顔面黒塗り「サンタの助手」で衝突激化、オランダ

反対する活動家と白人至上主義者が対立、暴力事件に、首相も非難

2018.12.10
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祝祭のパレードに背を向け、オランダの伝統的なキャラクター「ズワルトピート」に抗議する人々。(PHOTOGRAPH BY JOHN VAN HASSELT, CORBIS/GETTY)
祝祭のパレードに背を向け、オランダの伝統的なキャラクター「ズワルトピート」に抗議する人々。(PHOTOGRAPH BY JOHN VAN HASSELT, CORBIS/GETTY)
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 12月5日は、オランダでは聖ニコラスの祝日だ。街に到着した聖人(オランダ語でシンタクラース)がお菓子やプレゼントを配るパレードに、人々が集う。しかし近年、こうしたパレードが政治的なトーンを帯び、今年は暴力事件も起きた。原因は、伝統的にサンタの脇役を務めてきたキャラクターの黒塗りの顔だ。(参考記事:「サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまで」

 オランダの伝統では、シンタクラースは「黒いピート」を意味するズワルトピートという名の“助手”を伴っている。黒塗りの顔で大きな金のイヤリングを着け、唇が強調されたキャラクターだ。聖ニコラスの祝日を控えた数週間は、オランダ各地の市や町でパレードが催され、数百人もの白人がピートの格好をする。店にはズワルトピートの衣装や焼き菓子が並び、大人たちはシンタクラースとピートの扮装で児童養護施設や学校を訪問する。

 このズワルトピートの容姿が人種差別的だとして抗議するオランダ人が増え続ける一方、反発も強まっている。今年、ホールンのシンタクラース・パレードで白人至上主義者たちがナチス式敬礼を行ったほか、ザーンデイクではパレードに向かってネオナチの旗が掲げられた。アイントホーフェンでは、平和的にパレードに抗議していた人々に対して、およそ250人の白人至上主義者たちが一斉に人種差別的なスローガンを叫び、卵やビールの缶を投げつけた。こうした攻撃は全国的な注目を集め、暴力事件に関してマルク・ルッテ首相が“双方の過激派”を非難する声明を出す事態になった。

【動画】聖ニコラウスはどんな人物だったのか?/「陽気なおじいさんのセント・ニック」はサンタクロースに着想を与えたとされる。だが、その起源となったエピソードは必ずしも愉快なものではない。なぜ彼が世界中で愛される人物になったのか、時代とともにイメージがどう変わったのか見てみよう。 (解説は英語です)

奴隷貿易の暗黒の歴史

 ヨーロッパの聖ニコラウスには、昔から、クランプス、ベルシュニッケルなどと呼ばれる恐ろしい相棒がいて、悪い子に石炭の塊を与えたり、厳しいお仕置きをしたりする。オランダでも、聖ニコラスに不気味な助手がいるというイメージは数世紀前から定着しているが、現代のようなズワルトピートの姿は、もっと最近になって作られたものだ。(参考記事:「クリスマスの悪魔「クランプス」、米国で大流行」

 このキャラクターが一般に広がったのは19世紀半ば。オランダ王室に強い関心を持つ人物が描いた児童書がきっかけだった。オランダ、インホラント大学教授でメディア、文化、公民権が専門のヨカ・ヘルメス氏は、「王室の1人が、19世紀半ばにカイロの奴隷市場で奴隷を1人購入しました」と話す。氏は、ズワルトピートというキャラクターの発想に、この奴隷が一役買ったのではないかと考えている。

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