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時代を越えて心に響く、ヒューマンドラマ。【海外ドラマ完全ガイド/業界50人アンケート】

古代ローマやルイ14世、中国をテーマにした歴史大作から、野心渦巻く職場での人間関係まで。絶賛公開中の、業界50人に聞いた「あなたの好きなこの1本」。漫画家のヤマザキマリや作家の甘糟りり子たちが、誰もが抱える悩みや心に染み入る台詞が必見のヒューマンドラマをピックアップしてくれました。 「ドラマ通50人が選ぶ、傑作海外ドラマ決定版!」TOPページは**こちら>>>**

「ROME /ローマ」 推薦者:ヤマザキマリ(漫画家/文筆家)

Photo: Album/AFLO

STORY
エミー賞を全7部門受賞した大作。栄華を極める大都市ローマが共和政から帝政へ移行していく過程を、ローマ軍第13軍団の百人隊長ヴォレヌストと部下のプッロを介して描く。BBCが監修にあたり、歴史上の偉人や史実を綿密に考証し、再現している。迫力のアクション、大胆なエロティシズムで彩る策謀の物語だ。

ーーーおすすめの理由は? 古代ローマを舞台にした映像作品もここまできたか、というくらい重箱の隅のつきがいのないクオリティの高さ。カエサルを始めとする主要古代ローマ人の登場人物をイギリスの演技派で固めたところも大正解。これを見ていなかったら『テルマエ・ロマエ』のような作品を描くことはなかった(実写版『テルマエ・ロマエ』(12)ではこの「ROME/ローマ」のセットを使わせてもらったのが大感動だった)。

ーーーなりたい登場人物は? カエサルの秘書、ポスカ。時代を動かした当事者ではなく、それを傍から俯瞰で見て記録をする立場の人間に惹かれる。自分と似ているからかもしれません。

「マッドメン」 推薦者: 甘糟りり子(作家)

Photo: Photofest/AFLO

STORY
1960年代のNYの広告業界を描いたヒューマンドラマ。職場の中心はもちろん男性。女性の活躍は難しかったこの時代、酒やたばこ、セックスetc.、何でも許された社会で、男性がいかにして地位を獲得していったのか。やり手広告マンのドンを中心に切り込む。女性ながら、能力が認められ、コピーライターに抜擢されたマギーの目線からも、男社会で女性一人が戦っていくことの難しさが描かれている。

ーーーおすすめの理由は?
善人は一人も出てこないんじゃないかと思うぐらいの、野心と野心のぶつかり合いが醍醐味です。1960年代のNYを舞台にした広告業界の物語。タイトルは、マディソン街の「Mad」と「狂った」のダブルミーニング。昼間からウィスキーを飲みながらの仕事、タバコはぷかぷか、セクハラや人種差別なんておかまいなし。弱肉強食のパワーゲームを忠実に再現したこのドラマは、上質な時代劇ともいえるかもしれません。

物語を彩るのはミッドセンチュリーのインテリア、ファッション。これがかっこいい。昔って新しかったんだなあと感じます。毎話の最後に当時のポップスが流れるのですが、そのセレクトが粋です。劇中、実存の企業だったり現実のエピソードがたくさん使われているのもおもしろい。
ーーーなりたい登場人物は?
どの人物にもなりたくない、というのがこのドラマの魅力だと思います。成功を手にしても、魅力的な恋人やパートナーができても、彼ら彼女らはまったく満足しない=幸せには見えない。桁外れの貪欲さが動かす物語は傍観者でいるのが一番です。

「シックス・フィート・アンダー」 推薦者:ニック・ハラミス/Nick Haramis(『Interview Magazine』編集長)

Photo: Album/AFLO

STORY
ロサンゼルス郊外の街パサディナで葬儀屋「フィッシャー・アンド・サンズ」を営むフィッシャー家を舞台に、一見普通に見える家族が抱える闇や同性愛、そしてドラッグ問題などを浮き彫りにし、人々の「死」を通じて、「生」と向き合い、問題を乗り越えていく様子を、シニカルかつユーモラスに描いた衝撃のヒューマンドラマ。タイトルの「シックス・フィート・アンダー」は、北米では土葬を行う際に、棺桶を6フィートの深さに埋めることから名付けられた。

ーーーおすすめの理由は?
僕にとって、5シーズン続いた「シックス・フィート・アンダー」に勝るドラマはないかな。これほど挑戦的で観る側にモラルを問いながらも、エンターテイメントも忘れない作品には他に出合えていない。ダークの域を超えたこの作品は、全エピソードが死から始まるにも関わらず、僕の家族や友達、そして僕自身の人生に不思議な楽しみを与えてくれた。そして、緊張感のあるドラマが好きなんだ。もちろん、「ビッグバン★セオリー/ギークな僕らの恋愛法則」のようなドラマもフライト中観たりするけど、最高のドラマは僕の期待を裏切るような物語で、「シックス・フィート・アンダー」はまさにそうだった。ようやく話がつかめてシリーズ全体を理解できたかなって思った頃に、クリエイターのアラン・ボールが全く違う展開に話を進めるんだ。

