ウォンテッドリー、社員の士気向上をネットで後押し
ビジネスSNS(交流サイト)のウォンテッドリーが事業領域を広げている。このほど企業が採用した従業員の定着を支援する「エンゲージメント」事業に参入し、専用サイトでオンライン教育などの特典が選べるサービスを始めた。人手不足が叫ばれる中、働き手の働きがいを引き出して離職率を抑える。求職者と企業をつなぐ採用支援事業に続く収益の柱に育てる。
企業向け新サービス「Wantedly Perk(ウォンテッドリーパーク)」を始めた。オンライン英会話の「レアジョブ」やニュース動画など7社のサービスをそろえ、従業員らが安価に使えるようにした。ビジネススキルや語学のオンライン教材を順次増やす方針だ。
当面はウォンテッドリーのビジネスSNSの有料会員に追加費用なしで提供。今後はサブスクリプション(定額課金)方式を視野に従業員数に応じて月額数百円を課金することを検討する。仲暁子社長は「早期に1万社、50万人の利用を目指したい」と話す。
アプリストアのようにサービスを一覧できる。仲社長は「知識やノウハウを自分自身にインストールするイメージで提供したい」と語る。サービス事業者は広告費や掲載費なしで登録できる。ウォンテッドリーの3万4千社超の顧客基盤を活用できる。
ビジネスに直結する分野以外に、家事代行やシッターサービスも用意するなど、福利厚生サービスとしても利用できるようにする。
ウォンテッドリーは2012年から求職者と企業のマッチングの場となるビジネスSNSを提供。登録する個人ユーザー220万の8割は20~30代でエンジニアやデザイナーなどIT系が多い。
採用目的で活用する企業は3万4000社を超えた。企業がSNSを通じて事業内容やイベント情報、社員の働き方を紹介する採用支援を中心に展開してきた。従業員が組織に主体的に貢献する意欲を引き出すエンゲージメント事業を通じて、サービスの長期利用を促したい考えだ。
エンゲージメントは従業員の貢献意欲を示す指標で、「働きがい」といった意味として使われることが一般的だ。人事組織コンサルティングのリンクアンドモチベーションや人材事業のアトラエは、アンケート調査などを使って数値化するサービスを手掛けており、市場が拡大している。
オンライン調査支援の米クアルトリクスが2月末に公表した調査によると、日本の従業員のエンゲージメントは35%と、世界17カ国・地域の平均53%を大きく下回って最下位だ。市場が拡大する余地は大きい。ウォンテッドリーは特典サービスを皮切りに、エンゲージメント事業を拡大していく考えだ。
(企業報道部 駿河翼)
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