もうすぐハロウィン。ハロウィン気分を盛り上げたいなら、夜、野生動物の声を聞いてみよう。恐怖が味わえること請け合いだ。
アカギツネ(Vulpes vulpes)の鳴き声は、まるで切り裂きジャックが街に現れたのかと思ってしまうようなものだ。人里でも見かけるこのキツネの声は、不気味なほど人間そっくりだ。(参考記事:「【動画】ワシが獲物を横取り、キツネごと空中へ」)
「時折、誰かが苦痛で叫んでいるとか襲われて悲鳴をあげていると思った人が、警察に通報することもあります」と、英ブリストル大学の生物学者スティーブン・ハリス氏は言う。
ハリス氏は以前、ブリストルの街に暮らすキツネたちを研究し、主に冬の交尾シーズンに発せられる、耳をつんざくような2種類の鳴き声について報告した。
異性を求める声も怖いアカギツネ
一つは短い破裂音である「スクリーム」。これは、オスがライバルに警告を発するときの、攻撃的な声だ。もう一つが「シュリーク」。こちらはオスメスともに発する、より複雑な、個体間コミュニケーションに使われるタイプの音声だが、とくにメスがオスを誘うときに発することが多い。
「アカギツネの声は、街の冬の夜の風物詩です」とハリス氏は言う。それも、キツネたちがこの時期によく鳴くからというだけの理由ではない。「空気が冷たく、また木の葉が落ちて障害物が少ないために、音声がより遠くまで届くのです」
ハリス氏自身、キツネにまつわる怖い体験をしたことがある。ある夜、発信器をつけたメスのキツネを追跡していた彼は、気づくと一人で墓地にいた。キツネを見つけられなかった彼は、墓石にもたれかかって休憩することにした。
「メスが私の背後に突然現れたのです。2メートルほど後ろに座り、大きな声で鳴きました」とハリス氏は振り返る。「あれほど高く飛び上がったのは、人生で一度きりです。真っ暗闇の墓場で、至近距離であの声を聞いたのですから。恐怖としか言いようがありませんよ」
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