新型コロナウイルスが拡大を続けているいま、誰もが聞きたくない言葉といえば「市中感染」だろう。
2月22日からの先週末、イタリアの感染者数が11人から124人に急増し、ヨーロッパで最多となった。同国では、中国湖北省に関係のない感染が数カ所で発生。サッカーリーグの試合は延期となり、さらなる国内感染を防ぐため、武漢と同じように当局は町を封鎖した。
WHOによると、25日の時点でイタリアの感染者数は229人になった。23日までに判明したなかでは、日本や韓国、イランなど、その他13カ国でも市中感染が確認されている。
「イタリア、イラン、韓国での感染者の急増を深く憂慮しています」。世界保健機関(WHO)の事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイエスス氏は25日、記者会見でそう語った。25日までに、COVID-19の感染者数は8万239人、死者数は2700人にのぼっている。(参考記事:「新型コロナウイルスに感染するとこうなる」)
韓国ではこの1週間で、感染者数が104人から一気に1000人近くにまで増えた。新たな感染者の半分近くは、同国で4番目に大きな都市である大邱の教会と、同教会の信者のひとりで「31番目の感染者」と呼ばれる61歳の女性と関連していた。しかし、その女性がどこで感染したのかはわからない。
一方、月曜日にはイランの死者数が12人となった。2月20日に最初の感染者が報告されたばかりであることを考えると、驚くべき数だ。
新型コロナウイルスの致死率は2パーセント前後であり、イランには感染が判明していない患者がもっと大勢存在する可能性が高い。その証拠に、クウェート、バーレーン、イラク、オマーンでも発生した新たな感染は、すべてイランに関連している。WHOは月曜日、世界規模の流行を意味するパンデミックの宣言はしなかったものの、現在の突発的な流行が世界規模で広がる可能性はあるとして、各国に備えを呼びかけた。(参考記事:「新型コロナ、インフルやエボラと比べた危険度は」)
「その他の国々でも感染が拡大しているリスクは高いでしょう」と、米ハーバード大学公衆衛生大学院の疫学者、マーク・リプシッチ氏は言う。
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