5年ぶり最終赤字(画像はイメージ)

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吉野家ホールディングス(HD)の株価が急落し、年初来安値圏で低迷している。2018年7月6日に発表した3〜5月期連結決算が5年ぶりの最終赤字となり、株式市場に驚きと悲観論が広がった。赤字の要因は米国産牛肉などの食材や人件費のコスト増を売り上げ増でまかなえなかったこと。コスト削減は容易ではないと見られている。

吉野家HDの決算発表を受け、週明け9日の株式市場で株価は一時、前週末終値比14.3%(301円)安の1805円まで下げた。買う動きは強まらず、終値は14.1%(297円)安の1809円。当日の高値が前営業日の安値を下回る「窓を開ける」急落で、当日高値と前営業日安値の間隔も142円とかなり大きいもの。

米国産牛肉の価格高騰

吉野家HDの主力事業はもちろん国内牛丼チェーンの「吉野家」だが、傘下にはうどんの「はなまる」、寿司の「京樽」、ステーキ・ハンバーグの「ステーキのどん」「フォルクス」、海外事業とあり、売上高ベースでみると吉野家は今や全体の半分程度だ。とはいえ、経営を左右する主力事業に変わりはない吉野家の6月の既存店売上高が、前年同月比6.3%増と好調を維持していたため株式市場に安心感があったところへ、「5年ぶり最終赤字」が舞い込んできたため、投資家が猛烈な売りで反応したのだった。

決算内容は、売上高が前年同期比2.7%増の497億円。営業損益は1億円の赤字(前年同期は7億円の黒字)、最終損益は3億円の赤字(前年同期は4億円の黒字)だ。事業分野別に見ると、国内吉野家事業は、売上高が3.8%増の249億円だったが、営業利益は44・1%減の5億円と大きく落ち込んだ。最近では「豚丼」「鶏すき丼」「炙り塩鯖定食」なども人気メニューだが、やはり主力は牛丼であるだけに米国産牛肉の引き合いが中国など世界で高まる中での価格高騰が痛手となっている。

「労働力確保のための採用・教育コストも上昇」

「はなまる」や「京樽」も売上高が伸びたのに、それぞれ15%超の営業減益。「ステーキのどん」「フォルクス」を運営する事業は店舗撤退などもあって売上高が7.1%減り、8600万円の営業赤字となった。海外事業も増収の半面、やはり原材料価格上昇により63.6%の営業減益と振るわなかった。吉野家HDは全体の赤字について、「肉・米を中心とした食材価格やアルバイト・パートの時給が上昇し、労働力確保のための採用・教育コストも上昇した」と説明している。

市場の一部には赤字でも吉野家HDが通期の業績予想を修正しなかったことから「今後のコスト減が見えているのではないか」と楽観する向きもある。しかし株価はその後も、12日に1800円を割り込み、そこからやや戻すという一進一退を繰り返す。当面、3〜5月期の決算発表前に維持していた2100円台まで戻るのは厳しい展開で、次の一手が待たれていると言えそうだ。