製品化が楽しみです。
自転車が一発で役立たずと化す悪夢の現象・パンク。近所のスーパーにでも行こうと乗り始めてプシューとなると、激萎えです。そんなパンクとおさらばするべく、自転車で有名なブリヂストンサイクルが開発しているのが「エアフリーコンセプト」という製品。特殊な形状を採用することで空気を使わないようにした新型タイヤで、構造上パンクしえません。
このタイヤをアセンブルしたコンセプトバイクが東京モーターショー2019で展示されていて、高い完成度にぐっときたのですが、ちょっと気になることも。公道などを実走することができなかったため、デイリーな乗り物として重要な「快適に乗れるのか?」がよくわからなかったのです。
タイヤは快適性への影響が大きいパーツです。たとえば、タイヤの空気圧が必要以上に高い(硬い)と、路面の細かな凹凸や歩道と車道の間の段差などによって生じる振動や衝撃、突き上げが伝わりやすくなってお尻が痛くなったりすることも。パンクしないとしても、乗り味がよくなければわざわざ乗りたいとは思わないでしょう。
そこで今回は、ブリヂストンサイクルの方にお願いしてこのパンクしない自転車に公道で試乗させてもらってきました。
硬いのに柔らかい。技術で再現されたママチャリの乗り味
エアフリーコンセプトは樹脂製です。触れてみるとわかりますが、かなり硬く、指で押したくらいではほとんど変形しません。しかし、実際乗ってみると乗り味は非常にマイルド。というかふだん乗ってるママチャリそのものです。違和感も不快感もありませんでした。よくよく考えてみるとこれ、かなりすごいことです。
エアフリーコンセプトは、樹脂に衝撃を受けるとたわむような独特の構造をもたせることで従来の自転車に近い振動・衝撃吸収を実現しています。
一方で、従来の自転車では、ホイールにゴムのタイヤをはめ、タイヤの中には空気を入れたチューブが入っています。エアボリュームによって振動や衝撃を吸収する仕組み。
素材も構造も変えたうえで慣れ親しんだ自転車のフィーリングをよくここまで再現したな…と。従来のタイヤとフィーリングは同じでパンクはしない、つまりは上位互換な感じになっているので、価格を見ないならエアフリーコンセプトを選ばない理由がない、くらいの勢いです。
チェーンの代わりにメンテフリーなベルトドライブを採用していたり、安定した制動性を誇るディスクブレーキだったりと、機能面もやっぱりいい感じ。しかも、電動ユニットを積むスペースもあるんだそうです。街乗り用の自転車として完璧すぎでは。
エアフリーコンセプトは自動運転車時代を意識した技術でもある
取材中に個人的に盛り上がってしまったのが、自動車用のエアフリーコンセプトも検討されているというお話。パンクしないタイヤは完全自動運転が達成されたときに大きな威力を発揮するであろうという展望があるそうです。
完全自動運転時代になれば、AIが業務用の車両などを超長時間走らせ続けることになるでしょう。その妨げになるのは、クルマの物理的なトラブル。自動運転中にタイヤがパンクしたら、修理しなければもう走れません。パンクしないタイヤは、自動運転車の安定運用に寄与しうると。
一方で、クルマ用のエアフリーコンセプトを作るとなると「空力抵抗を削減しつついかに剛性等を担保するか」といった問題も出てきそうだなと思いました。今回試した自転車版エアフリーコンセプトは、出せる速度域的に空力抵抗はそこまで重視していないと思われます。クルマ用だと話はちがってくるでしょうから、もしかしたら形状なども変わってくるかもしれません。
ブリヂストンの方は取材時エアフリーコンセプトについて「2020年の実用化を目指している」という表現を使っていました。従って、パンクしない自転車の製品化はその先になると思われます。どんな製品に落ち着くかはわかりませんが、いずれ街中の自転車みんながパンクしないようになっていく気がします。
Source: Bridgestone