Interview

名将・前田監督からの評価も高い逸材二塁手・小松涼馬 どの舞台でも結果を残す勝負強さが最大のウリ【前編】

2019.06.04

 今年の帝京は守備の帝京と呼ばれるが、その中で全国クラスの実力を持った野手がいる。それが2年生の小松涼馬だ。172センチ72キロという体格ながら、ミートと長打を兼ね備えた打撃と、抜群の身体能力を生かした二塁守備は大きなセールスポイントとなっている。

 大阪・富田林シニアから入学し、1年夏からレギュラー入り。昨冬には1年生ながら東京代表に選ばれ、キューバ野球を経験した小松は2年春、3番セカンドとしてベスト8入りに貢献した。前田監督からも「プロ入りした先輩内野手と比べても、身体能力、勝負強さは遜色ない」と評価が高い。そんな小松の歩んできた野球人生に迫った。

結城海斗が絡んでいた帝京に進むきっかけ

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春季東京都大会での小松涼馬(帝京)

 小松が野球に関わり始めたのは3歳から。本格的に野球を始めたのは幼稚園年長からと、幼少の時からボールに触れてきた。大伴(おおとも)フレンズでは部員が少ないということもあり、投手、捕手を兼任していた。そして富田林シニアでは2年生の時に全国大会を経験。大阪出身の小松がなぜ東京の名門・帝京に進むことになったのか。

 そのきっかけは高校に進まず、マイナーリーグで奮闘する速球派右腕・結城海斗(河南リトルシニア-ロイヤルズ)の存在だ。小松は結城と小学校の時から仲が良く、中学3年生のとき、ストレッチをメインとした野球教室に一緒に参加していた。多くの高校関係者が結城に注目する中、目をかけたのが帝京だったのだ。
 「もちろん帝京の方も結城を見るつもりだったんですけど、僕に声をかけてくれたんです」

 帝京は甲子園に出ていて強豪のイメージがあり、憧れがあった。高校では大阪の学校には進学せず、他府県でプレーすることを決めていた小松は帝京進学を決断する。入学当時、先輩たちの体つきに圧倒され、体の小さい自分を見て不安に思った小松だが、1年春からベンチ入りを果たすなど首脳陣の期待は高かった。前田監督は「やはり身体能力が高いですから。とにかく最初から欠点の無い子でしたので使いやすかったですね」と起用の理由について語る。

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春季東京都大会で本塁打を放つ小松涼馬(帝京)

 一時期、怪我でBチームに回っていたが、再びAチームに回ることができたのはBチームの試合で4打数4安打、さらに盗塁を決める活躍を見せ、それが前田監督に評価されてのものだった。その後も懸命にアピールを続け、1年生でレギュラーを獲得する。小松は先輩たちの思いも忘れずに大会に臨んだ。
 「先輩たちが二年半苦しい思いをしてきたのに、いきなり入ってきた一年生にセカンドを任せることになった。たぶん先輩たちも悔しいだろうと思うんですが、『頑張ってくれ」と声をかけてくださったので、セカンドは自分しかいないと思って頑張りました」

 小松は夏の大会にレギュラーとして出場し、準々決勝の東亜学園戦で4打数4安打の活躍を見せるなど、4強入りに貢献。初めての夏は誰もが緊張するもの。しかし小松は独特の雰囲気を楽しんでいた。
 「緊張したのですが、試合を積み重ねていくごとに緊張が無くなってきて、楽しさの方に変わっていって。[stadium]甲子園[/stadium]に行きたかったです」

 新チームでは主力選手としての活躍が期待された秋だったが、怪我もあり、1回戦はスタンドで応援。2回戦の創価戦から復帰したが、出場2試合で9打数2安打と持ち味を発揮できなかった。

[page_break:キューバ遠征は自分を大きく成長させてくれた]

キューバ遠征は自分を大きく成長させてくれた

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東京選抜キューバ遠征での小松涼馬(帝京)

 「ミスも出てしまい、うまくいかない事が多く、大変な時期だったと思います」

 通常ならここから冬の練習に入り、春の大会へ向けて準備することになるが、小松は前田監督から「東京代表のセレクションがあるから練習するように」と木製バットでの練習を行う。芯が小さい木製バットの対応に苦しんでいたが、11月5日のセレクションにはどうにか間に合い、快打を連発。1年生ながら代表入りを決めた。ドラフト候補や都内を代表する選手ばかりの中、20人で唯一の1年生だった。

 「セレクションで選ばれた選抜のメンバーはすごく有名な選手ばかりで緊張したのですが、なんとかセカンドで出していただきました。先輩にも声をかけてもらって、やりやすい環境でプレーさせていただきました」

 代表に選出された小松は、そこでいろいろな工夫を加えた。まずバットを短く持ち、足上げも小さくして、力のあるキューバの投手陣に対応するための準備を行った。そして、結果は実戦で現れた。

 第1戦では3回表、140キロ後半の速球を投げ込むノルヘ・ベラに対し、レフトの頭を超える適時二塁打を放ち、東京代表にとって初得点を演出。さらに5回表にも左翼線を破る適時三塁打を放ち、2安打2長打3打点の活躍を見せた。この活躍は代表エースの井上広輝日大三)の一声が大きかった。

 「1打席目にバットを長く持ってしまって、井上さんから『もっと短く持ったら打てるから』という声が飛んで、2打席目はいい形で打たせていただきました」

 さらに最終戦の9回表、二塁打でチャンスを作り、小山翔暉の逆転2ラン本塁打につなげた。小松も「思わずしびれました」と語る劇的な勝利。キューバでプレーし、得られたものは非常に大きかった。

 「キューバの選手は楽しんでいて、プレーに自信を持っているように見えました。僕もこの時からポジティブに考えるようになりましたが、とても役に立っています」
 キューバ遠征は野球選手・小松の成長には欠かせない大きな遠征となった。

 前編はここまで。後編ではキューバ遠征で掴んだ守備への手応え、そして夏に向けた意気込みも伺いました。後編もお楽しみに!

文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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