毎日放送(MBS)は2020年7月30日、8月10日から阪神甲子園球場で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」において、同社とJNN系列各局が共同で運用する「JNN甲子園本部」がクラウドを活用した各局への映像素材の伝送を行うと発表した。業務の効率化と番組内容の充実を図る。

 JNN甲子園本部では、JNN系列各局の取材内容を共有し、円滑な取材活動を後押しするとともに、試合の中継映像や独自取材した映像素材を編集し、これまではSNG(通信衛星を活用した素材収集)回線を利用して各局に伝送してきた。

 通信衛星を利用すれば、複数局に同じ映像素材を一斉に配信できるが、1回線で各局に異なる映像素材を同時に送ることはできず、順番待ちが発生するなどの課題があったという。

 クラウドを活用することで複数素材を同時に送れるようになれば、例えばJNN各局は地元校が出場する試合で独自取材をギリギリまで放送に入れ込むことが可能になる。各局が午後から夕方にかけて放送するローカルワイド番組の放送内容の充実を図ることができる。

 また300Mビット/秒程度の回線速度を確保できれば、実時間よりも短時間で業務用で扱うような高画質な映像素材をアップロードしたり、ダウンロードしたりできる。一般的なパソコンがあればアップロードやダウンロードを実行でき、特別な機材は必要ないとしている。

 クラウドの活用には障害発生時に放送局が独力で対応できないといったリスクや、セキュリティーに関連した不安があるが、SNGの併用やアクセス制限などで対応を予定する。費用については、大会期間中のみの従量課金で使用できる。このため、今回だけでなく年末年始に開催される全国高等学校ラグビーフットボール大会など期間限定のイベントやスポーツ大会での活用が見込めるという。

 クラウド環境は「Microsoft Azure」を利用する。今後は操作性に課題があるとされるクラウド編集の実験なども重ねて、クラウド活用のノウハウの蓄積を図っていく方針。