食洗機を買い換えたら、ITを使った“正しい業務効率化の形”が見えてきたプロジェクトマジック

食洗機を大型のものに買い換えたら、単にスピードアップしただけでなく、これまで手間だと思っていた幾つかの工程もなくなった――。そんな日常の実体験から見えてきた、ITによる“正しい業務効率化”の形とは?

» 2018年01月11日 14時00分 公開
[白川克ITmedia]

この記事は白川克氏のブログ「プロジェクトマジック」より転載、編集しています。


 先日、食洗機を大型のものに買い替えた。

 それまでは、新婚のころに買った小さめのやつを15年ほども使っていた。わが家は共働きなので、食洗機は必須アイテム。「嫌な仕事を機械にアウトソースするのは当然」ということで、ほぼ毎日ガンガン使っていたので、完全に元は取った。

 大型食洗機を使いはじめると、劇的に楽になったのにびっくりしている。単に大小の問題ではなく、食器洗いの工程自体が変わったのだ。

・第1段階:手洗い(1999年〜2001年)

a)食卓からシンクに退避

b)×

c)全てを手で洗う

d)食器乾燥ケースに置く

e)×

f)食器乾燥ケースから食器棚にしまう


・第2段階:小型食洗機(2001年〜2017年)

a)食卓からシンクに退避

b)手洗い品、食洗機で洗う品の選別

c)手洗い品を手で洗う

d)食洗機で洗う品を食洗機にセット

e)食洗機のスイッチ押す

f)食洗機から食器棚にしまう


・第3段階:大型食洗機(2017年〜)

a)×

b)×

c)×

d)食卓から食洗機にセット

e)食洗機のスイッチ押す

f)食洗機から食器棚にしまう


 まず、第1段階から第2段階になる上で、工程自体は増えている。

 そもそも手洗いのときは、「皿洗い、めんどくさい」と思ってたのが、食洗機に慣れると「食洗機に入れるの、めんどくさい」と思い始めるので、怠け心にはキリがない。

 しかし、一番時間がかかる c)の皿洗いの工程が、第2段階になるとスイッチを押すだけになるのだから、トータルではやっぱり楽になる。これは、ありがたい! 食洗機を持っていない人は、今すぐ買ったほうがいいかもしれない。

 次に、最近起こった第2段階から第3段階への進化を見てみると、作業的にほぼ“ゼロ”と見なせる e)を除くと、5工程から2工程に短縮。さらに言えば、洗い終わった食洗機の食器は、f)の食器棚にしまう工程を経由せずに、直接次の食事に使うときもあるので、この場合は5工程から1工程に短縮されることになる。

 時間的にも心理的にも、劇的に楽になった。「買い物が面倒」とか言ってないで、もっと早く大きいのに変えればよかった、と思った。

食洗機を大型化したら、作業時間も作業工程も削減

 ここでのポイントは、「大型化したことで、鍋でもザルでも何も考えずに食洗機に放り込めるようになり、しかも1日分の食器が全部入るので、シンクにためたりより分けたりする必要がない」というところ。また、a)の「シンクに置く」という工程が丸ごとなくなり、心理的な抵抗感(つまり、面倒くささ)が大幅に軽減された。

 「規模(サイズ)が大きくなった」ことで、単にスピードアップしただけでなく、工程自体を省けたのだ。

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 実はこのようにくどくどと説明したのには、理由がある。「企業におけるITの活用も、こういうことを狙っているんだよね」という話がしたかったのだ。

 これまで人間がやっていた仕事を機械が代わりにやってくれる。これ自体、素晴らしいことなので、ITに多少投資しても元が取れることは多い。小型食洗機を買った新婚時代のわが家のように。

 ところがITを本当にうまく使うと、作業を置き換えるだけでなく、作業をなくすこともできる。例えば「ミスが起きなくなり、検査がいらなくなる」や「わざわざ情報を配るという作業をしなくてすむ」といった具合に。

ITで業務効率化するなら、システムと業務改革をセットに

 システムを構築する際に、セットで必ず業務改革をやった方がいいのは、こういうことを狙いたいからだ。業務改善を検討していて、こういった作業を大幅に楽にできる方法が見つかると、本当にうれしくなる。

 反対に、システムを再構築する際に「新しいシステムは現状踏襲で。同じようにまた動けばいいから」というようなプロジェクトが嫌いなのは、こういう効果を探すのに目をつぶった“思考停止に基づくもの”だからだ。

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 ITの活用による業務の効率化という観点からは、RPA(ソフトウェアロボットを使って業務を自動化すること)も注目だ。

 RPAの弊害としてよくいわれるのは、上記の食洗機の例では第2段階に当たる「非効率さを温存したまま自動化するのはいかがなものか?」という話だろう。確かに、ちゃんと業務改革をして第3段階に進化する余地があるならば、RPAはその芽をつんでしまいそうだ。

 しかし、RPAによる効率化が真に破壊的なものだとしても、「それで何が悪い?」である。第2段階のままであったとしても、人件費をほとんど使わずにソフトウェアがゴリゴリ働いてくれるならば、結局、効率化は達成される。

 このあたりの機微を見極めるには、もっと実戦で使い倒す必要がありそうだ。

著者プロフィール:白川克

book 『業務改革の教科書―成功率9割のプロが教える全ノウハウ』

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。ファシリテーションを使ってプロジェクトを成功させるのが得意。

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