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社会派ドラマが現実世界に訴えかけるメッセージとは?【海外ドラマ完全ガイド/業界50人アンケート】

総勢50人のアンケート結果から、近未来的世界や実在の人物、闇社会を暴くリアルなドラマをおすすめるのは、国際的フォトグラファーのミシェル・コントや、おしゃれスナップの常連ソフィア・サンチェス。フィクションな世界もいつか現実に起こりそう…と感じるほどリアリティ溢れるストーリーが、私たちに訴えかけるメッセージを感じ取って。 「ドラマ通50人が選ぶ、傑作海外ドラマ決定版!」TOPページは**こちら>>>**

「ナルコス」 推薦者:ミシェル・コント/Michel Comte(フォトグラファー)

Photo: Everett Collection/AFLO

STORY 1980年代に起きた、コロンビアの麻薬組織「メデジン・カルテル」の撲滅を目指したアメリカ麻薬取締局(DEA)&コロンビア当局と組織の攻防を実録タッチで描いたNetflixオリジナル作品。組織のボス、パブロ・エスコバルやDEA捜査官マーフィーは実在の人物。政界にも進出した大富豪の麻薬王の実像に迫る。

ーーーおすすめの理由は? 犯罪者と政府を巻き込んだ巧妙なヴァイオレンスを描いているところが興味を持てるポイントです。

「セリア」 推薦者:ソフィア・サンチェス/Sofia Sanchez de Betak(Chufy.com クリエイティブ・ディレクター)

Photo: Shutterstock/AFLO

STORY
キューバ出身で「サルサの女王」の異名を持ち、20世紀に活躍した実在のシンガー、セリア・クルスの生涯を追ったスペインドラマ。1959年、ワールドツアー最中に起きたキューバ革命でカストロ政権誕生後、帰国せずに国際的なキャリアを築いた彼女が抱き続けた母国への愛を、数々の名曲で彩る。

ーーーおすすめの理由は?
歌手セリア・クルズのキューバでの半生を描いたドラマ。ロマンチックで、観終わったあとスッキリするストーリーがお気に入り。キスをするまでに20話くらいかかるんだけどね(笑)。

ーーーなりたい登場人物は? 歌手の中でも最も才能に溢れる一人、セリア・クルズにはやっぱり憧れる!

「ブラック・ミラー」 推薦者:ポール・シンクレア/Paul Sinclaire(スタイリスト)

Photo: Everett Collection/AFLO

STORY
日々進化するテクノロジーが引き起こしかねない、私たちへの弊害をリアルに描いたSFドラマ。現在シーズン4までNetflixにて配信中。すべてが1話完結で、1話ごとにキャストもストーリーも異なるオムニバス形式で展開する。「もしこのままテクノロジーが進化し続けたら?」をテーマに、架空の現実を描いているが、その未来は私たちの明日かもしれないし、もしかしたら1時間後かもしれない。そのリアルさが批評家から絶賛されている。

ーーーおすすめの理由は? 三次元の世界を描いているところに惹かれます。ドラマの登場人物は様々な次元の世界を体験している。私たちもそのうちの一つの世界を生きているんだなと実感しました!

「ザ・ホワイトハウス」 推薦者: 渡辺祥子(映画評論家)

Photo: REUTERS/AFLO

STORY 1999年よりシーズン7まで放送されたポリティカルドラマ。民主党から出馬したジェド・バートレットが、アメリカ合衆国の大統領に就任した半年後から物語はスタート。ホワイトハウスの構造や、大統領を支える主席補佐官をはじめとしたスタッフたちの日々の業務がかなりリアルなことでも有名。大統領と妻、そして3人の娘との家族関係も見どころ。マーティン・シーンが大統領を、若きエリザベス・モスが三女役を演じている。

