北朝鮮「韓流への嫌悪」なお強く…ビデオ厳禁、死刑判決も

昨年4月に10年ぶりに開催された南北首脳会談。その関連イベントとして北朝鮮の首都・平壌では韓国芸術団の公演が行われ、金正恩党委員長と李雪主(リ・ソルチュ)夫人も鑑賞した。

それから7ヶ月経って、その様子を収めたDVDが北東部最大の卸売市場、水南(スナム)市場をはじめ、清津(チョンジン)市内の市場で出回るようになった。北朝鮮当局は、死刑や拷問など極端な手段を動員して取り締まるほど韓流コンテンツを嫌悪してきたが、ここへ来て解禁に向けた動きが表れたとの観測も出ていた。

ところが、北朝鮮国民の期待を裏切る「逆コース」とも言うべき現象が見られている。昨年12月、首都・平壌市の郊外で行われた公開裁判では、「外部映像物販売」の容疑者に死刑判決が下された。

そして最近になって、韓国芸術団DVDの販売、視聴に対する取り締まりが始まったと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

両江道保衛部(秘密警察)は、このDVDを特別取り締まり品に指定し、摘発に乗り出した。昨年初頭から行っている「非社会主義現象」、つまり風紀や思想の乱れの取り締まりの延長線上にあるものと思われる。

また、韓国製品に対する取り締まりも強化されている。ただ、販売は依然として続いているもようだ。韓国製のテレビ、クック社製の炊飯器、衣類などは非常に人気があるため、業者は隠れて売っていると情報筋は伝えた。

当局の意図はさておき、末端の係官は韓流の取り締まりを手頃な小遣い稼ぎの手段としている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋の自宅に、非社会主義グルパ(韓流取り締まり班)4人がやってきた。息子のパソコンをチェックしていた彼らは、問題のある映像が保存されていたとして没収した。

問題があるとされたのは、取り締まりの対象となっていないはずの中国映画だった。彼らは「吹替版なら問題ないが、字幕版はダメだ」との理由を振りかざし、有無を言わさずパソコンを没収。後日呼び出された息子は、パソコンの購入金額の3分の1にあたる1000元(約1万6600円)の罰金を払わされ、ようやく取り戻したという。

今回の取り締まりで、情報筋の属する人民班(町内会、最高で40戸が所属)で10台のパソコンやノートテル(携帯用メディアプレイヤー)が没収された。住民は「外国人のセリフが朝鮮語の音声になっているのと、字幕になっているのと何が違うんだ」と呆れ果てた様子だという。

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