Yahoo!ニュース

「殺人はもうしない。出所後はべつの方法を考える」Hagexさん刺殺事件の被告人、再犯の意思隠さず

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
出所後に「集団リンチをまた見かけたらやめさせる」と被告人は語る(写真:アフロ)

 「殺人は自分が嫌う弱いものいじめと同じとわかったのでもうしない」、「(出所後は?)べつの方法を考えます」。昨年6月に福岡で起きたIT講師(以下、被害者のハンドルネームよりHagexさんと記載)刺殺事件の被告人は、再犯の意思を隠しませんでした。

「殺人は弱いものいじめと同じだとわかった」

 福岡地裁で11月12日に開かれた第2回公判にて、被告人はHagexさん殺害の犯行についてどのように思っていたのか、その考えを供述しました。

 供述によると、被告人は殺害のためにナイフで不意打ちすることは、卑怯だとは思っていなかったとのことです。

 理由は2つあり、1つはHagexさんが顔写真などを出して露出し始めたうえで、5月2日にブログ記事を公開して「自分に対して最大の挑発」をしたことから、「自分がくることを予想してそれなりの準備をしている」と思っていたそうです。

 もう1つは被告人の身体能力によるもので、「自分は運動神経もにぶいし、体力にも自信がないのでナイフで不意打ちをしないと(準備をしているであろうHagexさんに)勝てない」と思ったことから、トイレで用を足している最中の無防備なHagexさんに襲いかかったとのことです。

 このとき一度トイレの前でどうするかためらったそうですが、「途中で軌道修正するのが苦手」なことから予定通り犯行は決行されました。

 最初に刺したのは右腰のあたりで、そのときのHagexさんは「驚いた表情」をしていたそうです。その後のことは覚えておらず、夢中で刺し続けたと供述しました。

 被告人がHagexさんを刺した回数は30数回にものぼり、その理由について被告人は「以前、女性が何十回も刺されたのに死ななかった事件(筆者注:供述を聴いたかぎりではおそらく小金井ストーカー殺人未遂事件のこと)を新聞で読んだので、殺そうと思って何度も刺した」と語りました。

 なお、犯行中に一度ナイフを落としたことがあり、その際にHagexさんがトイレの外に逃げましたが、そのまま追いかけて刺したと強い殺意が消えなかったことも述べました。

 犯行後、被告人は株式会社はてなの東京本店にナイフを持ったまま行く予定でした。

 けれども帰宅後に「自分では1:1の戦いに挑むつもり」だったものの、「一方的な結果におわった」ことから「自分が嫌う弱いものいじめと同じことをしてしまった」と思い、出頭することにしたそうです。

 はてな社では「どうするかは決めていなかった」ものの、被告人は午前にビデオリンク方式で出廷したはてな社の証人のことを「(はてな社員のなかで)一番気に食わないやつ」と話しており、事前にはてな社の社員の顔写真なども探していたことから、何らかの犯行におよぶつもりだったのは明白です(このためビデオリンク方式は証人の名前を呼ばない、顔を見せない匿名の状態で行われました)。

「出所後に集団リンチを見かけたらやめさせる」

 犯行内容の供述後、検察官から「もしも出所後に集団リンチを見かけたとき、同じことをするのか?」との質問がありました。

 これに対し被告人は「殺人はもうしない」、「ネットなら罵倒する。『死ね』はもうつかわない」、「話し合うなど、べつの方法を考える」と回答。殺人の再犯については否定したものの、集団リンチをやめさせるという自分の考えを改めるつもりはないことがわかりました。

 また、裁判員から「もしも自分が遺族と同じ立場だったらどう思うか?」と遺族の気持ちを考えさせようとした質問もありましたが、「(家族が)集団リンチをして殺されたのであれば、相手の正当性を認めます」と語り、反省の様子を見せるどころか集団リンチをした人物は殺されても構わないという考えを改めて表明しました。

 筆者は法廷内に、諦めにちかい空気が流れたように感じました。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

篠原修司の最近の記事