ーーーおすすめの理由は? もともと政治サスペンスやスパイものが大好きで、映画もそうなのですがテーマに沿って構成されることが多い映画より、TVドラマの方がバックグラウンドが丁寧に描かれるため興味がよりかきたてられます。魅力的な脚本、丁寧に描写された人物像。このドラマを見たおかげでホワイトハウス内部の人間関係や、アメリカの選挙システムに強くなり、いろいろ役に立っています。マーティン・シーン演じるバートレット大統領の下、多くのスタッフが国のために働く、という話ですが面白いのはホワイトハウスで働く人々や彼らの仕事内容がいろいろわかること。

ーーーなりたい登場人物は? 最近はTVでトランプ大統領の動向を見ると同時に報道官の発表を見る機会が増えていますが、「ザ・ホワイトハウス」に登場している報道官を、映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイが演じていたのが印象的でした。カッコいいです! この報道官の前の職がハリウッドのエージェント。私のようなライターがハリウッドへ取材に行き、スターにインタビューする際にお世話になる人たち(一種の仕掛け人)です。エージェントのスタッフで、スターと映画を売り込むのが仕事なのですが、その腕を買われてホワイトハウスにスカウトされ、報道官になった彼女は収入が大幅ダウンと嘆いていました。

これを見ればホワイトハウスの職員のギャラが想像以上に安く、しかし転職後は高給、好待遇で迎えられる職であることも描かれていました。とまあ、そんなことをいろいろ学んだことが愉しく、製作者で脚本を書いていたアーロン・ソーキンが映画『モリーズ・ゲーム』(17)で脚本を書いて監督に進出したので、絶対に見る、面白いに決まっている! と思ってしまいます。

「バンド・オブ・ブラザース」 推薦者:D姐(ライター/ABC振興会運営)

Photo: Reuters/AFLO

STORY
スティーブン・スピルバーグトム・ハンクス製作総指揮による、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で戦った、米陸軍の空挺師団パラシュート歩兵連隊のエリート「E中隊」の激闘を再現した群像劇。1944年のノルマンディ上陸作戦から1945年のドイツ降伏までを描いた。ダミアン・ルイス演じる隊長をはじめ、登場人物は全て実在の人物。新進俳優だったマイケル・ファスベンダーやジェームズ・マカヴォイ、トム・ハーディも出演している。

ーーーおすすめの理由は?
第二次世界大戦ヨーロッパ戦線で活躍した先鋭パラシュート部隊の実話をもとにスピルバーグ&トム・ハンクスの映画『プライベート・ライアン』(98)コンビが製作した全10話のドラマ。全米TV史上、当時最高の制作費1億2000万ドル(120億円)で製作された当にハリウッド映画のクオリティですが、戦争映画を敬遠しがちな人にこそ見てもらいたいし、映画『ダンケルク』(17)で心震えた人にも是非。戦争の惨さ、悲しさ、壮絶さを映像化しながら人間の絆、戦争の無意味さ・虚しさを客観的な視線から描いていて、何度見ても心打たれます。戦争というシチュエーションを除けば、現代の会社組織にも通じて共感できる点がいっぱい。

ちなみに私的な神回は第7話。今まで活躍してきたキャラクターが戦死したり病んだり、とんでもないクズ隊長のせいで主人公ウィンターズたちが人事問題で悩んだり、はたまたタバコを与えて一服させた直後に敵国ドイツ軍の捕虜を皆殺しにし、戦地で無双の活躍を見せる伝説の男スピアーズが登場したり。そしてこのタバコ伝説を噂していたところに、スピアーズ本人がやってきて「お前、タバコいるか?」と言われてビビりまくっていた兵士の一人が、マイケル・ファスベンダー。これが彼の俳優デビュー作品です。

ーーーなりたい登場人物は? ダミアン・ルイス演じるウィンターズ少佐は、的確な決断を下す頭脳と部下の全信頼を勝ち得る人情、いざとなったら身を以て挺する心技体の揃った理想の上司。ドラマ「フレンズ」でロス役のデヴィッド・シュワイマー演じる理不尽で嫌われ者のダメ上司に真っ向勝負に出たウィンターズの姿に、第一話からすっかり虜に。(そしてこの因縁が最終回で見事に伏線回収)

