キリンにはなぜ模様があるのか? その形やパターンはどのように決まっているのか? 親から受け継ぐものなのか?
意外かもしれないが、これらはどれも答えの出ていない謎だった。2011年からアフリカ、タンザニア北部でキリンを調査してきた研究者のデレク・リー氏とモニカ・ボンド氏は、この謎を解き明かそうと研究に乗り出した。
10月2日付けで学術誌「PeerJ」に掲載されたリー氏らの論文によると、キリンの模様のうち特定の要素は遺伝性であり、幼いキリンの生存率に影響しているらしいことが判明した。特に、模様の丸みと滑らかさ(専門的には「複雑性(tortuousness)」と呼ばれる尺度)が母から子に遺伝しているようだ。
模様と生存率にも相関があり、模様が大きく丸みがあるほど、幼いキリンが生き延びる確率も高くなると、リー氏らは論文で述べている。ただ、理由は正確にはわからないという。キリンの模様はカムフラージュに役立っているとの仮説もあるが、体温調節に役立っている可能性もある。それ以外にも、知られざる効能があるかもしれない。(参考記事:「気温とシマウマの縞模様の意外な関係」)
「哺乳類一般の外皮の模様について、自分たちがほとんど何も知らないということに気づきました」。米ペンシルベニア州立大学の准研究教授で、ボンド氏とともに保護団体「野生自然研究所」を設立したリー氏はこう語った。
「模様が何を意味するのか、じっと目を凝らしたことはなかったのです」
キリン保護基金の共同設立者で、世界トップクラスのキリンの専門家であるジュリアン・フェネシー氏は、「この研究結果は科学的に根拠があり、興味深いものです。ただし、ひとかたまりのサンプルセットにすぎません」と話す。フェネシー氏は今回の研究には参加していない。「この研究を、他の地域のキリン研究や別種の研究と比較できれば素晴らしいと思います」(参考記事:「珍しい白いキリンの写真を公開、タンザニア」)
キリンの模様に関連した研究は、最も新しいものでも1968年までさかのぼるとリー氏は言う。著名なキリン研究者のアン・イニス・ダッグ氏が、模様の大きさ、形、色、数が遺伝性と考えられる証拠を見出したのだ。しかしリー氏によれば、当時に比べると遺伝学の理解は劇的に進んでおり、ダッグ氏の研究は動物園にいる比較的少数の個体群を対象としていた。「野生の個体群で実際に検証した人は誰もいませんでした」
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