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プエルトリコのエル・ユンケ国立公園に生息するボラ科のマウンテンマレット。(PHOTOGRAPH BY DAVID HERASIMTSCHUK, FRESHWATER ILLUSTRATED)

知ってほしい、こんなに豊かな淡水の生き物たち 写真16点

2019.01.13
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 小さなせせらぎから大河にいたるまで、世界の淡水には1万種を超す魚が暮らしている。しかし、そのうちいくらかは、もはや目にする機会さえないかもしれない。既知の種の20%以上は絶滅の危機にあるか、すでに絶滅しているのだ。こうした状況のなか、写真家のデビッド・ヘラシムチャック氏は、淡水とそこに暮らす生き物たちについて、写真を通じてより深く意識してもらおうと力を注いでいる。

「身近にいるさまざまな生き物が消えつつあるというのに、いるということすら、誰も知らないのです」とヘラシムチャック氏は言う。

【ギャラリー】こんなに豊かな淡水の生き物たち 写真16点(写真クリックでギャラリーページへ)
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繫殖の際、輝くような色に変わるテネシーデイス。近絶滅種に指定されており、局地的に個体群がすっかり消えているところもある。(PHOTOGRAPH BY DAVID HERASIMTSCHUK, FRESHWATER ILLUSTRATED)

 ヘラシムチャック氏は、米オレゴン州に拠点を置く非営利団体「フレッシュウォーターズ・イラストレイテッド」で写真と映像の撮影を担っている。淡水生態系について人々を啓発したり、保護を促したりするのが同団体の目的だ。氏は10年近くにわたって、主に北米各地の大小の川の生命を記録してきた。川はさまざまな水生動植物の生息地であるだけでなく、陸上の生き物たちも丸ごと支えている。その顔触れは、水辺に営巣したり渡りの途中で立ち寄ったりする鳥、ビーバーなど川を利用する動物、川の生き物を食べる捕食者など幅広い。

 川は人の飲み水の主要な供給源でもある。作物の灌漑や水力発電にも利用されている。人間と自然の双方に欠かせない役割を果たしているにもかかわらず、川は見過ごされることが多い。(参考記事:「自然と人間 大都会のふるさと 多摩川」

「自宅から10分のところにすむミノー(コイ科の淡水魚)より、サンゴ礁にいるカクレクマノミのほうを、みんなよく知っています」とヘラシムチャック氏は言う。「メディアは人々にまったく新しい世界を見せたがりますが、すぐ近くにずっと驚きに満ちた世界があるのです」

誰も撮影したことのない瞬間

 ヘラシムチャック氏が撮影した中には、世界有数の多様な生態系を育むところもある。米国東部のアパラチア地方の南部もその1つだ。ここには約300~400種もの固有種の魚が生息している。

 アパラチア南部にはアメリカオオサンショウウオも生息している。北米原産の巨大なサンショウウオで、ヘラシムチャック氏のお気に入りの両生類だ。体長60センチほどの彼らの周囲で辛抱強く時間を過ごせば、やがて「自分たちの世界に受け入れてくれます」とヘラシムチャック氏は話す。こうして彼は、アメリカオオサンショウウオがヘビを食べようとする瞬間をとらえることに成功した。

 おそらくこれまで誰も撮ったことがないこの作品で、氏は英ロンドン自然史博物館が主催する野生生物写真コンテストの年間最優秀写真家の1人に選出された。アメリカオオサンショウウオはもっと小さな獲物を狩る傾向があるため、こんな場面は予想外だった。ヘビがサンショウウオの頭にきつく巻き付くと、サンショウウオは噛み付く位置を変えようとし、その隙にヘビは逃げて行った。(参考記事:「ギャラリー:世界最高峰の野生生物写真コンテスト、受賞作14点」

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ヘルベンダーとも呼ばれるアメリカオオサンショウウオがヘビに食らいつく。ヘラシムチャック氏によれば、おそらく初めて撮影された光景という。(PHOTOGRAPH BY DAVID HERASIMTSCHUK, FRESHWATER ILLUSTRATED)

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