アマゾンの孤立部族、外界との接触が増える

産業文明から離れた生活様式は消滅するのか?

2018.09.27
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特集フォトギャラリー5点(画像クリックでリンクします)
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ペルーとブラジルの国境近くを流れるユルア川。流域の森は保護されているが、オオバマホガニーなどの高級材が違法に伐採され、国際市場に流出する。違法伐採はペルーに残る推定15の孤立部族の存続も脅かしている。PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES

 南米アマゾン地域に「孤立部族」と呼ばれる、外界との接触をしない人々がいる。ただし「孤立」という言葉は相対的なものだ。彼らは最奥の地に住む人々を除いて、何十年も前から金属の道具を使っている。つまり、外界とは何らかの接触があったということだ。

 孤立部族の多くは、アマゾン川流域がゴム景気に沸いた1世紀以上前の時代に奴隷労働や感染症の蔓延から逃れて森に入った人々の血を引く。ゴム景気の後も、先住民は宣教師、伐採業者、石油・天然ガスの採掘労働者といった外部の人々との接触で、しばしば暴力を受け、感染症に苦しんだ。外部との接触を断ったのは、彼らにすれば生き残るための手段なのだ。

 こうした事情はあれ、孤立部族は次々に深い森から出てきて、外界と接触するようになった。最近の事例では、ペルーとブラジルの国境のブラジル側のエンビラ川流域に暮らす部族、サパナワの人々が2014年6月に恒久的な接触を求めて森から出てきた。男性5人、女性2人が空腹を訴えて、シンパティア村に姿を現したのだ。その後聞いた話では、少し前によそ者に襲撃され、部族の仲間が多数殺されたのだという。おそらく麻薬密売組織の仕業だろう。

 ブラジルと同様、ペルーも孤立部族に対して非接触政策をとり、彼らの住む森を外部の人間が立ち入れない居留地に指定し、その一帯への進入を規制して、先住民のほうから接触を求めてきた場合に備えている。

 とはいえ、接触のプロセスは何年もかかることもある。どの時点で政府が介入すべきなのか。非接触政策に批判的な人々は、孤立部族が姿を見せるようになったら、暴力と感染症の流行を防ぐために、当局は先手を打って管理された接触を試みるべきだと主張する。いずれにしろ、誰もが一致して認めるのは、ペルーが引き続き森林の一部で開発を認める政策を進めれば、接触の回数は増えるということだ。

「人類は今より画一的になります」

 今も世界に残る孤立部族の大半はアマゾン川流域に集中していて、この地域全体で推定50~100のこうした部族がいるとみられ、その人口は合計で5000人ほどにのぼる。アマゾン地域以外で孤立部族の存在が知られているのはパラグアイの低木地帯チャコ地方、インド洋のアンダマン諸島、ニューギニア島西部だけだ。

 数だけ見れば大した問題ではないと思われかねないが、はるかに大きなものが失われる可能性があると、先住民の権利を擁護する活動家たちは言う。産業文明から切り離された場所で受け継がれてきた人類の生活様式の残り少ない痕跡が、地球上から消えてしまうかもしれないのだ。

「一つの民族や集団が消滅すれば……損失は計り知れません」と活動家のシドニー・ポスエロは説明する。「人類は今より画一的になり、人類全体で共有できる遺産が乏しくなります」

※ナショナル ジオグラフィック10月号「森を奪われるアマゾンの孤立部族」では、鉱山開発や森林伐採に追い込まれる先住民を紹介します。

文=スコット・ウォレス/ジャーナリスト、 クリス・フェイガン/保護活動家

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