世の企業戦士の皆様にも、ウィンターズさんになりたい、と思って欲しいと思ってしまうキャラクター。彼の出世ストーリーも物語の醍醐味の一つです。ちなみにダミアンが素でバキバキのイギリス英語を喋っているのを初めて見たときは「イギリス人だったのか!」とひっくり返りそうになりました(笑)。演技上手いわー。そして日本版だとウィンターズの吹替えは役所広司さんで、ダミアンのややハイピッチな地声に寄せたトーンも含めて完璧な吹き替えで、こちらもあまりにも素晴らしくってひっくり返りました。

「ハウス・オブ・カード 野望の階段」 推薦者:立田敦子(映画ジャーナリスト)

Photo: Everett Collection/AFLO

STORY
オスカー俳優ケヴィン・スペイシーとデヴィッド・フィンチャーをはじめ、ハリウッドを代表する名ディレクターたちがタッグを組んだ政治ドラマ。ホワイトハウス入りを夢見るが、いとも簡単に裏切られる政治家のフランク。闘争心に火がついた彼は、自身を陥れた政治家たちに復讐し、アメリカのトップに立つことを誓う。無慈悲で緻密な戦略家のフランクと、したたかな実業家の妻クレアによる野心的なリベンジプランは、観始めたら止まらない。

ーーーおすすめの理由は?
1990年のイギリスの政治ドラマを現代のアメリカ(ホワイトハウス)に置き換えて、描いている。脚本を手がけているのがボー・ウィリモンだが、彼は学生時代に大統領選のキャンペーンにボランティアとして参加していて、その経験から多くの選挙ものの脚本を書いている(ジョージ・クルーニー監督作映画『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』の脚本も手がけている)。ドラマの面白さは、信じられないようなスケールや過激さの陰謀や野心により、展開が激しく動くこと。政治ドラマでありながら、サスペンスを見ているよう。ウィリモンが見聞きしたことの多くが反映されているから、真実味もある。ホワイトハウスの内側の壮絶な争いは、ある意味、SF大作よりもダイナミック。ロビン・ライトが演じるファーストレディの洗練されたキャリアファションや、舞台となるホワイトハウスやエアフォースワン、別荘などのインテリアも見どころ。

ーーーなりたい登場人物は? 基本的に野心に満々のアクの強い“悪い人”しかでてこないドラマなのでなりたい人はいないのですが、魅力的なキャラはロビン・ライト演じるクレアです。

「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」 推薦者: 柴崎理恵子(エディター/ライター)

Photo: Everett Collection/AFLO

STORY
放射能による環境汚染が進み、子供の出生率がほぼゼロになってしまった世界を描く、マーガレット・アトウッドの小説「侍女の物語」を実写化した衝撃のディストピア・ドラマ。 妊娠可能な女性たちは侍女として政府にとらえられ、支配階級の男性の子供を妊娠するよう教育される。ハリウッドで引っ張りだこの女優エリザベス・モスを主役に、どんな環境でも希望を見い出し、未来を諦めない強い女性たちの姿が印象的。

ーーーおすすめの理由は? 非常にショッキングなテーマであり、これまでにない内容だから。ある日突然女性の人権がなくなり、仕事に就くことはもちろん、財産を所有することも、読書すら禁じられる世の中になり、完全な身分制に分けられてしまう。ここに描かれている要素は、世界のどこかで現実に起きていることや、それを脚色しているだけというのがすごく恐ろしい。また、このドラマを観て「こういう世界をつくろう!」と、リアルに思う権力者が現れたらと(現実にいそうだし)思うと震える。
ーーーなりたい登場人物
なりたい人物が一人もいない! そういうドラマだから、余計にすごい。

Text: Haruka Ito, Yuki Tominaga Editors: Yukiko Kaigo, Moe Tsukamoto