殺さずによけるクマ対策犬、劇的な効果、課題も

クマが「慌てて去っていく」、日本でも活躍するカレリアン・ベア・ドッグ

2019.03.01
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米国ネバダ州野生生物局の「クマ対策犬」、オルカ(左)、ダズル(中央)、ルースター(右)。同州タホ湖の湖水盆地でアメリカクロクマを追い払っている。(PHOTOGRAPH BY JOHN T. HUMPHREY)
米国ネバダ州野生生物局の「クマ対策犬」、オルカ(左)、ダズル(中央)、ルースター(右)。同州タホ湖の湖水盆地でアメリカクロクマを追い払っている。(PHOTOGRAPH BY JOHN T. HUMPHREY)
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 人が住む地域に入ることにクマが慣れつつある中、クマを殺さずに追い払えるカレリアン・ベア・ドッグが、新たな方法として野生生物当局の関心を集めている。(参考記事:「【動画】クマが森から飛び出し、突進してきた」

「クマの仲間は本能的にイヌ科の動物を恐れています」と、クマに詳しい生物学者のキャリー・ハント氏は言う。「なぜかと言えば、コヨーテの群れなどに子グマを奪われることがあるからです」

 ハント氏は、クマを殺さずに人とクマの衝突を防ぐ有効な方法を見出すことをライフワークにしている。野生動物レンジャーが連れているイヌにクマが近づかないのを目にしたとき、彼女はひらめいた。1996年、モンタナ州フローレンスを拠点にウインド・リバー・ベア・インスティテュート(WRBI)を設立。特定の犬種を訓練し、「クマの牧羊犬」にすることを目指した。クマが人の住む地域に近づきすぎるとほえて追い払い、もう寄り付かないように仕向けるのだ。

 クマ対策犬として最も一般的な犬種が、白黒模様のカレリアン・ベア・ドッグだ。フィンランドからロシア北西端のカレリア地方の品種で、その名の通り主にクマ猟に使われてきたが、訓練すれば野生生物の管理にも役立つかもしれないと、あるときハント氏は気がついた。WRBIは、カレリアン・ベア・ドッグの繁殖、訓練、販売を行うほか、野生動物管理プログラムごと請け負ったりもしている。(参考記事:「北極圏の犬ぞり警備隊」

「クマを殺さないこの方法で、数千頭のクマが銃弾から逃れたと自信をもって言えます」。対策犬8匹を飼育するワシントン州野生生物局の野生生物学者、リッチ・ボーソレイユ氏はメールでこう答えた。(参考記事:「「殺すより守る」が部族へ浸透、ケニアの野生動物保護 写真18点」

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