また、車のCMを見ても涙腺が緩むくらい、僕はとても影響されやすいタイプ。だから、シリーズの最終話でローレン・アンブローズ演じるクレア・フィッシャーが母親の家(兼葬儀屋)を出て行き、遠くへドライブしながら家族の未来、さまざまな困難や苦労、生まれてくる命や人生の終焉を思い浮かべるシーンでは、涙ぐむどころじゃなく、号泣していた。そのシーンは歌手シーアの「Breathe Me」が流れていて、終わる頃にはリビングルームの真ん中に大きな水たまりがあったよ。

ーーーなりたい登場人物は?
この企画に目を通した時、「シックス・フィート・アンダー」をお気に入りのドラマに選ぶか正直少し迷った。なぜなら、このドラマのどの登場人物にもなりたくないって思ったから。「シックス・フィート・アンダー」の誰かになるより、「アリー・マイ・ラブ」のアリー・マクビールか、あのダンシング・ベイビーになる方がよっぽどいいね。

「宮廷の諍い女」 推薦者:広田聡(スタイリスト)

Photo: Imaginechina/AFLO

STORY
中国語圏で空前の大ヒットを記録し、“神劇”(神のようなドラマ)と称された歴史ドラマ。1722年、清朝に新しい皇帝・雍正帝が即位する。皇帝の寵愛を受けたことで皇后や側室たちから嫉妬されるヒロインと、陰謀をめぐらせる側室たちの執念は、まさに中国版「大奥」だ。

ーーーおすすめの理由は? 私が長くお付き合いをさせてもらっている中国の女優、孫麗(スン・リー)が主演のドラマ。 スン・リーはもともと有名な女優さんではありましたが、 中国、台湾、香港で大ヒットしたこのドラマよって、一気に中国のトップ女優へと登り詰めました。言葉では表現できないくらいストーリーが面白い。中国の宮廷を舞台とするだけに、中国の文化、伝統、衣装の美しさなども見どころです。

ーーーなりたい登場人物は? 主人公の甄嬛(しん けい)です。美貌と知性、両方を持ち合わせた女性。ストーリーでは、最終的には、正しい者が頂点を極めるのです。

「ダウントン・アビー」 推薦者: マドモアゼル・ユリア(シンガー/DJ/デザイナー)

Photo: Visual Press Agency/AFLO

STORY
1912年~25年のイギリスを舞台に、郊外に佇む大邸宅「ダウントン・アビー」に暮らす貴族グランサム伯爵一家とその使用人たちによる人間劇を描いた物語。タイタニック号沈没事件、第一次世界大戦、スペインかぜ、アイルランド独立戦争など、その時代の社会情勢が色濃く盛り込まれ、エミー賞とゴールデン・グローブ賞で数多くの賞を受賞した名作。マギー・スミスをはじめとする新旧イギリス人俳優が名演技を見せる。

ーーーおすすめの理由は? イギリス貴族のファッションやヘアスタイルが可愛いく、イギリス英語が堪能できます。 また建物も素敵! 当時の建物が今もあるなんて、日本人からすると不思議な気がします。

ーーーなりたい登場人物は? 特にはいないのですが、あえていうならミシェル・ドッカリー演じるメアリー・クローリーです。

「ベルサイユ」 推薦者: ヴェロニカ・ハイルブルンナー/Veronika Heilbrunner(「hey woman!」創始者)

Photo: ALBUM/AFLO

STORY
物語は、「太陽王」と呼ばれた、ルイ14世の若き日から始まる。パリ郊外にあった父ルイ13世の狩猟用の館を豪華なベルサイユ宮殿へと変貌させた背景、陰謀や禁断の愛が渦巻く宮廷での貴族たちとの攻防etc...。ルイ14世の華やかな女性遍歴、そして弟オルレアン公フィリップの愛憎も赤裸々に描いた歴史ドラマ。

ーーーおすすめの理由は? ルイ14 世が素敵。彼が所有している美しい馬や、豪華なクチュールの衣装(彼の赤いソックスが大好き!)、そして世界で最も有名な宮殿が見所です。

ーーーなりたい登場人物は?
もちろんルイ14世。誰だって「太陽王」にはなりたいと思うでしょ!?

「アウトランダー」 推薦者:エヴァンジェリー・スミルニオタキ/Evangelie Smyrniotaki(アート・ディレクター/スタイリスト)

Photo: Everett Collection/AFLO

STORY
1945年、夫との新婚旅行中に約200年前のスコットランドにタイムスリップしてしまった従軍看護師のクレア。戦争下の1743年で、自身が未来から来た人間だとばれないよう、歴史の知識を駆使して必死になじもうとする彼女のアドベンチャー超大作。現地で出会うスコットランド戦士のジェイミーと現代に残してきた夫との三角関係も見どころだ。「海外ドラマ史上、最も美しいセックスシーン」と言われるラブシーンも。

ーーーおすすめの理由は? 時空をも超えた最高のラブストーリーは、私の好みにぴったりだから。

ーーーなりたい登場人物は? 多くの愛情に恵まれている主人公クレアになりたい。

Text: Haruka Ito, Yuki Tominaga Editors: Yukiko Kaigo, Moe Tsukamoto