WEDDING / Dress

ヴェラ・ウォン:ウエディングにモードの風を起こす、革命家。【デザイナーの哲学】

デザイナーの哲学に耳を傾け、新しいスタイリングのアイデアに触れて。あなたのドレスを「スタイル」で選んでみませんか?

大胆な選択肢を示すと、人は違う視点からドレスを見られるの。

わずか23歳にしてアメリカ版ヴォーグの史上最年少シニア・エディターに就任したという華麗な経歴を持つヴェラ・ウォン。ニューヨークのアッパーイーストサイドに生まれ育ち、幼少期からパリをはじめとする世界中のラグジュアリーに触れて育った彼女がブライダルの世界に飛び込んだのはまさに“必然”だった。「転機になったのは私自身の結婚式よ。その頃の私はヴォーグを辞めてラルフ ローレンでデザインディレクターとして多忙を極めていた。だからパリに行ってクチュールのドレスを仕立てる時間がなかったの。それで何かいいドレスはないかとニューヨーク中を探し回っていたときに、ふと気づいたの。いいドレスが欲しいのにどこにも見つからない─ならばそこにビジネスの可能性があるのではないか、と」
当時のファッション界には「ブライダル」というカテゴリーは存在しなかった。ウエディングドレスは結婚式のためだけのものであり、それがファッションの一つであるという概念はなかったのだ。「だから、伝統や既存の価値観にとらわれることなく自由に発想できたのよ。その自由さが私に合っていたのね」

私たちのヴィジョンはいつしか 「トレンド」と呼ばれるようになっていったのよ。

革新的なデザインは「トレンド」と名を変え、花嫁たちに新たなインスピレーションをもたらす。〈右〉ドレス ¥530,000 〈左〉ドレス ¥970,000(ともに販売価格/ヴェラ・ウォン ブライド銀座本店)

そこからヴェラの“革命”は始まった。街の専門店で伝統的なウエディングドレスを買うか、パリに行ってクチュールのドレスを仕立てるかの2つしか選択肢がなかった当時の花嫁たちに「自分の好みで選ぶ、ファッショナブルなウエディングドレス」という新たな価値をもたらしたのである。「私たちは常に明確なディレクションを示して、クオリティも大切にしてきた。それぞれの体型を美しく見せる仕立てにもこだわってきた。でも、最も重要なのは、花嫁が求めるものを与えてあげること。ファッションに夢中な女の子はたくさんいるわけで、それならば結婚式ではいつも以上にファッションにこだわるべきだものね。だから私のブライダルコレクションには確固たるアイデアとヴィジョンを打ち出すことにしたわ。そしてそのヴィジョンがいつしかトレンドと呼ばれるものになっていったのよ」
数年前からはショー形式のコレクションをやめ、こだわりのショートフィルムによってコレクションを発表しているヴェラ。ある年はブラックを多用し、ある年はバレリーナの衣装をモチーフに、そしてまたある年はランジェリーをテーマに、と毎シーズン打ち出される大胆なテーマも話題だ。「確かにウエディングドレスは伝統的なもの。でも大抵の場合、ほかにもこんなドレスはどう? と大胆な選択肢を示すと、人は全く違う視点からドレスを見られるようになるの。ヴィヴィッドなピンクのドレスを見ることで、またそれを白に置き換えて考えることもできる。それは、ただ白いドレスだけを並べるよりもよほど想像力をかきたててくれるものなのよ」

instagram:@verawanggang

クールでエッジィな世界観を反映したヴェラのアカウント。最新コレクションを美しい写真と映像で発信している。時折ヴェラ本人もスタイリッシュな装いで登場!

Photos:Takanori Okuwaki Hair:Jun Goto Makeup:Noda Stylist:Rena Semba Editor:Mayumi Nakamura