーク」から→ガラス張りの円型コンベンション会場「スティーブ・ジョブズ・シアター」へと「円環」のイメージの連鎖が続きます。そして、シアターの中にいるティム・クックへとカメラは移動し、その横の円形の「HomePod mini」へ。ワンカメラの長回しのようなスムーズな映像で、イベントのグラフィックは新たに発表されるプロダクトのモチーフとして表現されます。これは演出のレベルではっきりとわかる正解!!
Hi, Speed. はやっぱり5Gのこと。でもそれだけに限らない
前回に続きオンラインイベントのために制作されたスペシャルな映像は、スマート・ホームを表現した大規模なセットなどを駆使してよりいっそう華麗なものに。そして、カメラは客席のある劇場へ侵入し、一人ステージに立つティム・クックにより新しいiPhoneが発表されます。
「Super Fast More Advanced」と銘打って、実機の前にまず5G対応が発表されます(これも予想は正解!)。スマート・スピーカーからスマート・ホームと連携するiPhoneのインサートがあり、IoTのコアとなる5Gテクノロジーへの移行を発表していくまでの流れは本当に見事。すべてがシナプスのように関連付けられ、流れに乗ってプレゼンテーションされる巧さがあります。
そして新プロダクト「iPhone 12」の発表。多彩なカラー・コーディネーションは見事にキー・ビジュアルのカラフルな色彩と一致しています。
iPhone ProとPro Maxはレンズのバリエーションが飛躍的に進化。超広角+広角+望遠のトリプルカメラを採用(iPhone 12は超広角+広角のデュアルカメラ)。
1. 視野角120度・f2.4の超広角カメラ・1200万画素
2. f1.6の広角カメラ・1200万画素
3. 35mm換算52mmの望遠カメラ(iPhone 12 Pro)/65mm(iPhone 12 Pro Max)・1200万画素
ここら辺は、グラフィックの円環が、多彩なレンズ構成をモチーフにしているイメージと重なります(正解!)。
さらに4つ目の光学センサーとして、赤外線を使い奥行きを計測できるLiDARスキャナーを搭載。
LiDARスキャナーは、定番のARや3Dオブジェクトだけでなく、暗所でのオート・フォーカスをアシストして、6倍の速度アップを実現しました。iPad Proに搭載された時は、なぜか使用する機会が全然ないなあと感じていたのですが、実写撮影のアシストに役立つのかと目から鱗。このおかけで従来はできなかったナイトモードでの、背景ボケ(ポートレート撮影)も可能になってます。光を27%多くとらえるƒ/1.6絞り値の広角カメラとあわせて、これも光学系の進化と言えるでしょう。
他にも、iPad Airに先行して搭載された最新のA14 Bionicチップが搭載されてより高速化されたました(こちらは「Hi, Speed」との関連)。さらに帰ってきたMagSafeの採用(機器としては円型が主体)、10bitで動画の撮影品質の向上(Dolby Vision準拠のHDRに対応。7億色以上の10Bit動画が可能。色再現性が高くなった)、iPhone Miniの登場(これは特に関連性ないかも)...などがありますが、大筋として招待状から予想された
1.「HomePod mini」の発表
2.iPhone 12 ProとPro Maxの光学系レンズ&センサーの大幅進化
3.CPUや暗所でのオートフォーカスの速度向上、そして5Gによる通信速度の高速化
といったところがグラフィック、そしてキャッチコピーとの関連性から読み取れた要素です。
キービジュアルがイベントを読み解くまさしくカギになる
事前の予想としては、5GとLiDARの組み合わせで何か新しいことができるのではないかと期待していたのですが、こちらは直接的なものはなさそう。LiDARは5G関係なく、実写撮影をアシストする機能が新鮮でした。これこそコンパクト・カメラにはできない芸当で、今後ProとMaxは得意の「Appleがなくしたもの」、とうとう完成した究極のコンデジキラーと言っても過言でない存在となっていきそうです。
招待状が配布され、イベントのキービジュアルが明らかになると、各メディアそこからも、いろいろな新製品と機能の予想をするのが恒例となっていますが、新製品の発表が終了した後にそれを振り替えって検証しているのは、あまり見た記憶がありません。
Appleは一貫して厳格にデザインされたマーケティングをおこなってきた企業です。キービジュアルから今年のイベントの趣旨を紐解く試みは、むしろイベント自体を精査するより有効かもしれないと思って書き出してみたんですが、全体像を把握するにはもう少し時間がかかりそう。とにかく発表が多岐に渡っていたので、引き続き考えていきたいですが、とりあえずカメラが飛躍的に進化して、スピード性能も向上した今年のiPhone Proは買いだと思います。そこだけ断言しておきます。
Image: Apple